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頭針法がなぜ効果をもたらすのかの一考察 ver.1.1

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1.頭針法に関する成書の貧困について
 
頭皮に刺針することで、頭痛のみならず、非常に多様な疾病や症状を治療する方法を頭針法とよぶ。頭針にはいくつかの流派があり、それぞれ独自の頭針チャートをもっていて、ある疾病の時にはこの部分を刺激するという法則が定められている。しかしながら流派にり指定された刺針点が異なることや微妙なコツもあって、追試してみても容易には治療効果が観察できないという困った問題がある。
さらに勉強しようとする者の意欲を削ぐことになるのは、生み出され理論化された過程が説明されていないので、やってみて効いた、効かなかったというレベルに問題が終始するほかないことである。こうした論理性の欠如は、耳針法とまったく同じもので、中国人特有の思考回路かと思っていたら、山元敏勝著「山元式新頭針療法」でも同じような内容なので非常に失望した。

耳針チャートにはノジェ式と中国式の2種が代表的だが、基本的には母胎内にいる胎児は頭を下にして手足を縮こまっているが、その形が耳介に反映されているという風になっている。にわかには信じがたいが、そういうこともあるかもしれないとは思うことができる。
頭針チャートでは大脳皮質の機能局在が元になっているらしいが、脳は頭蓋骨で覆われており、大脳皮質局在と頭皮が対応関係にあることはにわかには信じがたい。


2.頭針の機序
 
偏頭痛と血管刺激部位の関係は、RayとWolfによって詳細に検討されている。それによれば脳の表在性の動脈刺激部位と頭痛部位の関係は、あたかも頭蓋骨が存在しないごとく、血管直上付近の頭皮に出現(直径5㎝ぐらいの範囲)し、脳底部の動脈では、耳と眼やこめかみの高さで帯状に出現することが確認されている。
一方頭皮上を刺針すると、刺針部を中心とした大脳皮質の血流改善が観察されている。これは三叉神経を仲介した反応だと推定されており、頭皮刺激が直下の大脳皮質に直接影響を及ぼしているとは考えられていない。なお山元式新頭針法は、別称頭髪際刺針とよばれており、文字通り前頭髪際を中心に治療点を求めるもので、三叉神経の分枝である前頭神経刺激だといえるかと思う。

つまり障害部位の大脳皮質の血流を増すことが治効を生むのだと仮定すれば、頭皮への刺針は、ある程度の効果をもたらすことが予想される。その施術点を求めるには、三叉神経支配領域であることが必要条件であるが、それ以上のことは不明である。ただ頭針チャートが何通りもあるように、かなり大きな面積をもつものだと予想される。


最近、パーキンソン病に対し、耳介上方のブヨブヨした感じの処に、横刺捻転手技をすると症状軽減し、また血中ドーパミン量が増加傾向にあることが確認されている(水島丈雄:パーキンソン病の鍼灸治療、医道の日本、平成15年12月号など)。三叉神経を刺激することで、脳内物質の分泌に変化がみられることは、今後の針灸の発展方向に大変な影響をもたらすことになるだろう。

 

3.頭針が有効となる条件
 
このような知見のもとに自己流に等しい頭皮刺激を行っても、実際にはあまり効果が得られないだろう。というのは、①一定の刺激量、②促通手技の併用、③一定以上の置針時間といった条件も満たす必要があるからである。

①一定の刺激量とは、中国針程度の太さ(和針10番相当)の使用である。

②促通手技とは、患部に刺激を与えるということである。頭皮針の創始者、朱明清氏の方法は、これが非常に徹底している。たとえば片麻痺で歩行困難の患者に対しては、座位にして頭皮針を行うが、頭皮針で手技針を行う一方、麻痺側の足底を、繰り返し床に叩きつけるような自動運動を併用したり、耳疾患の患者では頭皮針の手技針を行いつつ、外耳口に指を入れ、指を前後に動かしたり、外耳口を塞ぐように耳介を折り曲げ、指で叩いてその音を聞かせるようにする。これらは一言で言うと導引術を併用しているといえる。

※導引とは何か
中国医学には治療医学と養生医学があり、治療は薬と鍼灸、養生は食養生と気功から成り立っている。この気功の前身が導引吐納法で、導引とは身体をゆり動かし気の通路である経絡がスムーズに流れやすくする体操法のこと、吐納とは呼吸法のこと。人の心は常に静かであるべきだが、身体は常に動かしていた方がよいという思想にもとづく。


③治療の直後効果は速効的だが、手技を終えてもすぐに抜針はしない。すぐに抜くと元の症状に戻るらしい。1時間以上置針し、重症者には半日置針することもあるという。なお治療直後効果ない者は、置針しても無駄である。





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