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Channel: AN現代針灸治療
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鍼尖点検器の自作 ver.1.1

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1.曲がりやすかった銀鍼

今から40年前頃まで、針灸専門学校の実技教育では銀鍼が普通に使われていた。一本50円~70円くらいした。銀は腰が弱く、刺入する際の重心を間違えると、すぐに”く”の字になってしまったので、鍼体を曲げずに刺入するだけでも結構難しかった。しかし反復練習というのは、それなりに意味あることで数ヶ月の練習で同学年の大部分の者は、スムーズに刺入できるようになった。当時はステンレス鍼が普及して間もない頃なので、多くの鍼灸師はステンレス鍼で患者の治療にあたっていた。ではなぜ針灸専門学校で銀鍼で練習したのか、それは現在の鍼灸国家試験の前身である都道府県試験で実技試験では銀鍼の寸6#3を使うという決まりがあったからだ。銀鍼では滅菌ができないだろうと思われがちだが、実技の際には自分で購入した鍼は相手に渡し、それを自分の身体に刺させることで、感染の問題をかろうじてクリアーしていたつもりだが、徹底はされていなかった。
とはいえ、銀鍼は縫い針のように綿を敷いた針箱に並べて保管していた。鍼灸学校入学して最初の鍼実技の時間に、衛生的に問題のあることが理解できた。鍼灸医療とはずいぶん不衛生なものだと強く思った。しかし慣れとは恐いもので、この不衛生であることも気にならなくなった。正しくは気にたら先に進めないと思うようになった。銀鍼の鍼体を簡単には曲げなくなる程度に刺針技術が上達すると、同じ鍼を何回も使うことになるので使っているうちに鍼尖が摩耗し、どうしても切皮痛が起こるようになった。こうなると普通は破棄するが、こだわりのある治療院では銀鍼の鍼尖を顕微鏡で点検しながら砥石で研いだりもした。面倒なことだったが、それも鍼灸上達の修行とみなされていた。ちなみにステンレス鍼の場合、硬いので研ぐことはできなくなった。

銀鍼には、鍼のあたりが軟らかいという治療上の良さはあるが、オートクレーブでの滅菌ができない(鍼体が酸化して黒ずみ、もろくなる)という致命的欠陥があったので、ステンレス鍼を使う時代に移行する必然性があった。四十数年前のこと筆者が鍼灸学校に入学して間もなく、煮沸消毒でなく、オートクレーブで鍼を滅菌しなければならないと啓蒙され、日本鍼灸師会推薦の鍼滅菌用のオートクレーブが発売された。当時15万円程度したことを記憶している(現在の金銭感覚では40万円程度になるだろう)。製品は価格を抑えたものらしく、注水・減圧・乾燥はすべて手動式で、スタートスイッチを押した後も減圧バルブを開き、扉を少々開いて乾燥させねばならないなど手間がかかるものだった。鍼灸師は当時から低所得者が多く、15万円というのは突拍子もない金額だった。セイリンのディスポ鍼も発売開始されたが1本40円で、通常のステンレス鍼は1本50円だったので、頑張ってステンレス鍼をオートクレーブ滅菌後に再使用するというのがスタンダードなやり方となった。
ステンレス鍼を再利用して、鍼体が一定以上曲がってしまえば破棄することになるが、問題となるのが鍼先の変形で、ステンレスは硬いので再使用できるか捨てるかの判断を効率良く実施したいと思うようになった。


2.塩ビパイプ継手を使った鍼尖点検器の自作
鍼尖点検器の自作といっても塩ビパイプを買ってきてラップを張るだけである。
今から40年程前、鍼尖点検器という製品があった。木製で太く短いパイプのような形だった。片面にサランラップを張り、チェックすべき鍼を単刺していく(回旋はしない)。
サランラップを使ったのは、サラン樹脂でなければく音がでなかったためであった。他の他のラップはビニールのよう伸びてしまい、鍼がパリッと貫通できなかったからだ。しかし今日では他社製のラップも品質向上して使用に差し支えなくなっており、当家でたまたま使っていたのはクレラップだった。

短時間に次々と鍼の良し悪しを判定できる良い商品だったが、現在市販されていないようである。その代用として筆者は塩ビ管にラップを巻いて鍼先点検している。塩ビ管はいろいろ試してみた結果、だいたい次の写真のような大きさに落ち着いた。この製品は径の異なるパイプの継手として使うものだが、単純の筒状のパイプでも構わない。ホームセンターで入手で、値段は200~300円程度。

3.鍼尖点検器の使い方
 
①未使用や新本同様の鍼であれば何の抵抗もなくスッと抵抗なくラップを突き破ることができる。
②わずかに鍼先か変形した鍼の場合、ラップを破る時、ツッという小さな音が生ずる。
③さらに鍼先の変形が少し進行した鍼であれば、ラップを破る時、プツッという音が出る、と同時にラップが下に押しつけられる。出る。
④鍼先の変形がさらに変形した鍼であれば、下に押しつけるように力を入れて、大きなラップを突き抜ける音と共にどうにかラップを貫通することができるようになる。

このようにあえて分類してみると、面倒に感じるかもしれないが、少し慣れると誰でも直感的に判断できるようになるだろう。

なお当院では③④を使用不可として廃棄処分にしている。

ラップを巻いた状態

 

 

鍼尖点検中の様子


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