1.側頭部痛をもたらす放散痛
側頭痛をもたらす筋膜症には、局所として①側頭筋膜痛の他に、②後頸~後頭筋膜や③胸鎖突筋膜など、3方向からの放散痛が関与する<吹きだまり>のようなところである。さらに側頭筋が緊張すると、顎関節部や上歯に放散痛を起こすことも知られている。
2.側頭筋の筋硬結の触診
側頭筋の起始は側頭骨の側頭面全体、停止は下顎骨の下顎枝である。支配神経は三叉神経第3枝。三叉神経というと顔面知覚を支配しているが、三叉神経第3枝は、例外的に咀嚼筋も支配していることも広く知られていることである。
側頭筋は薄い筋で、その底には側頭骨があるので、指で擦りつけるように触ると、筋線維を触知できる。その筋線維の方向は、下顎骨下顎枝から放射状に側頭部全体に広がるので、この流れを意識して筋線維を横断するように擦ると、何ヶ所か筋硬結を感ずる場合が少なくない。
3.側頭筋の運動針法
側頭筋の筋硬結は噛みしめると明瞭になる一方、噛みしめる強さによって移動する。よって、先ずは弱い力で噛みしめるよう患者に命じて硬結を繰り、つぎに強い力で噛みしめるよう命じ硬結を繰るようにする。その時出現した硬結を指頭で押さえておき、まとめて1㎝~2㎝横刺する。横刺した状態で、三たび噛みしめ動作を行わせるようにするとよい。
側頭部圧痛点は、下図のごとく、外眼角と上耳介側を結んだライン上に出現しやすいように感じる。