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Channel: AN現代針灸治療
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吸角を加熱し、陰圧にするガストーチバーナーの運用 Ver.2.0

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当院では昔から中国吸玉を使っている。中国吸玉は単純な形をしているので滅菌・洗浄がしやすい。ガラス製なので床に落とすと割れる弱点はあるが、中国で買うと1個100~200円(国内価格は1個1000円前後)なので満足している。プラスチック製吸玉では滅菌が難しく、いずれにせよ業務用としては不合格であろう。

1.吸角内部を陰圧にする道具

吸玉内部を陰圧にするには、ポンプで吸引する方法と、内部の空気を熱し、それが冷却すうる時に体積が減る現象を利用する方法がある。前者は吸玉の口金や弁に耐久性が乏しく、業務用としてふさわしくない。当院では後者の方法で行っているが、吸玉内部の空気を熱して陰圧にする道具については、長年にわたるり悩んでいた。
 
チャッカマンでは冬期には火力が弱く、ガスの消耗も早く不経済である。チャッカマン類似品にはガスを再充填できるものもあるが、火力の強さは本家チャッカマンに及ばない。そこである時、ふとカセットガストーチバーナーを使うことを思いついた。ちなみに、トーチとは松明(たいまつ)のことである。


2.カセットガストーチバーナーの使用

カセットガストーチバーナーは、カセットガスボンベを燃料として使う。このカセットガスボンベはカセットガスコンロとして家庭用のナベ料理の定番商品であり。安価でスーパでも入手もできる。

カセットガストーチバーナーは何種類も市販されているが、とりあえず SOTO ST-Y450Y という製品を購入してみた。さっそく常連患者に吸玉をする際に使ってみたが、①燃焼時にゴーッという音がするので、患者に恐怖心を与えること、②炎の色が青く薄いので炎の尖端がどこにあるのか判別しづらいことなどの欠点があって使用中止となった。
 
この製品がダメなのかと思って、さらに有名な会社である岩谷産業のIwatani CB-TC-BZ を買ってみたが、結果は変わらなかった。同じような結果になった。改めてSOTOとIwatani のトーチバーナーの違いを調べると、 SOTOにだけ空気取り入れ量調節レバーがあることを発見した。空気取り入れ量を大きくするとゴーッという音とともに青色の炎となり、少なくすると無音でゆらゆらとしたオレンジ色の炎となった。
 

 

 

3.吸玉療法に適した炎の色
  

調べてみると青色炎は燃料ガスと酸素が反応している完全燃焼状態で1300℃となる。オレンジ色の炎は不完全燃焼状態で、酸素と反応する前の熱せられた燃料ガスから遊離した炭素の集合であるという。その炭素が燃やされてオレンジ色に光るという。この時の炎の温度は900℃ になる。炎を照明の用途で使うぶんには、不完全燃焼の方が適している。
 


吸玉として適しているのは、無論オレンジ色の炎の方なので、Iwataniの製品は使えないことになった。中国で多用するのは、鉗子の端にガーゼを巻き、アルコール液に浸して点火するもので、炎はオレンジ色になる。Sotoの製品をこの数ヶ月間使って問題は生じていない。ただし炭素が燃やされるので、吸玉内部が煤で汚れるので洗浄する手間がかかる。



 

4.箱灸でのモグサ着火時のトーチバーナーの使用

当院では箱灸実施時、中国棒灸(長さ19㎝)を16等分したものを2個入れている。棒灸はモグサを硬く詰めてあるので、火持ちが良い反面、点火には苦労する。以前はチャッカマンを使っていたが、それでも点火しづらいので、最近ではトーチバーナーを使うことにした。この用途の場合、青色炎の方が点火しやすいように思う。

 

 5.韓国での独自の点火器を使った吸角の方法

上述のブログをご覧になったようで、韓国の李珉東先生から韓国の吸玉点火器の情報を教えて頂いた。登山などでつかうガスバーナーを用い、独特の金具がついている。
炎の周囲にある丸い金属板に、吸玉を押し当てると、金属板が押されている間だけ強い炎になるという。非常にスピーディーであり確実性がある。吸玉を多用する者には、便利な道具だろう。

実際の運用動画

https://www.youtube.com/watch?v=5yJgr7-wXCA

 

6.吸玉の作用と副作用

吸玉は東洋医学発祥ではない。どうやら今から3000年前頃のインドのアーユルベーダ医学が原点らしい。それがシルクロード交易によって西に東に伝わった。しかし東西の正規医学の範疇に入っていないので、きちっとした医学的検討も行われないまま今日まできている。あくまでも民間療法の一つとして一部の愛好家がいるに過ぎなかったが、2016年のリオデジャネイロオリンピックで外国の水泳選手の肩に吸玉痕があるのをテレビ中継され、「あれは何だ?」として世間の注目を集める運びになった。

1)吸角の作用の私見

医学的研究では、その作用はいまだに不明らしい。私の持論だが、吸玉をつけている間は交感神経刺激作用、吸玉を外した瞬間から急に副交感神経刺激作用となること。副交感神経を刺激するには、その前に交感神経緊張状態にあった方が効果的になるだろうことを指摘した。これは全身の脱力を図るには。まず四肢をふんばって力を入れた直後、一気に力を抜かせるようにすると効果的になることからの発想であった。また皮膚が発赤するので表在血管の血液循環促進作用があり、これも副交感神経亢進状態を裏付けるものである。皮膚温も上昇する。要するにリラクセーション効果である。また皮下筋膜のストレッチ効果がある。関節部周囲の吸角で、関節可動域が広がることもある。

2)吸玉の副作用

①紫斑
吸玉時の皮膚の発赤は軽度のものであれば、吸玉終了後は数十分~数時間で発赤が消失して、元の状態にもどる。しかし強い陰圧を数十分行えば、痕は紫褐色になり、数日経っても消えなくなる。これは毛細血管が破壊された結果である。なおもそこに頻回に吸玉をすれば、毛細血管の破壊は拡大し、永続的に紫斑が残り、見苦しい事態になる。

②水疱
10分以上吸玉をかけると、まれに水疱が出現することがある。これは単純型水疱(症)とよばれる。表皮と真皮の間に生ずる水疱で、この詳細な原因は不明だが、靴ずれと同様、物理的刺激により生ずる。刺激しないようガーゼをあてておけば、瘢痕を残すことなく治癒する。水疱を針などで破るべきか、それともその状態のままガーゼをあてたほうがいいかは、決着がついていない。水疱が破れた場合、そこから感染症を引き起こし、傷が深くなって瘢痕ができてしまう。

 

 


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