最近、経穴の語源について調べているのだが、そうこうしているう中で経穴の中に星や星座と関係する経穴がいくつかあるのを発見した。昔の中国人の考え方の一端を知ことができて感慨深い。とくに前胸部の胸骨に特徴的なツボが並んでいる。
1.紫宮(任)
華蓋の下1寸にある。紫宮穴は心臓の位置にある。古代中国では、天帝が住んでいる星すなわち北極星を紫微星(しびせい)とよんだ。紫微とは、価値のある星の意味。ただ紫微星は一つの星ではなく、北極付近の星々のことを指している。紫微星の北には北斗七星、南には南斗六星がある。
2.華蓋(任)
華蓋穴は、胸骨角(胸骨柄と胸骨体の接合部の骨隆起)中央にとる。
華蓋とは、五臓六腑の中で最も高い位置にある肺のこをいう。ただし華蓋は高貴な身分の者の頭上にかざした、上質の絹でできた傘をさすことが多い。
ちなみにキノコの一種のキヌガサタケ(衣笠茸)は絹傘茸とも書く。華蓋の形状に似ていることからつけられた名前であろう。
3.璇璣(任)
華蓋の上1寸にある。
①璇(せん)と璣(き)は北斗七星を構成する星で、どちらも美しいとの意味がある。
ちなみに天枢とは北斗七星の一番目の星、
②回転仕掛けの天文器械。渾天儀(天体の位置を観測するために用いられた器械)の別称。
4.箕門(脾)
①箕門穴は、大腿内側の上1/3で縫工筋と長内転筋の間、大腿動脈拍動部に取穴する。箕門膝を曲げて足を外転させた姿勢で取穴する。その姿が箕(み)に似ていることから命名。箕は竹で編んだザルのような農具で、米などの穀物の選別の際に殻や塵を揺すって外に取り除くために用いた。ちなみに蓑(みの)はワラで作った雨具のことで別物。
②古代中国で「箕星(みぼし)」は南斗六星から柄を除いた四角形の部分をいう。南斗六星は北斗七星に比べて暗く規模も小さいものだが、はるか昔の夜空は暗く空気も澄んでいたから、容易に発見できたことだろう。