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Channel: AN現代針灸治療
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右肩甲骨内縁が鳴る者への簡易挫刺針法(27歳、男性)

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1.主訴と現病歴

1年半前頃から、両側肩甲間部が痛く、我慢ができなくなった。カイロや整体をすると施術直後はよいが、すぐに元にもどる。地方で一人暮らしをしていて、指圧を頼めるような友人も見あたらないという。この患者に対し、腹臥位にて2寸#8で左右の胸椎棘突起外方5分の部に計10本程深刺し、40分程度置針することで持続性のある鎮痛効果をもたらしたことは以前のブログで説明した。

本患者は他の訴えとして、「肩を動かすと右肩甲骨あたりがゴクッと大きく低い音をたてる」というものがあった。やはり1年半のほど前から出現するようなったという。

2.所見

上腕をどの方向に動かしても音は鳴らないが、肩甲骨を挙上させる動作をすると、その度にゴクッと音がすることが判明。音の鳴る部位を同定するため術者の手掌を肩甲骨周囲にあて、音の鳴る動作を行わせると、肩甲骨内縁あたりであることがわかった。
肩甲骨内縁中央あたりは滑液包がある部であり、滑液不足により肩甲骨とその下にある組織の摩擦が大きくて音がするのではないか。また肩甲骨の上方挙上は僧帽筋によるものなので、肩甲骨内縁に僧帽筋が付着する部の摩擦が問題だと考察した。


3.針灸治療

治療は音の鳴る一点を定めるのが困難だったため、肩甲骨内縁で僧帽筋が付着する部に直径3㎝程度の範囲に10本ほど集中置針を行い、音が出るような動作(肩甲骨挙上運動)を行わせる運動針をおこなってみすると音の大きさに変化ない場合と小さくなる場合があり、変化ない場合には他の部位に指針して音の小さくなる部位を探し出した。

要するに音が鳴るピンポイントがわからないので、おおざっぱに網を張るという状況で、試行錯誤が続いた。しかしある時、置針してある10本ほどの針で、音の鳴る瞬間にブルンと針柄が震える針を3本発見できた。そのそれぞれに簡易挫刺針法をおこなってみた。
まったく音が変化しなかった簡易挫刺針もあったが、瞬時に音が大幅に小さくなることも多かった。手の下感ではなく、視覚的に判断できるので、無駄のない治療ができるようになったと思っている。



4.簡易捻挫刺針法とは

捻挫刺針法の簡略版を簡易捻挫刺針という。捻挫刺針法とは針先がの字形状となっており、そこに真皮や皮下組織をひっかけて切断する方法。塩沢幸吉氏が創案した。
今日でいう浅層ファッシアに対する治療になる。強刺激になり、専用の針が必要なこともあって、あまり普及していない。簡易捻挫刺針は通常の豪針を用い、一方向に針柄を何回転も回し、針体に組織が絡みついたら一気に引き抜くというもの。


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