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Channel: AN現代針灸治療
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足三里の効能

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1.俳人、松尾芭蕉は著書「おくのほそ道」の中で、旅立つ際は足三里に灸する旨の記載があったことが針灸師にはよく知られている。このようなイメージから足三里には健脚の効能があるとされるようになった。ただし中国では足三里の効能に「健脚」は見当たらない。
 
2.江戸時代になって一般民衆の文化水準が向上すると、世の中の動きにも興味をもつ者が多くなり、神社仏閣参りを口実に、旅に出かける者も増えた。江戸時代の旅人の心配事は、道中で病に倒れることだった。旅人にとって”食あたり”は体力を消耗する致命傷となった。足三里の灸は、あたりを予防の意味があったらしい。
 
3.最近になり、旅人はツツガムシ病を恐れたのではないかとの見方が出てきた。ツツガムシ病は、かつては風土病の一つで、夏になると川沿いの草原に入った農民や旅人の間に、突然高熱(38~40℃)を発し,身体中に赤い発疹が現れ、意識朦朧状態になった。10人に4~5人は14~15日から20日のうちに死んでいく熱病だった。抗菌治療が行われない場合の致死率は3~60%。ツツガムシ病に対しては足三里の灸もあまり効果なかったことだろう。
 
4.江戸時代後期、とびぬけて長寿の家系として百姓の万平の一族がいた。長寿のお祝いとして当将軍、徳川家斉の招待を受けた。その折長寿の秘訣を聞かれた。すると万平は「両足の三里に灸するだけ」と返事した。万平一族は月の初旬の8日間、生涯にわたりお灸を続けていた。当時、中風(脳卒中)になるのぼせの結果だとされ、足三里の灸は、気を下にさげる効果があるとされ、長寿の灸としても推奨された。

 

写真の人、原 志免太郎は健康灸として腰部八点灸を提唱した医師で、針灸師ならば誰でも知っている。これまで針灸医学史上の人物だと思っていたのだが、昭和58年2月号の針灸専門月刊誌「医道の日本」に本人の写真が口絵をかざった。福岡市内で百才を越えてもまだ医師を続けているということで、長寿としての灸の効果を身をもって証明した格好になり、読者を喜ばせた。結局104歳まで聴診器を持ち、「男性長寿日本一」として108歳で逝去した。

 


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