Quantcast
Channel: AN現代針灸治療
Viewing all articles
Browse latest Browse all 655

シンスプリントの針灸治療   ver.2.0

$
0
0

1.シンスプリント  Shin splints(脛骨過労性骨膜炎)の概念

Shinは向こう脛(すね)、Splintsは(骨折時に使う)副木の意味。まぎわらしいことに短距離走者は英語で sprinter であり、シンスプリントは短~中距離走者に多いこともあって、間違いやすい。ランナーの発症率は20~50%と非常に多い。シンスプリントは症候群なので、いくつかの病態が含まれるが、その中心となるのが腱癒着による滑走障害である。しかし筋の骨膜起始部の牽引痛の場合もあり、これは骨膜痛である。痛みが限局性で非常に強ければ疲労骨折を考慮に入れる。
シンスプリントの大部分は後内側シンスプリントで、下腿内方下半分あたりが痛む。少数ながら前外側シンスプリントもあり、下腿前面の上半分あたりの痛みを訴える。


2.重症度分類(Walsh)

ステージ1:運動後に“ジーンとする鈍痛(すねの内側に痛みが多い)
ステージ2:運動中も痛みを感じるようになる。
ステージ3:パフォーマンスに影響(タイムが落ちたり、足をひきずったり)
ステージ4:慢性的な安静時にも持続する痛み。次第に歩行困難となる。


3.後内側型シンスプリント

1)病態

下腿後側深部筋には、後脛骨筋・長拇趾屈筋・長趾屈筋があり、これらの腱はどれも足内果の下方を通って足指に停止している。下腿後側深部筋は足関節底屈作用(つまさき立ち運動)がある。底屈運動の過多で痛みは増強する。
踵を上げて(足関節底屈)走行するこのと多いランニングやジャンプでは、癒着した筋膜間が滑走障害を起こし、強い痛みを感ずることがある。

後内側シンスプリントは、長趾屈筋と後脛骨筋の滑走障害が多いが、長指屈筋とヒラメ筋の滑走障害もある。後脛骨筋が関係する場合には「脛の内側下1/3周辺」に痛みが現れるケースが多く、ヒラメ筋障害が関与する場合では下腿内側中央あたりに痛みが現れる。

2)後内側型シンスプリントの針灸治療

①長趾屈筋と後脛骨筋の滑走障害

2寸針を使用。仰臥位で下腿屈筋の長趾屈筋・後脛骨筋に対して三陰交あたりから刺針し、置針した状態で足関節屈伸、そして足の回内回外の自動運動を行わせる。下腿内側の脛骨内縁の下付近の圧痛点を刺入点とする。腓骨下縁に向けて直刺深刺。 

 


  
②長指屈筋とヒラメ筋の滑走障害

脛骨内縁中央あたりの痛み。本症状では、ヒラメ筋と長拇趾屈筋間のの滑走障害を考える。仰臥位で脛骨内縁の地機あたりの圧痛点を刺入点とする。2~3寸針を使って、腓骨下端方向に向けて直刺深刺し、足関節屈伸、そして足の回内回外の自動運動を行わせる。

③運動療法

踏み台の上に立たせる。その際、踵を踏み台に置き、足の前半分は踏み板の外に置いた姿勢にする。膝を伸ばした状態で、足関節の底屈・背屈運動を大きな動きで30秒間にできるだけ速い動作で行わせる。30秒間休んだ後、両膝45度屈曲位で上記同様30秒間実施。この組合わせを1セットとして3セット実施する。セット間の休みは1~2分間とする。
この運動は、素早く足関節底屈運動を繰り返すことで、筋膜癒着を解消するねらいがある。膝関節を屈曲すると腓腹筋よりもヒラメ筋の運動になる。




3.前外側型のシムスプリント

1)病態
前面外側が痛むタイプ。前脛骨筋と長母伸筋間の癒着による滑走障害。足関節が背屈(足指を足背側に向ける)すると痛みが増強する。


2)治療 

①前脛骨筋刺針

足三里など、下腿前面の前脛骨筋外縁が脛骨に接する部の圧痛を探し、深刺し前脛骨筋の起始部骨膜に刺針する。そのままゆっくりと足関節背屈の自動運動を行わせる。急激な関節背屈運動では深腓骨神経の針響きは非常に強くなり、針体も曲がりやすくなる。

4.シンスプリントの針灸治療効果

運動制限を厳守すれば2週間程度で症状が消失する。運動制限ができない場合、早い者だと1ヵ月程度、長くかかる者では1~3ヵ月程度かかる。スポーツ選手は練習で きないことにストレスを感じているので、治癒までの見通しを示してやるようにする。
片山憲史らの針治療の検討報告では、14名20肢(平均罹 病期間4.6週)に針灸を行い、平均治療期間28日、平均治療回数 4.4回を要した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 655

Trending Articles