1.腸腰筋の基礎知識
大腰筋とは、大腿骨から腰椎のそれぞれ全部の間に走る筋で、腸骨筋は骨盤から大腿骨の 間に走る筋。腸骨筋は走行途中で大腰筋と同じの束(腱)になり大腿骨に付着しているので、2筋合わせて腸腰筋とよばれる。
起始:浅頭は第12胸椎~第4腰椎までの椎体および肋骨突起。深頭は全腰椎の肋骨突起。
停止:大腿骨の小転子、支配神経:大腿神経,作用:股関節の屈曲(大腿の前方挙上)
2.腰神経叢症状を生ずる腸腰筋緊張
腰神経叢はL1~L3脊髄神経前枝で構成されるが、腸腰筋中を走行しているので、腸腰筋が緊張すると腰神経叢症状を生ずることも多い。具体的には大腿前面、大腿外側痛、大腿内側痛を生ずることがある。また腸腰筋停止部は大腿骨停止部なので、鼠径部から大腿小転子部の痛みを生ずることがある。
3.大腰筋性腰痛の症状
①Th12~L5の脊柱傍の痛み(腸骨稜に圧痛なし)
②大腿痛とくに鼠径部、大腿前面の痛み
③大腿骨小転子付近の圧痛
④大腿挙上困難
⑤中腰姿勢が痛み少なく、無理に上体を起こすと腰痛増悪(腸腰筋伸張痛)
何らかの原因で、大腰筋の持続的過収縮が生じると、中腰姿勢となる。中腰姿勢が続くとバランスをとるため、二次的にアウターマッスルである腰背筋の収縮をきたし、腰背筋の筋々膜痛としての症状を呈するようになる。
⑥朝起きたときに痛むことが多い。←持続収縮状態にある腸腰筋を、上体を起こすなどして無理に伸張した。
⑦背腰筋緊張状態の合併がない場合、腰部起立筋に顕著な圧痛はみられない。
4.大腰筋刺針(似田)
伏臥位にてL4、L5椎体棘突起の外方3寸(腸骨稜縁)からの内方に向けて深刺して大腰筋中に刺入する方法が一般的である。
だが、筆者はそれを側腹位で実施している。この方が大腰筋を触知しやすく、刺針も容易になる。側腹位、3寸#5~10の針を用い、ヤコビー線の高さで、起立筋外縁を刺入点とし、椎体横突起方向に7~8㎝刺入する。針先が患部へ響くと、ズーンと重く響くような感覚が腰全体に広がる。大腰筋を包む腰仙筋膜深葉が刺激された結果である。
側腹位で大腰筋が触知しづらい場合、上になっている側の大腿部を自分のお腹に近づけるよう、強く股関節を屈曲させるようにすると、さらに大腰筋を触知しやすくなる。
5.大腰筋刺針アドバンス(大腰筋を緊張した状態にしての刺針)
大腿を挙上しづらいという訴えに対し、立位で踏台に患足を乗せた姿勢にする。その姿勢を保持した状態、上述の大腰筋刺針を行う。ときには置針した状態で、健足を少々宙に浮かせ、患足に全体重をかける。その状態にして、すでに刺入してある大腰筋刺針を軽く上下に動かすと、大腰筋が硬く緊張するのを刺手に感じとることができるので、雀啄手技を加えて抜針する。