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Channel: AN現代針灸治療
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テニス肘に対する筋と筋付着部への運動針 Ver.2.2

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1.テニス肘の病態と症状


 

テニスのバックハンドでボールを打つということは、飛んでくるボールをラケット面で捉え、さらに打ち返すという動作である。これは手首の強制背屈状態に対応するため、前腕伸筋群は、瞬間的にコンセントリック収縮状態になり、しかも次の瞬間にはエキセントリック収縮に移行している状態である。

打球を捉え打ち返す時、前腕伸筋(とくに短橈側手根伸筋)に非常に強い筋収縮力が加わっている。前腕伸筋群は上腕骨外側上顆を起始としているので、テニス肘では同筋の緊張のほかに、筋起始部に筋付着部炎をおこし、曲池穴に強い圧痛をみる。

これと対照的に、ゴルフ肘では、前腕伸筋群に負荷がかかるので、同筋の緊張をみるほか、その付着部である上腕骨内側上顆部(=小海穴)に強い圧痛をみる。なお、ゴルフ肘ではクラブを支える側(右効きの者の場合は、左肘)がゴルフ肘になりやすいことに注意。

 

 

 ※筋収縮の3種類

等尺性筋収縮(アイソトニック収縮):筋は短縮はするが、短くはならない。例)太極拳での姿勢

等張性筋収縮には次の2種がある。
 短縮性筋収縮(コンセントリック収縮):筋が短くなる場合。例)腕相撲で勝ちつつある状態
 伸張性筋収縮(エキセントリック収縮):筋が長くなる状態。例)腕相撲で負けつつある状態

筋へのダメージが強い順番は、エキセントリック収縮>コンセントリック収縮>アイソトニック収縮であり、エキセントリック筋収縮が最も強い力を引き出せる反面、ダメージが強い。エキセントリック筋収縮は、可能な限り重いバーベルを持ち上げる運動でもあって、筋損傷しやすい一方、筋肉を増やすのに適している。ボディービルで用いられる。等尺性筋収縮運動は、持久力向上に適している。
      

 2.テニス肘の理学テスト
 
椅子テスト、トムセンテスト(=テニス肘テスト)、中指テストなどがあるが、
針灸臨床で最も有用なのは中指テストであろう。手掌を下にして肘以下をベッド面につけた肢位にさせ、検者は中指の先を押圧しながら、患者に中指を過伸展させるよう命じる。この時、肘部に痛みを誘発できれば陽性とするものである。


3.テニス肘の針灸治療

1)筋走行上の圧痛点に対する運動鍼
 
中指テストでは、少し長めに中指の過伸展をさせたままにさせておき、前腕橈側の伸筋群すなわち大腸経から三焦経ルートを探ると、緊張したスジを触知できる。このスジ(短橈側手根伸筋であることが多い)の緊張(=短縮)改善目的に、刺針して運動鍼を行うのがよい。その運動とは、手首の背屈である。

2)筋付着部への針灸治療
 
上述の治療で、筋の短縮が改善されれば、筋付着部の牽引力も低下するはずなのだが、曲池に強い圧痛があって付着部炎を起こしているのであれば、筋付着部への施術も併用する必要となる。付着部への施術も運動鍼でよい。
その他に手関節の背屈を制限するようなテーピングを併用した方がよい。

3)回外筋運動針

テニスの際、前腕伸筋群に強い収縮力が作用するが、前腕の回外筋にも負荷がかかっている。治療は、前腕回内肢位で回外筋に刺針し、置針した状態のまま、前腕回外運動を行わせるのが有効である。先に示した短橈側手根伸筋刺針を深く行えば、回外筋に達するので、手関節の背屈運動針と、肘の回内-回外運動の両方を行わせると治療効果が高まる。回外筋刺針を目標にして、手三里(長橈側手根伸筋と短橈側手根屈筋の筋溝)から深刺してもよい。







4)難治例の治療

 陳久性のテニス肘は、前腕の回内制限が軽度あることも多い。この場合は、回外筋と短頭側手根伸筋の筋膜間の癒着を剥がす必要があるが、針では癒着部を中心にコツコツと針先を当て、これを繰り返す(来院する度に行う)。なお回外筋は肘関節包を前面~外側側面~後面まで付着している。

筆者は最近、橈骨頭部が痛むという症例を経験した。 これは皮膚・結合組織はあっても筋腱が存在しない部である。最初は橈骨頭周囲に存在する筋腱付着部に対して刺針施灸を実施したが、効果がなかったので、橈骨頭上の圧痛ある骨膜を直接刺激してみたところ、症状軽減をみたので驚いた。小山曲泉の掃骨針法のつもり。

 



 


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