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立位で膝関節症の針治療をすることの意義 Ver. 1.3

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筆者は本年11月15日に「膝OAに対する鍼灸臨床 Ver.2.0」を発表した。

この時、立位で診療することの必要性について少し触れたのだが、鍼灸の効果を高めるために重要な内容なので、今回きちんと説明したい。


1.仰臥位での膝関節周囲の治療

膝OAでは、膝周囲の圧痛点に刺針施灸することが多いが、多くは仰臥位で行い、置針あるいはこれに低周波通電を追加する形をとるのが定石であろう。

しかし筋を脱力させた状態で刺針するのは、確かに針はスーッと入るだろうが、あまり効果的でない。膝OAの痛みの正体は筋膜症で、筋緊張を緩めることが治療目標となるから、、問題のある筋を収縮または伸張させた状態にして刺針した方が効果的になる。この体勢は患者にとって不安定なので単刺術や雀啄術が適しており、置針や置針パルス通電は不適切になる。

膝OAで重要となるのが大腿四頭筋の緊張改善だが、大腿四頭筋の起始である膝蓋骨上縁部鶴頂穴あたりのの圧痛硬結は、よい治療目標となる。刺針は四頭筋をストレッチさせる、すなわち仰臥位で膝屈曲位にさせて刺針すると、四頭筋腱刺激することで四頭筋を緩める
生理的機序(Ⅰb抑制)に働きかけとよい。
鶴頂刺針の理論は、オスグッド病に対する膝蓋腱(=犢鼻)刺激にも使える。

 

2.膝蓋骨周囲の圧痛に対する立位での施術の意義

1)治療効果の乏しい仰臥位施術

では仰臥位膝伸展位で、膝蓋骨内縁や外縁(内膝蓋穴や外膝蓋穴)の圧痛や内膝眼・外膝眼の圧痛に対してはどう対処すべきだろうか。
筆者はこれまで、大腿膝蓋関節の滑動性の悪さで、この滑液分泌を促す目的で局所圧痛点に刺針するという解釈から局所圧痛点に刺針していたが、治療を繰り返しても思ったほど効果はないのが実情だった。


2)立位での施術

これらの穴の圧痛も実は筋膜症の一つなのではないだろうか。このアイデアが正しいとして、「仰臥位膝屈曲位で鶴頂の圧痛を診る」と同様の治療方策はないものかと悩んだ。その結果、たどりついたのが「立位にしての刺針」だった。
   
膝関節痛は、仰臥位姿勢では痛みが出ないのが普通である。この姿勢にさせて圧痛点を探して刺針してもあまり効果が得られない場合がある。膝痛で痛みが生ずるのは、立った時そして歩いた時であるから、ベッド(または踏台)の上に立位にさせた状態ににして圧痛点を探して刺針するという内容である。

①立位にして、前面から行う施術のデメリット

当初、患者をベッドに立たせ、術者は、患者に向き合った姿勢で丸椅子に座って、圧痛探しをした。圧痛点は膝蓋骨縁周囲の下半分(内膝蓋、内膝眼、犢鼻、外膝眼、外膝蓋など)に多数出現することが多く、また仰臥位で調べた反応点とは微妙点に反応点がれた部位だったり全く異なった部位に圧痛を発見できた。仰臥位で膝屈曲位で探る圧痛は、膝蓋骨上半分なので、立位で圧痛点を探る方法は、また別の観点からの探索であって,互いに補完性があることが判明した。探るのはそこに単刺術をすると、直後効果が非常にあった。

 ただしこの姿勢は、当院のベッド周りの構造上、患者のつかまる処がないので、患者は不安がっていた。


②立位にして、後側から行う施術のメリット

そこで数週間後から、ベッドに立たせた患者の後側から、圧痛探しをしてみた。この姿勢では、両手で患者の膝両側面をしっかりとサポートでき、キッチリとした押手も構えられるので、非常に刺針しやすくなった。その上、患者は壁と向き合うことになるので、壁に手をつくことができて以前より安定感がありそうに見えた。

 


3.膝の新穴

話はまったく変わる。膝関節痛の圧痛点位置を表記するには、正穴だけでは足りず、従来から皆が不自由していた。その解剖学的部位を記録するのも面倒なことであった。このような状況にあって、出端昭男氏は、御著書の中で、自分なりに命名したツボ名を発表した。これは本人の思惑を越えて、針灸界に広く普及していった。その理由は、命名理由が解剖学的特徴をうまく捉えたからであろう。

 ①下血海(奇):膝蓋骨内上縁の裂隙部。
 ②下梁丘(奇):膝蓋骨外上縁の裂隙部。
 ③内膝蓋(新):膝蓋骨内側縁の中央。
 ④外膝蓋(新):膝蓋骨外側縁の中央。
 ⑤内膝眼(奇):膝蓋靱帯内側の陥凹部。
 ⑥外膝眼(奇):膝蓋靱帯外側の陥凹部。


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