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Channel: AN現代針灸治療
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椎間関節性腰痛と筋々膜性腰痛の針灸 再整理 Ver.1.2

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下肢症状のない腰痛の針灸治療の代表的疾患といえば、椎間関節性腰痛と筋々膜性腰痛であろう。両疾患はともに、痛みの直接原因が脊髄神経後枝にあるという共通性があり、症状も紛らわしい部分がある。これらに対して現代針灸はどのようなアプローチをすればよいのだろうか。かつて解剖学的針灸という単語はあったが、現代針灸という単語はなかったように記憶している。確かに三十数年前は、「単に何々筋が緊張しているので、そこに刺針して緩めたので症状改善した」という以上の内容がなかった。一歩一歩ではあるが、現代針灸も進歩を続けているようだ。

 

1.椎間関節性腰痛

1)病態生理
 
急激な腰胸の動きで関節包内の関節滑膜が挟まり関節包炎症  → 椎間関節部の圧痛(+)
                   ↓
脊髄神経後枝内側枝に興奮伝達   →  背部一行(棘突起外方5分)圧痛(+)
                   ↓
脊髄神経内側枝の興奮が後枝外枝にも伝達  →  外下方45°方向に痛み放散、同部位に撮痛(+)

2)針灸治療

側臥位または伏臥位にて、2寸4番程度の針を用い、棘突起外方1.5㎝あたり(=椎間関節部)から骨に当ら深刺直刺し、骨に当てる。針先を骨にぶつけて数秒間タッピングを続けると、症状部に至る針響を得ることができる。(技量必要)

 註釈:脊髄神経後枝の皮膚走行

脊髄神経後枝の内側枝と外側枝は、約60°の角度で外下方に走行して皮膚知覚を支配していると主張しする文献( ScientificRwserch Open Acsess HP)がある。デルマトームの背腰部神経支配の分布の縞模様は、せいぜい30~45°なので、60°という角度は受け入れ難いかも知れない。 
しかしの60°というのは、撮診を行った結果であって、筆者の実感でもある。ただそうするとデルマトームの知識との整合性に無理があるので、あえて本稿では45°とした。

 


2.筋々膜性腰痛

1)病態生理

背腰部の過伸展や捻転で椎体間の急な位置変化
                   ↓
とくに短背筋群のトリガー活性   → 背部一行(棘突起外方5分)圧痛(+)
 (棘突起直側の深部筋)
                   ↓           
脊髄神経後枝内側枝の興奮が後枝外枝にも伝達  →  外下方45°方向に痛み放散、同部位に撮痛(+)


※註釈:ダメージを受けやすい筋とは

不正動作により突発的に生ずる痛みは、大腰筋、腰方形筋、短背筋群(=回旋筋群、多裂筋、半棘筋)の問題らしい。これらの筋群は、腰椎に直接付着しているという共通点がある。短背筋群の長さは短く、したがって起始と停止間が短いので、脊椎捻挫の際に衝撃を受け流すことが難しいので筋ダメージを受けやすい。

   

2)針灸治療

①夾脊刺針

短背筋群の筋筋膜症に対して実施。側臥位にせしめ、3~5番程度の針で、症状部から内上方45°の圧痛ある棘突起直側から深刺し、短背筋群中まで刺入。普通は症状部に至るような響きはない。


②志室外方から横突起方向に深刺:大腰筋、腰方形筋 

詳細については原稿を改めて説明する。上図で大腰筋や腰方形筋に対する針は、筋を直接狙わず、腰仙筋膜深葉を直接刺激している。これは、筋肉よりも筋膜の方が痛覚感受に富むことによる(もっとも筋肉も筋線維一本一本が筋膜に包まれているので、純粋に筋肉刺激と筋膜刺激を分けることはできない)。針灸治療においては、筋硬結中に針先が命中するようにもっていくことが重要である。筋硬結中に針先が達すると針響が得られる。

 
3.T4症候群(椎間関節性腰痛特殊型)

T4症候群とは、カイロプラクティック分野の概念なので、医学的にはマイナーだが参考にはなる。胃に神経を送り胃の働きを制御している中部胸椎Th4,5,6の中でもTh4の背骨が神経関節機能に障害をきたすことで、胃の働きに影響を及ぼ症状が出現するのだという。主に「逆流性食道炎」がその特徴だという。

横隔膜は、その中心部がC3~C4神経支配で、辺縁部がTh7~Th12肋間神経支配であることが知られている。胃は内臓としては知覚過敏な方だが、横隔膜と比べれば鈍感なので、我々が胃症状と思っている心窩部痛は、実は横隔膜過敏症状であることが多いだろう。
熟練を必要とするがTh6~Th7棘突起外方1.5㎝から深刺して椎間関節に針先を当てて、数秒間タッピングすると、針響はあたかも胃に響いているような感じを与えることができる。先のT4症候群いうのは、この現象のことを示しているのかも知れない。
 

 

 4.メイン Maigne 症候群(椎間関節性腰痛特殊型)

胸椎腰椎接合部症候群のことでMaigneが提唱した。胸腰椎移行部(Th12/L1棘突起間)の椎間関節捻挫に伴う後枝興奮のこと。臨床上高頻度である。胸椎間は回旋の可動性があるが、腰椎間は屈曲伸展の可動性はあっても回旋可動性はない。上体を大きく回旋した場合、Th12/L1棘突起間の椎間関節に強い力学的ストレスが加わることになる。上殿皮神経が圧迫を受けて発症。上殿皮神経とはL1~L3脊髄神経後枝外側枝の別称である。

上殿痛・大腿外側~大転子部痛・鼠径部~陰部痛という3つの領域の痛みを起こす。腸骨稜の辺りに圧痛が出る。上殿皮神経の走行を調べるには撮診法が利用できる。

上記症状に対しては、Th12棘突起下直側の夾脊または椎間関節刺で再現痛が得られ、直後から痛み軽減することが多い。

 

 

 

 

 


 


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