10日前に懇親会に出席した。酩酊しての帰り道の際、右下肋部をどこかにぶつけたらしい。打撲部は擦り傷はないが、わずかに内出血がある。発赤・腫脹なし。起きている時は自覚症状ないが、横になる際、寝返り時に打撲部が痛む。しかしそのうち自然治癒するだろうと放置していた。
しかし1週間経っても症状に変わりはないので、強い圧痛点を3カ所選び、円皮鍼をしてみた。そのまま横になってみたが痛みはなく、寝返りの際もほとんど痛みを感じなかった。これで略治するだろうと予想したが、円皮鍼をした2日後から以前の半分程度の痛みがぶり返した。そこで再び圧痛点を探り、最大圧痛点5カ所に円皮鍼を追加した。その結果、前回ほどの著効は得られず、症状も7割減程度であった。
このような症例は決して珍しいものではないが、次の2つのことに思い至った。
コメント
1.強い症状は少数穴に短時間治療、弱い症状にはツボ数を増やし、長時間治療になる傾向
代田文彦先生は次のように話してくれた。
限局した強い痛み→局所への少数穴治療で大幅に痛み減少
やや広い範囲の弱い痛み→やや広い範囲への多数穴治療で、小幅に痛み減少
2.円皮針・皮内針の治療理論
30年以上前、中国から初輸入された円皮針は針体長2㎜、太さは和針の#8程度だった。しかし現在、わが国の円皮針は長さは最長でも1.5㎜程度、太さは和針の#1~2程度となっている。つまり真皮層は刺激するが、その深部にある皮下結合組織層を刺激しないようにしているらしい。表皮厚は0.2㎜、その深部の真皮厚は平均2㎜となっているからだ。
真皮には血管や神経があるので、刺針によりこれらの組織を刺激する。末梢神経に弱い刺激を与えると、ゲートコントロール理論により強い痛みを鎮痛できる。また血管を刺激すると内出血するが、その損傷再生過程で、組織の改編が行われる。
あえて皮下組織に針先を入れないのは、円皮鍼を身体に入れている間、皮下筋膜(浅層ファシア)を刺激することでチクチクするのを避けるためだと考えた。