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陳久性胸椎椎間関節症の針灸治療効果持続のための工夫

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筆者は2016年6月.1日に「椎間関節症には針が一番」との表題でブログを発表した。その病態生理は、胸椎微小捻挫→脊髄神経後枝興奮→後枝支配筋(とくに長・回旋筋)の緊張→放散痛として微小捻挫部から斜下方への痛みというものであった。その針治療の機序は、後枝支配筋(とくに脊椎傍筋)の緊張部(棘突起から外方5分にある胸椎一行)に刺針することで筋緊張緩和させ、それが後枝痛を緩和させるという考察であった。

では実際の症例に対して胸椎一行の限界はあるのだろうか。現在千人以上の患者に施術してみた印象を記すことにしたい。


1.急性~亜急性 (発症後数日~数週間)に対して


1)急性の椎間関節症には、強力な効果が発揮できる。
  
背腰部を訴える患者で、胸椎一行に圧痛があれば、そこに患側上の側臥位で深刺し5~10分間置針すると有効である。
背腰部の患者の訴える症状部位から、斜め上方45~60度方向で圧ある胸椎一行を治療点に定める。体位は患側上にした側臥位。また深刺とは、針先が椎弓根の骨膜に達するまで、または2㎝以上刺入して硬くなった筋に刺入する場合である。発症後数日~数週間程度の症状に対しては、1回~数回で略治に至る。
※伏臥位ではなく側臥位で刺鍼することの優位性は、棘突起傍の圧痛を探りやすく、また棘突起直側に刺針しやすいため。

2)プラスアルファの治療
  
上述治療後、ベッドから下りて上体を前屈したり上体を左右に回旋させることを指示し、現時点での痛みの具合を問うと、楽になったとはいうが、まだ痛むと訴えるのが普通である。痛みの出現するポーズをさせ、どこが痛むのかを指頭で触ってもらった部に新たに刺針したり、あるいは先に行った胸椎一行の圧点に再度刺針すると症状がもう一段階改善させることができる。
私は1)2)をも行うことで1回の治療としている。


2.慢性~陳久性 (発症半年から数年)に対して

1)慢性の椎間関節症には、一時的効果が得られるのみ

以前、私は「椎間関節症には針が一番」と題してブログを発表したこともあって、数年来何をやっても治らないという慢性・難治性のものを扱うことも多くなった。それもかなり遠方から来院する患者も少なくなかった。
急性の時と同じ治療を行い、側臥位で5~10分間の置針。反対側側臥位で同様治療点に治療で5~10分間の置針を実施。これで患者の多くはこれまでの治療で経験したことのない症状改善を実感できて、次回の予約をとって喜んで治療室を後にするのが普通だった。確かに最初の数回治療は、その効果に満足させることができるようだったが、やがて治療持続時間が数十分~半日と短いことに患者が気づき、間もなく来院しなくなるケースも少なくなかった。

2)治療持続効果を伸ばす40分間置針
 
治療直後の鎮痛効果をのばすために、当方でもいろいろ工夫したが、その努力も実りのないものだった。針に低周波通電をしてもみたが、治療効果が増すことはなかった。
胸椎一行刺針の使用針を2寸#4から2寸#8に変更すると治療直後の治療効果は増大したが鎮痛持続時間は延びることはなかった。
 
たまたま浅野周氏が、「木下晴都氏は著書『坐骨神経痛の針灸』の中で、筋をゆるませるための置針時間は、20分やっても15分置針と同等の治療効果だったので、効率的には15分置針か最適だと記していたが、本当に緩ませるには40分置針が必要だ」と主張していることを思いだし、置針時間を40分間延長することにした。
 
なお私はこれまで背部一行では患側上にした側臥位で背部一行に刺針しているので、両側治療するには反対の側臥位にしてもう一度背部一行に刺針することにしていたが、40分置針するには左右側臥位で40分ずつの置針では治療時間が長すぎるので、腹臥位で行ってみた。なお仰臥位40分ならばともかく、腹臥位40分というのは、患者にとって我慢の限界であって、途中針を半分程度抜いて体動できる状態にして、座位や立位で上体の運動を行わせる必要もあった。
 
最近来院した27歳男性の患者では、左右側臥での胸椎一行置針(#8針使用)で各10分置針では、治療後30分ほどで痛みが元に戻ったのに対し、腹臥位40分に変更してから治療後4時間の持続効果を維持できるまでになった。壁を一つ突破した感がある。

 伏仰位での胸部一行40分置鍼中(上写真では頚椎の一行置鍼も行っている)


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