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咳嗽の針灸治療

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1.鎮咳の現代薬物療法
     
鎮咳薬として、病・医院では中枢性鎮咳薬(延髄の咳中枢の閾値を上げる)を処方することが多い。末梢性鎮咳薬(気管気管支に作用)はあまり効果がないからである。中枢性鎮咳薬には麻薬系と非麻薬系があり、もちろん麻薬系の方が効果が高い。麻薬であるが使用量はわずかなので、中毒の危険性はないが、副作用として便秘になることはある。麻薬系にはリン酸コデイン(商品名リンコデ)があり、非麻薬系にはデキストロメトルファン(商品 名メジコン)がある。

いずれにせよ鎮咳に効果的な薬物といえど、疾患自体を治すものではない。鎮咳薬が効かないということは、気道内部に何らかのアレルギー反応が関与した炎症が生じ、気道平滑筋のスパズム(収縮)が起きていること示唆する(例:咳喘息)。
※咳喘息:一見すると気管支喘息のようにみえるが、喘鳴や息苦しさを伴わず、咳だけを唯一の症状とする。慢性の咳の原因としては最も頻度が高くい。   

鎮咳の民間療法だが、ハチミツで市販の咳止めよりも効果があることが実証されている。ハチミツ中に含まれる酵素グルコースオキシダーゼが過酸化水素をつくり、これが強力な殺菌作用を持つ。またハチミツには、荒れた粘膜を保護作用もある。とくに子どもの咳に対して就寝前のスプーン一杯のハチミツが非常に有効だとする報告がある。
 


2.咳嗽の針灸でのアプローチ<交感神経を優位にすること>
   
咳嗽は自律神経症状なので、咽痛のように知覚神経の鎮静という治療方針は成り立たない。咳嗽により身体は副交感神経優位になっているので、針灸により交感神経優位に誘導することが重要になる。これは夜に咳が出たり、身体が温まったらせきが出るという者に適した治療方針になる。気管支喘息の治療でも同じことがいえる。喘息の薬物療法は、ステロイド+気管支拡張剤である。気管支拡張剤とは、交感神経興奮させる目的で交感神経β2を刺激している。
 
※語呂:β2刺激で気管支拡張→ 別(β2)機関(気管支)を開く(拡張)
いわゆるβブロッカーとは、これと反対に交感神経緊張を抑えることで血圧や心拍数を下げる薬。
 

3.治喘穴・定喘穴
   
①意義
頭蓋骨部器官全般の交感神経は、交感神経の下頚神経節(別名、星状神経節)から出発する。この下頚神経節と連結している体性神経はTh1脊髄神経なので、大椎付近の刺激は、頚部交感神経節刺激としての意義をもつ。

②取穴
座位。大椎(C7Th1棘突起間)の外側5分。定喘(大椎の外方1寸)や肩外兪(大椎の外方2寸)でも同様の治効あり。
   
③刺針
3~5番針を6分~1寸刺入する。すると咽頭の方に響くことが多い。
 

4.天突移動穴(林家福、山下良平「応症針治」現代書房、昭和41年)
    
気管や気管支は内臓体壁反射が起こらないので、針灸治療は交感神経優位に誘導する方法を行う。しかしこれは気管支喘息時の気管支拡張作用に効果あっても、咳にターゲットを絞った治療ではない。

①取穴
教科書「天突」は胸骨上縁で頚窩の中央にとるが、本穴はそれよりわずかに上方。座位にて胸骨上部に示指先を当て、そのまま指を上方に1㎝ほど撫で上げると、爪先に気管軟骨がひっかかる。この部は押圧すると咳を誘発しやすい特異な部位である。
  
②刺針
寸6#2で直刺。3分ほど刺針し、雀啄を1分間実施。さらに1分ほど刺入して再び雀啄、またさらに1分ほど刺入して雀啄。刺針中に咳を誘発しやすそうになったら、患者に手をで合図させ、ただちに皮下まで抜針)。この方法を2回3回と反復施術。

刺針すると気管軟骨にぶつかって針は止まる。針が止まらずどこまでも刺入できる場合、上下の気管軟骨間をすりぬけていると思えた。気管壁への刺針は針響が生じにくい。
  
③適応
上位気管が患部となる咳嗽、嗄声。気管支や肺の病変による咳嗽には効果不確実。
   
※伝統的な天突刺針:座位で天突から気管に向けて直刺する。仰臥位で頭を伸展させた肢位で天突から気管に向け胸骨下に水平に入れる方法を行う。ともに気管壁に分布する迷走神経刺激になる。

 


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