1.上星・顖会への長期的透熱灸の効果
1)急性鼻炎の治療の耳鼻咽喉科治療は抗生物質投与がよく効くが、慢性化すると抗生物質を使うと改善するが中止すると元に戻るという情況を繰り返しているという現状がある。
2)一方、針灸治療では、鼻周り(挟鼻や攅竹など)への置鍼を行うとともに、前頭部の上星(前髪際を入ること1寸)や顖会前髪際を入ること2寸)に長期的に透熱灸をするのが定番化していると思っている。上記のツボはすべて三叉神経第1枝知覚支配だが、同じ三叉神経第1枝知覚支配の鼻粘膜に刺激を与え、それが交感神経を興奮させ、鼻甲介の充血を減らすので、鼻の通りをよくする。
3)鼻周りに灸をしないのは灸痕をつけたくないからで、前頭部は頭髪中にあるので施灸しても灸痕が目立たないという判断である。
4)急性鼻炎は耳鼻科で治療手段があるのであまり針灸に来院しないが、慢性症では相対的に針灸の価値が増してくる。その治療効果の秘密は長期施灸することにある。
5)半月~3ヶ月の反復刺施灸(自宅施灸)を与えることで良好な状態を長期間保つ間に、鼻粘膜の修復が行われ、施灸中止後も、しばらく症状は消失状態を保つことができる。このことは、慢性鼻炎・慢性副鼻腔炎の治療として有用であることを示すものといえる。
例1:1週間、外来処置や薬物治療すれば→直接アレルギー反応が抑えられるので、その間は調子がいい。
例2: 2ヶ月、外来処置や薬物治療すれば→粘膜が正常化してゆくので、治療後もしばらくは調子がいい。
(医道の日本社 発表は医師だが氏名は失念)
2.マクロライド少量長期投与について
近年、3~6ヶ月間という長期間、抗生物質マクロライドを投与するという方法が考案され効果を上げることができるようになった。この方法は長期施灸とよく似た考なのが興味深い。マクロライド治効理由は、副鼻腔~気道の絨毛粘膜上皮の機能回復にあるとされ、これがそのまま上記の透熱灸治効の根拠になっているように思えた。
マクロライド系抗菌薬は、従来的な抗菌作用とは別に、免疫の調整や炎症を抑制する保護的作用のあることが発見された。現在は慢性副鼻腔炎に対する標準的な薬物療法として広く用いられるようになった。通常の抗生物質は長くても2週間程度しか連用しないが、この治療法では通常使用量の半分を、3~6月少量長期投与する。
本来、副鼻腔壁には絨毛があり、副鼻腔の中に侵入した病原体や異物を粘液とともに鼻腔に向けて動いて運び出す機能がある。この絨毛機能が障害され、慢性副鼻腔炎へと移行してしまう。以前は手術によってこの粘膜を完全に除去することを目的とした「副鼻腔根治手術」が治療の中心だったが、この方法により副鼻腔~気道の絨毛粘膜上皮の機能回復という作用があることが判明した。