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腰部神経根症に対する坐骨神経ブロック針 Ver.1.1

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本タイトルは2006年6月23日に投稿したものだが、現時点の常識に合わせ、少々改変して報告する。

1.腰部神経根症の概念
臨床的にはL5S1L4(多い順)神経根の圧迫により下肢の痛みや知覚鈍麻を起こしている病態。神経根圧迫の原因としては20~40才では腰椎椎間板ヘルニア(線維輪の膨張や髄核脱出)によるものが多い。高齢者では変形性脊椎症(骨棘による神経根圧迫)によるものもある。

2.診断
L5やS1の神経根症であればSLRテストで60度以内で、疼痛は下肢に放散する。L4の神経根症の頻度は非常に少ないが大腿神経伸展テストで大腿部に痛み放散する。ほかにデルマトームに従った知覚鈍麻が出現。

3.病態生理
一昔前までは、坐骨神経が腰部や殿部のヘルニアや筋により圧迫され、神経絞扼障害を起こすと考えられていた。しかし運動神経は下行性で、知覚神経は上行性なので、腰殿部で坐骨神経の知覚成分を圧迫しても下肢には痛み症状は出現しないのであって、坐骨神経痛で生じる下肢症状は腰殿部筋の下肢放散痛によるものだされるようになった。ゆえに腰殿部筋のコリを緩めることが本質的な価値をもつ治療へと見方が変化した。


4.鍼灸治療
L5やS1の神経根症の症状は坐骨神経痛が出現する。坐骨神経痛は仙骨神経叢(L4~S3前枝)の主要枝であるから、L4やL5の神経根部に刺針することは、高い技術が必要だが理論上は可能である。ただしこのような神経根刺針は、直後の治療効果は別として症状改善に寄与するかは疑わしい。

鍼灸は対症療法だと割り切り、神経痛を改善するという単純な目的に絞って行うのがよい。それには側腹位にて、殿部の最大圧痛点である坐骨神経ブロック点(中国の環跳穴)への置針、それに下肢症状部への置針(パルス鍼でもよい)で10~20分間を行う。すると数日間は良好な状態に保てることが多く、この効果を持続する目的で下肢症状部への自宅施灸を行わせる。

坐骨神経ブロック点刺針:側腹位(シムズ肢位)で実施することが重要。上後腸骨棘と大転子を結んた中点から、3㎝直角に下した点を刺入点とする。2.5寸#5~#8の針で直刺、電撃様針響を下肢に与える.。あえて少しずらして坐骨神経傍の梨状筋に刺針することで電撃様針響をあたえない方法もあって、両者間には治療効果の差はない。しかしながら、響きに過敏な者では電撃様針響は受け入れられない一方、電撃様針響を与えないと鍼灸師の技術が低いとする思い込みの患者もいるので、患者の好みの問題だといえる。


5.患者指導
神経根症は安静が非常に重要である。安静にすることで、次の効果が生まれる。

①局所の炎症が治まることで浮腫も消退して、神経圧迫の程度が軽減する。
②長期的には自ら神経根部の神経が位置を変化させることで、神経圧迫の度合も軽くなる。
③白血球がヘルニアを貪食する。

3週間の安静でもあまり改善しない場合、手術も考慮するが、実際に手術に至る例は100例中数例にとどまる。
腰椎神経根症では、下肢の知覚鈍麻を訴える例も多いが、知覚鈍麻に特化した治療というものはなく、痛みを軽減することで次第に知覚鈍麻も軽くなることを期待する。ただし痛みよりも知覚鈍麻は治しにくい。


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