1.鳴天鼓(めいてんこ)の再発見
ネットの面白情報チャンネル<らばQ>2017年9月20日の記事に、側頭部をタッピングすると、耳鳴りが軽くなるという内容があった。その方法を行った患者たちが喜ぶユーチューブ動画もあって、患者の喜ぶ姿をみて、これはすごい効果だと思った。効果があるなら自分の治療として取り入れることになる。
実はこの方法は、古典的内気功の一方法で鳴天鼓(めいてんこ)とよばれているもの。私も知ってはいたのだが、何かと中国情報は玉石混淆なので、試したことがなかった。
2.鳴天鼓の実際
1)方法
①両肘を左右に張り出し、手掌中央で耳穴をぐっと押さえて外耳道を密閉させる。
②そのまま頭の後ろに指を添えて、中指はお互いの方向を指す。
③中指の上に人差し指を乗せ、そこからはじくように人差し指を落として頭を叩く。その衝撃音が耳孔の空気を伝わり鼓膜に響くように感じる。
④1日2回、1回につき20~40回これを繰り返す。
2)効果
効果には個人差がある。効く者は手を離すと耳鳴りが治まっていることに気づく。耳鳴が停止している時間は2~3分間だが、長く繰り返すほど止まっている時間が長くなる者もいる。
鳴天鼓の動画
https://www.youtube.com/watch?v=ajb37ie-Juo&feature=youtu.be
3.作用機序の考察
音波が耳孔から鼓膜に伝わる。鼓膜→小耳骨→前庭窓→蝸牛と伝わり、聴覚に影響を与える。
鼓膜に刺激を与えるという観点からは、下耳痕穴(耳垂が頬に付着する部の中央)からの直刺2㎝と同じ原理となるだろう。この刺針を行うと耳中に響く感覚が得られる。
「右耳管狭窄症で時々耳が遠く感じる」と訴える者に上記方法を行うと、施術直後頬が温かく血が通った感じがして気持ちよいという結果が得られた。温感が得られたということは、頸部交感神経緊張状態が緩んだことを意味しているので、星状神経節ブロックと同様の効能があるのだろうか。ベル麻痺の初期治療に星状神経節ブロックを行うことが多いが、それと同じような効果が得られるかもそれない。 今後耳鳴を中心とした患者に追試したい。