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開会迫る! 講演:私の現代針灸システム-2 頸部痛・肩関節痛 (実技供覧)のお知らせ Ver.1.1

平成30年4月に行った<背腰殿下肢と膝痛>の現代針灸の第二弾の実技供覧講習会です。

鍼灸学会Tokyo主催
講演:私の現代針灸システム-2  頸部痛・肩関節痛 (実技供覧)

日時:平成31年4月21日午後1時30分~4時30分頃
場所:JR山の手線「代々木駅」北口下車徒歩1分
 東京医療専門学校(呉竹学園)、代々木校舎       
  〒151-0053 東京都渋谷区代々木1−55 TEL.03-3320-1815


https://ssl.jsam.jp/contents.php/040212oPR5Es/

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講師:似田敦
お申し込み方法:当日会場で受け付け
参加費:一般3000円、会員1000円、学生(学生証提示)500円

演者ごあいさつ
私が現代針灸を続けて40年が経った。この間、現代鍼灸も周辺医学の進歩とくにファッシア理論を取り入れることで、実際に役立つ効果的な治療手段として変貌を遂げた。
 私は昨年(平成30年)4月に針灸学会Tokyo(会長:山田勝弘先生)にて<背腰痛、殿下肢痛・膝関節痛>の現代針灸治療理論と実技供覧を行い、幸いに好評だったことから、第2弾として<頸痛・肩関節痛>の現代針灸の理論と実技供覧をする運びとなった。諸先生方の針灸臨床に、参考となることがあれば嬉しく思います。

内容(一部未確定)

A.頸痛の治療技術(テキスト11ページ)

1.後頭下筋過緊張に対する上天柱深刺と運動針技法
2.後頭下筋過緊張による頸性めまいと眼精疲労の治療理論
3.頭板状筋緊張に対する坐位運動針技法
4.頭半棘筋緊張に対する頸椎一行刺針とくに治喘治療の意味
5.頸部の長・短回旋筋症状と頸部一行刺針
6.脊髄神経後枝興奮症状と背部一行刺針部位の選択
7.斜角筋症候群、頸神経叢症状に対する天鼎の合理的な取穴と刺針
8.小胸筋症候群に対する上中府刺針
9.バレリュー症候群に対する肩中兪深刺


B.肩関節痛の治療技術(テキスト12ページ)

1.棘上筋腱炎に対する肩井から棘上筋腱に達する斜刺
2.棘上筋腱炎に対する肩髃から棘上筋腱への水平刺と刺針体位
3.肩甲胸郭関節可動筋に対する大円筋(肩貞)刺針と肩甲下筋(膏肓)刺針
4.棘下筋TPs放散痛に対する天宗刺針と刺針体位
5.凍結肩に対する伝統的整復手技
6.凍結肩に対するリズミックスタビリゼーション手技


むずむず脚症候群の針灸治療Ver.1.3

むずむず脚症候群の正式名称は、下肢静止不能症候群、RLS, Restless Legs Syndromeという。最近になって認知されてきた疾患である。ある日、橈骨麻痺で来院中の患者が「むずむず脚症候群もある」と訴えた。これまで抱いていた私の印象から、「それは大変だ」と応じたが、その患者は薬を飲めば治るが、あまり薬は飲みたくないと云った。私は患者がむずむず脚症候群であること以上に、治す薬があることに驚いた。早速ネット検索してみて、かつての常識がすでに古くなっているこをを思い知らされ、新たな見解も生まれたので、本稿としてまとめる。

1.症状

脚の不快感と動かしたい欲求。脚の表面ではなく深部に不快な感じがあり、動かすと少し軽減する。その不快感は様々に表現される。むずむずする、虫が這う、痛がゆい、など。
症状は夕方から夜間にかけて強くなることが多い。自然治癒はごくまれで、進行性増悪することが多い。人によっては背中や腕にも現れることがある。
 

2.原因

神経伝達物質であるドーパミンの機能異常。
    
神経伝達物質ドーパミンの機能低下
         ↓
A11と呼ばれる脳の神経細胞の機能低下。
                 ↓
脳に送る必要のない身体深部知覚の些細な信号をカットできず、脳が過敏状態
         ↓
     「むずむず脚症候群」
   
身体の中では、脳が認識する運動刺激や身体感覚の他に、一定の閾値に達しない「雑音」のような深部知覚が無数に発生している。これらの深部知覚は、間脳部に相当するA11領域から脊髄に伸びる下行性の神経細胞によって抑制されているので脳にまでは達しない。

しかし何らかの原因によってA11の神経細胞の働きが弱まり、特に夜間、運動刺激や身体感覚の刺激がなくなると、「雑音」のような深部知覚が上行しやすくなり、脳が感覚情報過多の状態になり“むずむず”するような不快感を覚えるようになる。

なおA11の働きが弱まる原因として、ドーパミン神経細胞の機能障害や、脳内の貯蔵鉄(フェリチン)減少や鉄代謝異常が関係しているとされている。
   
夜になると脳の松果体からメラトニンが分泌され、身体が眠りにつきやすいように深部体温が下がる。とともに“むずむず”するような異常感覚も現れてくる。明け方になってメラトニンの分泌が減って、深部体温が上昇し始めると異常感覚は消失する。
 

3.現代医療での治療

 「ビ・ シフロール錠」が、日本で初めてむずむず脚症候群の薬として2010年1月に保険適用された。本剤はドパミンアゴニスト(=作動)薬で、ドパミンの代わりとなってドパミン受容体を刺激するもの。要するにドーパミン量を増やし、弱まったA11神経細胞に直接刺激を与え 脚の不快感のもとをブロックする機能を回復させるもの。
  
※本剤は、パーキンソン病での治療薬だが、むずむず脚症候群で使われる場合はパーキンソン病治療に比べて、6分の1~18分の1という少ない量で効果がある。ただし長期間連用すると効かなくなっていくる。
 

4.針灸治療

1)考え方

A11神経細胞の機能低下により、脳に届ける必要のない深部知覚信号カットできなくなっている。であるなら脳へより大きい深部知覚信号(=響かせる針)を送ることで、先の「雑音」のような深部知覚信号をマスキングできるのではないだろうか。
  

2)発作時、足三里に対する深刺で響かせる(小宮猛史先生)

体験例:うちの家内は、寝室で寝ていたかと思うと脚をどんどん叩きながら起きてきて「なんとかしてー」と訴える。虫が這うようなむずむず感を感じ、じっとしていられないと言う。発症はたいてい右側。

そこで発症するたびに足三里に、そっとゆっくり止まるまで刺入し、ゆっくり雀啄することで得るズーンという響きを与える。すると直後に8割くらい楽になり、次に足三里の少し下にもう一箇所響かすように鍼をするとすっかり消失し、そのあとぐっすり眠れるようになる。時間にして2~3分。なお切皮程度の深さで高速撚鍼して響きを与えても症状の軽快はみられない。

先日の発作時、家内に協力してもらい、いつもの鍼するところをお灸にしてみた(半米粒大の大きさで7壮ずつ)。しかし、じっとしていられるような効果までは出なかった。結局そのあと鍼して鎮静。(小宮猛史:ブログJTDの小窓 ムズムズ脚足症候群 2014.3.12より)

小宮猛史先生ブログ

http://blog.goo.ne.jp/takeincho/e/75b1700aff424fe277a7309dc1deb0c6

 

3)下肢脛骨骨膜刺針が効果的か?

ズーンと響くように刺針することが有効だという報告があったので、筆者は中国針で足三里や三陰交から神経幹ねらいで刺針してみたが、思うような効果が得られなかった。そこで脛骨骨膜刺として足三里や三陰交から脛骨骨膜に擦りつけるように刺入し、後脛骨筋に至るような深刺をしてみた。すなわち、シンスプリントの針治療の流用を行った。すると、これまで単に強い響きを与える目的で行った刺針よりも、ムズムズが減った。針灸治療的に、シンスプリントとムズムズ脚症候群は同じ範疇として捉えることができるのだろうか。 

シンスプリントの骨膜刺激針治療(似田)
https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/58c9421d320b880ecd41da4e15861ead

 

足底の異常知覚に、然谷・公孫の刺針が有効だった症例と考察(64歳男性)

1.主訴

足の裏が格子の上に乗っているような感覚がある 現病歴 半年前から脚のふらつき、大腿のしびれ、足底が格子の上に乗っているような感覚出現。4ヶ月前MRI検査で、第11~12胸椎部黄色靭帯骨化症と診断され、手術を受け、入院20日後に退院した。しかし上記症状は少し軽くなっただけで不満が残った。医者に質問するも、よく分からないとの回答だった。退院後3ヶ月して当院受診。


2.鍼灸治療(その1)

下背部第11~12胸椎に棘突起に沿って3㎝ほどオペ痕あり。このレベルの脊髄の障害で患者の訴える症状が出るとは考えるには無理があると思ったので、足底圧痛を調べると、足底筋膜に強い圧痛を認めたので黄色靭帯骨下化症とは無関係に足底筋膜炎と考えた。なお脚のふらつき、大腿のしびれは主訴ではないので、当面は無視することにした。

足裏の圧痛点は第一指MP関節裏の足底筋膜停止部と土踏まずの中心部にあったので、母趾背屈して足底筋膜をストレッチさせた肢位で寸3#1で単刺。足底筋膜と下腿後側筋が発生学的に類似性あることから、腓腹筋の圧痛点であった承山に刺針+円皮針を実施した。なお下腿後側膀胱経部は、ヒラメ筋のトリガーポイントが活性しやすい部であり、ときに踵部に痛み放散することがしられている。 すると治療直後から足底症状の大幅な軽減をみて、「針灸がこれほど効くとは思わなかった」と患者も話してくれた。

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3.鍼灸治療(その2)

本患者は痛みに過敏であることから、できれば足底の刺針を避けたかったので、仰臥位で公孫・然谷から寸6#1で2㎝刺針して5分間置いた。また下腿は膀胱経だけでなく脾経の圧痛も調べてみようと思い、脛骨内縁を触診するとヒラメ筋等沿って強い圧痛を発見したので、地機・三陰校を中心とした脛骨内縁にも寸6#2で3本程度置針してみた。すると前述の治療よりもさらに改善した。患者は「下腿の内側に針を多く打つようになってから、さらに症状が軽くなった」と評価した。    

公孫・然谷刺針は長母趾屈筋腱・長趾屈筋腱であり、それぞれの足母趾と足第2~第5趾の屈曲作用である。またその元になる長母趾屈筋・長趾屈筋は下腿内側の脛骨骨際にある。この部への刺針が効果あることは足底筋膜炎の症状といっても、その正体は長母趾屈筋・長趾屈筋の過収縮が、長母趾屈筋腱・長趾屈筋腱の伸張を強いられた結果として、足底筋膜炎様の症状を生むのではないかと推察した。  


この考え方は、バネ指に対する長・短指屈筋刺針の類似理論となる。
https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/e5b5616ff27ed725e4841034d9eee012

 

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4.針灸治療(その3)

足裏が格子の上に乗っているとの感覚が軽減したためか、「脚がふらつく」症状は治療できないかと質問された。一応頸性めまいの一種かもしれないと思い、胸鎖乳突筋圧痛もなく、足底の知覚異常もなかった。運動失調かと考え直して、開眼ロンベルグ試験をすると、数秒間も姿勢保持できないことを発見。まず坐位で上天柱深刺するもロンベルグ試験に改善はみられなかった。次に立位で左右の中殿筋(大転子と腸骨稜の中点)に深刺単刺し、また開眼ロンベルグ試験を行うと、片脚で直立できる秒数が3倍以上になった。治療効果の明確な違いをみせつけられた。

講習会:私の現代針灸システム-2 頸部痛・肩関節痛 (実技供覧)、無事終了しました。

平成30年4月に行った<背腰殿下肢と膝痛>の現代針灸の第二弾の実技供覧講習会です。

鍼灸学会Tokyo主催
講演:私の現代針灸システム-2  頸部痛・肩関節痛 (実技供覧)

日時:平成31年4月21日午後1時30分~4時30分頃
場所:JR山の手線「代々木駅」北口下車徒歩1分
 東京医療専門学校(呉竹学園)、代々木校舎       
  〒151-0053 東京都渋谷区代々木1−55 TEL.03-3320-1815

https://ssl.jsam.jp/contents.php/040212oPR5Es/


 

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講師:似田敦
お申し込み方法:当日会場で受け付け
参加費:一般3000円、会員1000円、学生(学生証提示)500円

演者ごあいさつ
私が現代針灸を続けて40年が経った。この間、現代鍼灸も周辺医学の進歩とくにファッシア理論を取り入れることで、実際に役立つ効果的な治療手段として変貌を遂げた。
 私は昨年(平成30年)4月に針灸学会Tokyo(会長:山田勝弘先生)にて<背腰痛、殿下肢痛・膝関節痛>の現代針灸治療理論と実技供覧を行い、幸いに好評だったことから、第2弾として<頸痛・肩関節痛>の現代針灸の理論と実技供覧をする運びとなった。諸先生方の針灸臨床に、参考となることがあれば嬉しく思います。

内容(一部未確定)

A.頸痛の治療技術(テキスト11ページ)

1.後頭下筋過緊張に対する上天柱深刺と運動針技法
2.後頭下筋過緊張による頸性めまいと眼精疲労の治療理論
3.頭板状筋緊張に対する坐位運動針技法
4.頭半棘筋緊張に対する頸椎一行刺針とくに治喘治療の意味
5.頸部の長・短回旋筋症状と頸部一行刺針
6.脊髄神経後枝興奮症状と背部一行刺針部位の選択
7.斜角筋症候群、頸神経叢症状に対する天鼎の合理的な取穴と刺針
8.小胸筋症候群に対する上中府刺針
9.バレリュー症候群に対する肩中兪深刺


B.肩関節痛の治療技術(テキスト12ページ)

1.棘上筋腱炎に対する肩井から棘上筋腱に達する斜刺
2.棘上筋腱炎に対する肩髃から棘上筋腱への水平刺と刺針体位
3.肩甲胸郭関節可動筋に対する大円筋(肩貞)刺針と肩甲下筋(膏肓)刺針
4.棘下筋TPs放散痛に対する天宗刺針と刺針体位
5.凍結肩に対する伝統的整復手技
6.凍結肩に対するリズミックスタビリゼーション手技

 

講習会を終えて‥‥

今回の講習会参加は、目算で80名程度で、前回の東大での講習会よりも少なかった。しかしさすが針灸専門学校内で開催されるだけあって、ベッド・骨模型・ピンマイクなど備品が完備され、スムーズな進行ができた。時間配分も予定通りで、よい出来ではなかったのかと自負している。参加者から、あまり質問が出なかったことは残念であった。

便秘に対する針灸治療 傍内臓刺について


筆者は当ブログに<慢性の下痢・便秘の針灸治療>を2006.4.5.発表したが、内容に不満があり、2014.1.9に<弛緩性便秘と直腸性便秘に対する針灸治療 Ver.1.2>として書き直した。しかしそれでも不満があったので、今回再整理を試みることにした。

1.内臓刺針について郡山七二氏は、胸腹部から内臓に到達する深刺する方法を考案し、これを内臓刺と名づけた。今日では内臓刺は医療過誤を生ずる恐れがあるので、禁忌となっているのは当然である。

ただし大腸の脊髄断区を刺激しての内臓体壁反射(交感神経反射)を利用したり、仙部副交感神経を利用するため八髎穴を刺激したり、陰部神経刺激の鍼をしてみても、治療効果に確実性があまりないことを考え併せると、とくにS状結腸以下(副交感神経優位)の大腸に対する内臓刺は成書に多数載っていおり、許容されているかのようである。 

 
 

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 2.左府舎刺(森秀太郎「はり入門』医道の日本社)

便秘症の人の腹部を按圧すると、左腸骨窩部に糞塊を触知する。その塊(府舎穴になる。府舎穴の位置は鼠径溝の中央から、一横指上方に位置する)を目標に、寸6の6番の針で、やや内方に向けて10~30㎜ほど刺入すると、下腹部から肛門に響きを得る。

私の意見: 左府舎からの直刺は下行結腸またはその外方にある腸骨筋に入る。腸骨筋が股関節に癒着して鼠径部痛を起こす。鼠径部外端から内方1/3の部から刺針することは、この部に糞塊を触知できる弛緩性便秘の治療に使えると主張する者がいる。 

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上図は虫垂炎時、盲腸と虫垂が腸骨筋に癒着している様子を示している。この病態は無論右側のみであるが、左側のS状結腸と腸骨筋は接触して存在しているので、互いに影響を受け合うことは予想できる。


3.内閉鎖筋刺  

骨盤の閉鎖孔を内側から塞いでいるのが内閉鎖筋である。内閉鎖筋が緊張すれば、陰部神経や 陰部動脈を圧迫して泌尿器科症状を生ずることがある。また左内閉鎖筋緊張すれば、S状結腸を 圧迫することで便秘になることも指摘されている。 左内閉鎖筋への刺針とは、左の陰部神経刺針に他ならない。 陰部神経刺針は、陰部神経への刺激かつ内閉鎖筋への刺激になる。

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上図は虫垂炎時、盲腸と虫垂が内閉鎖筋に癒着している様子を示している。この病態は無論右側のみであるが、左側のS状結腸と内閉鎖筋は接触して存在しているので、互いに影響を受け合うことは予想できる。

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4.四満移動穴(柳谷素霊「秘法一本鍼伝書」医道の日本社)  

臍下2寸に石門をとり、その左外方1寸の部に四満穴をとる(標準の四満穴は石門の外方5分)。
1)実証者の便秘
2~3寸#3で直刺、2寸以上刺入して、上下に針を動かす。この時、患者の拳を握らせ、両足に力を入れしめ、息を吸って止め、下腹に力を入れさせる。肛門に響けば直ちに息を吐かせ、抜針する。
2)虚証者の便秘
寸6、#2で直刺深刺。針を弾振させて、肛門に響かせる。
この時患者は口を開かせ、両手を開き、全身の力を抜き、平静ならしめる。いずれも肛門に響かないと効果もないと考えてよい。

私の見解:
左天枢や左四満移動穴からの深刺は、小腸内臓刺になる。
柳谷氏は四満刺針で肛門に響かせるというが、実際に深刺すると深部にひきつれ様の響きを感じることが多い。何とかして肛門に響かせようと深刺すると陰部神経を刺激できる。陰部神経はS2~S4から出る体性神経で肛門や陰茎部の運動・知覚を支配するが、腹部からみて陰茎は肛門の手前にあるせいか、陰茎に響くことが多く、肛門に響かせることは難しい。

 

 

 

 


   

 

バネ指の針灸治療 Ver.3.1

本原稿は約3年前に発表した「バネ指の針灸治療」を全面的に改定したものである。

1.手の指の腱・腱鞘・靭帯の構造 

指に向かう深指屈筋腱と浅指屈筋腱は、運動量が大きく力も強大なので、他の組織との摩擦を 防ぎ、滑りをよくするため、遠位中手骨から指先までを腱鞘で覆われている。 さらに指の掌側には、腱の浮き上がり防止のため、滑車装置である輪状靱帯(靱帯性腱鞘)が   腱鞘を補強している。輪状靱帯は、示指~小指それぞれに5カ所(母指は2カ所)ある。

バネ指の原因として最も多いのがA1輪状靱帯による  もので、次いでA2輪状靱帯に多い。A3~A5輪状靱帯とC十字靱帯はバネ指を起こさない。



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 3.バネ指の概要

1)病態生理  

指の屈曲動作は前腕部の指屈筋が収縮し、その筋から指の末節骨・中節骨に停止した腱が体幹側に引っ張られることで行われる。この腱と靱帯への機械的刺激が過度になっても、通常は一晩休めば炎症は鎮まる。しかし自然修復できる限度を超えた刺激が繰り返されれば、徐々に輪状靱帯は肥厚し、腱を締めつけるまでになる(これが狭窄性腱鞘炎状態)。    輪状靱帯に腱が繰り返し衝突することで腱の一部にシワが寄り、シワは次第に大きくなって結節に発展する。


2)分類・症状・所見  

<第1期>    
MP関節の手掌側に痛みや圧痛があり、指の運動時痛がある。バネ現象はなく関節の動きも正常。日常生活にほとんど支障がない。このまま自然治癒することもある。治療は安静。  


<第2期>     
腱鞘内への注射(局所にステロイド+局所麻酔剤)をした直後は効果を実感しないが、数週間でじんわりと効いてくる。この効果は9割の者が実感できるが、やがては元にもどることも多い。腱への注射は腱を傷つけることでになるので、2ヶ月に1回計2~3回注射して、それでも元にもどる場合は手術に踏み切る。   

①バネ現象陽性
指が一定の角度に達すると、自動運動が障害され、これを自動的・他動的に強制屈曲させる時には、弾撥性に屈曲する。かろうじて指は屈伸できるが、曲げた指がスムースに伸びない現象。重度バネ指でなければ、無理に伸展させると、轢音を発し、完全伸展可能。   

②モーニングアタック出現
夜間就寝中に、無意識に指を屈曲するせいか起床後に指を再伸展させる際に強く痛む。   

③MP関節掌側部の圧痛・運動痛。腫瘤を触知  

 

<第3期>       
関節拘縮状態。 バネ現象は消失するが、指の完全屈伸はできなくなる。日常生活で非常に支障をきたす。A1輪状靱帯の開放手術以外に方法がない。        重症の場合、A1切開とともにA2手掌側の下半分を切開することもある。A1とA2両方を完全切開することは、指屈曲時に腱が浮き上がってくるので実施できない。

 

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2.代田文誌先生の運動療法
 
代田先生は、得意とする針灸が非常に多い方だったが、バネ指を苦手とし、独自に考えた運動療法を行っていた。成書よりその方法を転記する。「障害指の屈筋を中心に、患者の手首を術者の片手で固く握りしめ、その状態で患者に全力で指を十回~数十回屈伸するよう命じる。すると今まで自力では屈伸できなかった指が、突然自力で屈伸できるようになる」

記方法を筆者は追試してみた。確かに効果はあるが満足する程度ではないこと。またやはり針での治療法を知りたいと思っていた。
 
以下は筆者の考えた方法である。代田文誌先生の運動療法よりも効果的であるようだ。 


3.バネ指の針治療
 
バネ指にも軽症と重症がある。対する鍼灸の治療効果は、当然のことであるが、軽症の方に適応がある。具体的には他指で補助することなく、屈曲した指の再伸展できる者に効果的である。

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1)母指バネ指の針灸
    
母指バネ指の症状は、母指IP関節の屈曲時にポキッとして自動的に折れ曲がる現象と、屈曲状態にあるIP関節を伸展した際のポキッとした自動伸展現象(重症の場合、自力では再伸展不能)となることである。
    
母指バネ指では、長母指屈筋腱上に結節ができる。長母指屈筋の走行は、は前腕骨間膜を起始とし、母指末節骨に停止している。仮にこの筋の筋トーヌスも筋長も生理的範囲内であれば、腱に加わる伸張力は弱くなり、再伸展の際に結節が存在したとしても、輪状靱帯にぶつからなくてすむのではないだろうかと考えてみることにした。
     
具体的には、前腕屈筋側中央に郄門をとり、同じ高さの肺経上に治療点を定める。そこから長母指屈筋に向けて斜し、母指屈筋の運動針を指示する。長母指屈筋中に刺入できていれば、母指の動きと同期して針柄が上下に動くことを観察できる。

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2)第2~第5指バネ指の針灸
    
親指以外の4本指でDIP関節屈曲は深指屈筋、PIP関節屈曲は浅指屈筋、MP関節屈曲は虫様筋というように役割分担されていて、比較的大きな物を握る時は深指屈筋が働き、握力計や比較的握りやすい物を握る時は浅指屈筋が働き、握りしめたり細い物を握る時は虫様筋が主に働く。ただし実際には独立して働く事はほとんど無く互いに協調して握力を生み出す。

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バネ指は、浅・深指屈筋腱にできた結節が、腱共通の輪状靱帯を通過できなくなった状態である。もし浅・深指屈筋が弛緩・伸張した状態では結節が腱鞘に入らなくても指伸展が可能となると考え、前腕屈筋側中央に心包経の郄門をとり、その高さの心経ルート上を刺入点とし、浅指屈筋または深刺屈筋中に至る斜刺を行ない、置針した状態で、母指を除く4指の屈伸運動を行わせる。深指屈筋中に刺入できていれば、母指の動きと同期して針柄が上下に動くことを観察できる。(臨床上、浅指屈筋中に刺入  しても治療効果はあがる)
 

3)注射針、そして小針刀による輪状靱帯切開術法
   
かつて注射針を使ってばね指手術(局所麻酔注射後、腫瘤部に注射針をか刺して、鍼先を小刻みに動かすことで小分けして輪状靱帯を切断する)も行われていたという。この技法は、屈筋腱損傷などの合併症が報告されていて、現在では医療施設ではあまり行われない。ただし中国では小鍼刀(鍼先がマイナスドライバーのようになっている鍼)が考案され、輪状靱帯を突っついて押し切るばね指治療も行われている。エコー装置を使えば針先と腱鞘の位置関係が確認できる。

要するに無麻酔で輪状靱帯切開を行うことになるが、エコーだけで必要十分な切開ができるかは疑問である。また無麻酔で施術するので、患者は苦痛だろう。本法がわが国の鍼灸術の範疇に入るか否かは難しいところである。

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バックハンドテニス肘の病態と筋と筋付着部への運動針 Ver.3.2

1.バックハンドテニス肘の症状

テニスでバックハンドで球を打つたびに痛みが出る。雑巾絞り動作(前腕回外筋負荷)でも起こりやすい。  

2.所見   

外側上顆の腱起始部圧痛(++)、伸筋筋腹(おもに短橈側手根伸筋)の圧痛   
中指伸展テスト(+):手掌を下にして肘以下をベッド面につける。検者は被験者の中指の先を押圧しながら患者に中指を伸展するよう指示する。この時、肘部に痛みが出れば陽性。  

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3.病態  

テニスで相手からの返球をバックハンドでレシーブする時、ボールを受け止めるため手関節は 屈曲を強いられるが、ボール衝撃力を緩和するため短橈側手根屈筋は緊張している。すなわち筋 緊張しているのに筋長は長くなる。これを伸張性筋収縮(=エキセントリック筋収縮)とよび、筋の微細損傷を生じやすく、そのことがトリガーポイント活性化の要因にもなる。    またバックハンドでのボールを受ける姿勢(雑巾絞りの姿勢と同じ)は、前腕の強い回内を伴うので、回外筋は伸張を強いられるので、回外筋上も圧痛が出現しやすい。

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4.テニス肘の針灸治療  

1)前腕伸筋群の短縮が、外側上顆に加わる腱付着部の牽引力増強を引き起こしている。 →手掌をベッドにつけ、中指伸展テスト(上述)を実施。この状態で、短橈手根筋上の圧痛点(手三里の5㎜~1㎝尺側)を探索して刺針する。手関節の背屈運動針を行う。  

2)短橈側手根屈筋の深層に回外筋があるので、治療点としては短橈手根筋への刺針点と同じになるが、刺針深度は比較的深くなる。手の回内状態で刺針したまま回外運動を数回行わせる。 

5.テニス肘の針灸治療効果   

針灸治療は、腱炎であれば効果的であり、数回の治療で症状消失する。 重症例では微細断裂や骨膜炎のこともある。効きが悪いものは週3回の治療を1か月しても、症状半減にまでは至らない。治療に反応しにくいものは、ギブス固定が必要。

 

6.筋収縮の3種類(参考)

エキセントリック筋収縮が最も強い力を引き出せるが、ダメージが強い。エキセントリック筋収縮は、可能な限り重いバーベルを持ち上げる運動でもあって、筋損傷しやすい一方、筋肉を増やすのに適している。ボディービルで用いられる。等尺性筋収縮運動は、持久力向上に適している。
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母指内転筋症には母指内転筋停止部の刺針 Ver2.1

元のブログタイトルは、「母指CM関節症には母指内転筋停止部の刺針」だったが、筆者は母指CM関節症と母指内転筋症を混同していたので、上記タイトルに変更するとともに、本文の一部を修正した。

 

1.治せない合谷深部の痛み

合谷深部ないし魚際深部が痛むと訴える患者が、これまで何例も来院していた。
私が鍼灸初心者だった頃、患者の訴える症状部である合谷、あるいは魚際に刺針したが、さっぱり改善せず苦労した。かなり後、それは母指CM関節症という疾患であることを知った。

 

2.母指CM関節(第1手根中手骨関節)への刺針

ある時、またも同様の患者が来院した。通常の刺針では治せないことを自覚していたので、今度は合谷をいろいろな角度で押圧してみた。すると母指MP関節方向に押圧で強い圧痛があり、また指頭に筋のシコリを触知することができた。母指MP関節自体の動きは正常。
寸6#2でそのシコリに命中するように、母指中手骨外縁をかすめるように、えぐるように刺針し、その状態で母指MP関節の円運動を数回指示し、抜針した。すると初めて著効例が得られた。

後日、別の患者で、母指CM関節症が来院。高齢者で杖を持った状態で母指を捻ったとのこと。そのMP関節は変形していた。しかしながら上記刺針を行うと、痛みは半減させることができた。

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3.母指内転筋停止部の筋付着部炎と推定

時を経て、同様の症状を訴える別患者が来院した。今度は、シコリが何によるものかを調べる余裕があった。合谷の浅い押圧では圧痛がなかったので明らかに表層筋ではない。となれば問題となる筋は、母指内転筋・短母指屈筋・母指対立筋のどれかだろう。

針をシコリに当てた状態のまま、母指対立筋のチェック(母指先を小指先に近づけ)をするも、針体は動かず動作に支障なし。次いで短母指屈筋のチェック(母指の掌側外転)で、これも問題なし。その次に母指内転筋のチェック(母指を中指方向に手掌につけたままスライド)し、大きく針体は動いた。

母指内転筋の停止は母指基節骨底内縁であり、母指内転筋付着部炎と判断した。結局、母指CM関節症といっても、痛み自体は筋付着部炎によることも多いことが予想され、針灸は有効と考えた。
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4.母指内転筋症の概要 

1)病態    

母指内転筋は、第2中手骨を起始とし、母指MP関  節部を停止とする筋で、母指を内転(示指側に近づける)作用がある。手の合谷部においては、手背側と手掌側の間に位置する深部筋である。利き手側の母指内転筋を酷使する理容師や美容師や庭師が障害を受けやすい。  

2)フローマン徴候陽性  

母指内転筋は、母指球中にありながらも正中神経支配でなく、尺骨神経支配である。フローマン徴候とは、紙を母指と示指でつまんで引っ張り合うもので、尺骨神経麻痺を調べる検査として知られている。


3)母指内転筋症の針灸治療

術者の母指指頭で母指基節骨の奥を探るようにして初めて圧痛を検出できる。 すなわち合谷を取穴するが、その押圧方向は示指方向ではなく、母指基節骨縁になる。
母指内転筋は、手背・手掌のちょうど中間の深さにある。合谷から第1中手骨の内縁に向けて 押圧すると、第1中手骨内縁に強い圧痛を認める。この圧痛方向に深刺すると、第1背側骨間筋 を貫き母指内転筋に達する。合谷刺針に加え、魚際から母指内転筋に刺入する針を行ってもよい。刺針した状態で負荷をかけた母指内転運動(母指のIP関節を曲げずに、母指頭を示指腹につける、すなわち「半月の押手(鍼灸師以外意味不明だろう)」のような型を繰り返す)の運動針を行うと鎮痛できることが多い。   

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5.母指内転筋とフローマン徴候

母指球を構成する筋は、短母指外轉筋・母指対立筋・短母指屈筋・母指内転筋の4つである。母指内転筋以外は橈骨の運動支配であり、母指内転筋のみが尺骨神経支配である。この解剖学的特性を利用したのがフローマン徴候である。

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魚際の位置:
手掌部。第1中手骨中点の橈側、赤白肉際に取穴。母指中手骨中央の内縁に取穴する。魚際の名称は、母指球を魚に例えた時、そのヘリに位置するところからきているという。魚際から直刺すると、短母指外転筋→母指対立筋→短母指屈筋→母指内転筋と、母指球構成4筋を刺針できる特異的な部位。母指球筋のオーバーユース時、魚際に圧痛硬結が出やすいことが理解できる。

 

 

 

 

 

 

 

 


「偽内臓症治療野ための体性神経刺激~肋間神経・脊髄神経後枝・陰部神経への鍼灸治療」 セミナーご案内

 神奈川県鍼灸師会 令和元年第一回 イブニングセミナー

「偽内臓症治療野ための体性神経刺激~肋間神経・脊髄神経後枝・陰部神経への鍼灸治療」 <実技供覧>

ごあいさつ
日頃の鍼灸臨床で、整形外科やペインクリニック分野の治療は得意とするが、いわゆる内臓系疾患は苦手としているのが普通である。すなわち自律神経是正を目標とする鍼灸治療の方法は確実性に乏しい。今回は、一見すると内臓症状であっても実際は体性神経症状であるものを取り上げ、その具体的方法を実技供覧しつつ説明したい。  

①耳針と迷走神経刺激 
②肋間神経刺激と横隔膜知覚  
③腹痛と肋間神経痛  
④柳谷素霊の五臓六腑の針の解剖学的根拠 
⑤代田文誌の脾兪と小野寺殿部圧痛点の相関  
⑥陰部神経刺激と泌尿器疾患
⑦北小路博司氏の骨盤神経刺激法  
⑧常習性便秘に対する左府舎刺針の解剖特性


日時 平成元年7月10日(水) 19時~20時30分 

会場 万国橋会議センター402号室(下地図)   
みなとみらい線「馬車道」駅6番出口より徒歩4分    
市営地下鉄「桜木町」駅より徒歩10分


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申込方法 事前予約不要。当日受付(18時30分より)  

受講料 会員無料 学生会員無料(会員証提示) 、学生1500円(学生証提示) 、一般3000円

連絡先 神奈川県鍼灸師会事務局

 http://kanagawa.harikyu.or.jp/seminar/

 

大腿外側痛の病態把握と針灸治療

たまに大腿外側痛で来院する患者がいる。整形外科に行って治らなかったので針灸に来たという患者も少なくない。新米針灸師の中には、これをすべて大腿外側皮神経痛と診断する者もいる。確かに大腿外側皮神経痛のこともあるが、その頻度は少ない。多いのは小殿筋の放散痛、もしくはL5付近の後枝症候群である。それぞれ治療ポイントも異なってくる。
以下に3つの病態を示す。その鑑別は圧痛点の所在と、刺針後の治療効果(治療的診断)によるのが最も分かりやすい。

1.小殿筋放散痛の針灸治療
小殿筋の過緊張により、大腿外側痛を生ずることがある。中殿筋過緊張をもたらすのは、坐骨神経痛や股関節症であることが多い。側臥位にして小殿筋中の圧痛硬結点を見いだし、そこに2寸#4程度の置針をすれば症状緩和に効果ある。
なお小殿筋は中殿筋の下にあるが、中殿筋の放散痛であれば殿部の痛みとなり、下肢症状はあまり出現しない。

中・小殿筋は強大な筋であるから、側臥位で刺針しただけではなかなか症状は改善しづらい。横座り位にさせ、中・小殿筋を収縮状態にさせた体位にして、3寸#8の鍼で筋硬結に向けて深刺単すると、強い響きが得られて直後から改善することが多い。

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2.L5付近後枝症候群

L5付近の椎間関節症やL5棘突起傍筋(棘筋や多裂筋)の筋筋膜症では、L5神経後枝が興奮する。側臥位にしてL5棘突起直側付近の圧痛点を見いだし、そこに2寸#4程度の置針をすれば改善できることが多い。

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3.大腿外側皮神経痛
大腿外側皮神経は腰神経叢で、とくにL2L3神経から出て、鼠径靱帯外端の下を潜り、大腿外側皮膚に分布する知覚性の神経で、筋支配はない。
鼠径靱帯で神経絞扼障害を起こすことがある。上前腸骨棘内縁で、鼠径溝外端の圧痛点(維道穴あたり)に刺針すると改善できることが多い。

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足底筋膜炎の針灸治療 Ver 2.0

1.病態
   
足底の筋は、表在性の足底筋膜に覆われている。足底筋膜は踵骨隆起から起こり、足の指に至って、足底の縦のアーチ維持に貢献している。過度の足底筋膜に加わる張力の反復により、足底筋膜に付着部の牽引ストレスが作用する。また足底筋膜の微小断裂を起こす。
   
この微小断裂は、夜間就寝中に治癒機転が働いて固くなる。しかし朝、固まった損傷部に体重が加わると、再び引き伸ばされて激痛となる。長距離の選手に多い。

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2.症状

痛みの直接原因は脛骨神経末端興奮による。

1)脛骨神経内側踵骨枝刺激
歩行開始時や走行中に、踵に近い部分が、ビリビリと痛む。踵骨前方の圧痛。

2)内側足底神経刺激:母趾背屈時の足底痛。
 
3.所見:X線で、足底部の踵骨内前方に骨棘。

4.整形治療:整形での治療は安静。ときに筋膜付着部への局麻注射を行う。スポーツ再開までには、数ヶ月の安静が必要。
(治癒まで半年以上かかる例が10%ある)
 

5.足底筋膜炎の鍼灸治療

1)下腿三頭筋と足底筋膜   

新生児では足底筋膜は踵骨を経由して下腿三頭筋とつながっているが、生後1年して歩行する頃になると両者は踵骨を境に独立したものとなる。治療的には、足底筋膜と下腿後側筋と一体として考えるとよい。 下腿三頭筋とくにヒラメ筋が短縮緊張すると、足底筋膜がひっぱられる力が増し、外的衝撃により足底筋膜が傷つきやすくなる。ゆえに下腿三頭筋とくにヒラメ筋のトリガーポイント(承山・承筋などの圧痛点)を見つけて刺針する。

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2)長母趾屈筋・長趾屈筋の緊張と足底痛

公孫・然谷刺針は長母趾屈筋腱・長趾屈筋腱であり、それぞれの足母趾と足第2~第5趾の屈曲作用である。またその元になる長母趾屈筋・長趾屈筋は下腿内側の脛骨骨際にある。 長母趾屈筋・長趾屈筋が過収縮した結果、これらの筋につながる腱が引っぱられ足底筋膜を緊張させているのではないか。

公孫位置: 足の第1中足指節関節の後、内側陥凹部に太白をとり、その後1寸。     
然谷位置:足内果の前下方、舟状骨と第1楔状骨の関節面の下際。

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長母趾屈筋・長趾屈筋に緊張緩和目的で深刺する。この刺針のアドバンス治療は、伏臥位で下腿下方にマクラを入れて足をベッドから浮かせた状態にして外丘から長母趾屈筋に、地機から長趾屈筋に置針。その状態で足指の屈伸運動を行わせると治療効果が増大する。  

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地機位置:下腿内側内果の上8寸。脛骨内縁骨際で、ヒラメ筋起始部。深部に長趾屈筋がある。   
外丘位置:下腿外側外果の上7寸。陽交の後方で長腓骨筋とヒラメ筋の間。深部に長母趾屈筋がある。

※注意:長母趾伸筋腱起始は足の内側に、長趾伸筋腱は足の外側にあるが、下腿後側では二筋はクロスし、長母趾伸筋は下腿の外側に、長趾伸筋は下腿の内側になる。  

 

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3)局所刺針  

刺痛をなるべく与えないよう細針を使い、足底の圧痛点に直接浅刺刺針。
跪座位(両足の指を立て、踵の上に腰を下ろした姿勢をさせ、足底筋膜のストレッチ運動を行わせる。徐々に体重をかけていく。1~2分筋運動実施させた後に抜針する。

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坐骨神経痛における下腿部治療点の検討 

1.坐骨神経痛における標準的な下肢治療穴

坐骨神経痛による下肢痛では、腰部の大腸兪や殿部の梨状筋部に圧痛点が出現することが多く、そのまま鍼灸の治療点となる。これは症状を腰殿下肢症状をもたらしている原発部なので当然である。 
それに加え、下肢症状部位の圧痛点にも施術することは、広く行われていることである。経絡派では、下腿前面は胃経、外側は胆経、後側は膀胱経、内側は脾経と腎経などと分類し、現代鍼灸派は、坐骨神経またはそ坐骨神経分枝の神経または神経支配筋を刺激することになる。一般的に使用する穴は次のようになるだろうが、なぜその経穴を選択するかとの問いに対し、圧痛硬結が好発する部だからという程度の回答で済ましているのが現状であろう。

1)大腿後側:殷門・承扶(坐骨神経)
2)下腿前側:足三里・上巨虚・条口・下巨虚(深腓骨神経)
3)下腿外側:陽陵泉(総腓骨神経)、懸鍾(浅腓骨神経)、丘墟(浅腓骨神経)
4)下腿後側:委中、承山、承筋(脛骨神経)
5)下腿内側:地機(脛骨神経)
※下腿後側症状と下腿内側症状は、ともに脛骨神経症状(神経痛または運動神経支配の筋緊張)を治療している。

 

2.神経狙いか、筋狙いか

問題となるのは、神経に刺針すべきか、支配筋に刺針すべきかという古くからある疑問である。知覚神経は上行性であり運動神経は下行性なので、腰殿部における神経圧迫は、下肢知覚神経症状を生ずることはないが、運動神経症状を生ずる。加茂整形外科医師は、臀部の坐骨神経ブロック点に刺針すると、下肢に電撃様針響が得られるのは、坐骨神経の知覚神経線維ではなく、運動神経線維刺激による下肢筋の痙縮であるという。これは現在注目をあつめているMPS(筋膜症候群)の考え方である。要するに下肢部の鍼灸施術は、神経狙いではなく、筋狙いでいくという方針が妥当だろう。となれば神経線維が筋へと枝を伸ばしている部、すなわち筋のモーターポイント部分が適切な治療点だといえる。
私の坐骨神経痛における下肢施術も、次第に神経を狙わず筋狙いになってきた。



3.腓腹筋への刺針 

下腿三頭筋は、腓腹筋内側頭、腓腹筋外側頭、ヒラメ筋がらなる。腓腹筋は、踵から膝をまたいで大腿骨までつながる2関節筋であり。足の底屈作用と膝関節屈曲作用がある。
腓腹筋刺針をするための多用する穴は、内合陽と外承山がある。

1)内合陽
代田文誌・倉島宗二・塩沢幸吉の3者が合議した上、新穴として定めた。委中穴の下方2横指に合陽穴を定め、その内方2横指の部。坐骨神経痛や膝関節症の場合の圧痛の好発部位だとしている。(以上、代田文誌「鍼灸治療基礎学」)。、腓腹筋内側頭上にある。脛骨神経末端が腓腹筋内側頭部に付着する部で、本筋のモーターポイントに相当する。

2)外承山
承山の外方2横指で、筆者がよく用いる圧痛点である。腓腹筋外側頭のモーターポイントに相当し、臨床的意義は前記の内合陽穴と同じ。

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4.ヒラメ筋への刺針 

1)ヒラメ筋と腓腹筋
ヒラメ筋は腓腹筋と同じくアキレス腱から分離し、脛骨と腓骨に直接つながっている単関節筋であり、足の底屈のみに働く。膝関節の非伸展時(腓腹筋が弛んでいる)に、足関節を動かすのはヒラメ筋の作用である。たとえば膝を伸ばした状態で「アキレス腱を伸ばす体操」をしすると腓腹筋が伸張され、膝をやや曲げた状態で行うとヒラメ筋が伸張される。
鍼灸臨床でヒラメ筋を緊張させた状態にして刺針するには、まず仰臥位でにして、股関節外転、膝関節屈曲で、大腿前面を腹に近づける姿勢にする。その肢位で、脛骨内縁の圧痛を調べると地機穴の硬結を指先に感じとることができる。

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2)地機の取穴と意味

地機の取穴は、「内果上8寸で脛骨後縁の骨際」とある。下腿内側長を1尺3寸と定めるので、下腿内側を3等分し、ほぼ上から1/3の処になる。
股関節外転かつ膝関節45度屈曲位、すなわち一方の足底を他方のフクラハギ内側に付けた姿勢(パトリック試験をするその手前の姿勢)をさせ、曲げた下腿内側の反応を調べていくことにする。指頭は脛骨際を容易に触知できるが、地機の高さに相当する部だけは、筋肉が邪魔して骨がうまく触知できないことに気がつく。その筋肉は誰でもシコっていて、軽く押圧しただけでも非常に痛がる。

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5.長腓骨筋への刺針、陽陵泉

総腓骨神経は膝窩尺側に下降(浮ゲキ・委陽)し、腓骨頭直下(陽陵泉)に回る。次に長腓骨筋を貫いた後、すぐに浅腓骨神経と深腓骨神経に分かれる。腓骨頭前下際で、この長腓骨筋部に陽陵泉をとる。陽陵泉刺針では総腓骨神経を刺激できるが、やや下方に陽陵泉をとるのであれば浅腓骨神経刺激になる。 陽陵泉刺針を長腓骨筋TPsに対する刺針と捉えることもでき、こちらの方が本命かもしれない。

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6.短腓骨筋への刺針、懸鐘

外果の上方3寸で長・短腓骨筋前縁に懸鍾(=絶骨)をとる。長短腓骨筋のすぐ前には長指筋があり、これらの筋溝には浅腓骨神経が走行している。浅腓骨神経痛時には、陽陵泉とともに懸鍾に圧痛が好発するが、これは短腓骨筋のTPsと一致した位置になる。

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7.足根洞窟、丘墟

外果の前下方の陥凹部に丘墟をとることになるが、正確な位置は明瞭ではない。しかし丘墟の「墟」という漢字は、くぼみのことなので、すなわち丘墟とは丘のくぼみの意味をすることから、筆者は、距骨と踵骨の間にある足根洞部に取穴している。この部に筋構造はないが、骨間距踵靱帯がある。 古東整形外科・内科のHPによれば、水色で示した部分に神経終末が集合しており、 「足の目」ともいわれるぐらい、地面から足に伝わる微妙な感覚をキャッチし、脳に伝えているということである。一般的には陳久性の足関節捻挫で痛みを生じやすい部である。 ただしその直下には浅腓骨神経が走行しているためか、浅腓骨神経痛時には圧痛が出現しやすい。

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8.前脛骨筋への刺針 

足三里~下巨虚 下腿前面の前脛骨筋上には胃経の、足三里・上巨虚・条口・豊隆・下巨虚といったツボが並んでいる。前脛骨筋は深腓骨神経が運動支配支配するが、深腓骨神経が前脛骨筋中に送る分枝は多数あって、上記経穴はどれもモーターポイントとして作用している。鍼灸臨床にあたっては、上記経穴を順に調べ、最大圧痛硬結点に刺針するようにする。

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針灸院における外反母趾の診療 Ver. 2.0

外反母指の針灸に関しては、「外反母趾のテーピングと針灸治療」(2006.7.9)で発表した。その後、2013.2.5に全面改定し、今回三度全面改訂することにした。

1.外反母趾の定義

足母趾の中足指節関節(MP関節)の外反(小指側に傾く)状態。中足基節関節角が「15度以上」を外反母指とする。高度は外反母趾の高度なものは、第2趾と重なる。男女比は、1:10  で圧倒的に女性に多い。     

中足基節関節角:正常=15°未満、 軽症=15°~20°未満、 中等度→20°~40°未満、 重度=40°以上

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2.外反母趾病態生理(以下の順番で進行) 

1)距骨下関節の過回内(オーバープロネーション)        

歩行時の接地は、まず踵後方→足底外側→母趾側へと体重は移動する。 小趾側から接地するのは衝撃吸収の役割からで、この時、距骨下関節は回内運動が起きている。回内運動することは生理的だが、過回内状態になると、重心が土踏まず方向に片寄るので、足の横アーチが崩壊して<開張足>になる。なお距骨下関節回内に筋は関与しない。 

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 2)浮き指       

常に靴を履いた生活スタイルでは、母趾で地面を蹴って前に進む能力が乏しくなり、長・短母趾屈筋力が低下する。このため立位では母趾が宙に浮いた状態になる。これを<浮き指>とよぶ。    

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地面を蹴るのは第2趾MP関節底部に代償され、接地部はウオノメやタコができやすい。   

 

3)母趾の外反・内旋の強制     

歩行時の体重移動が土踏まず側に片寄った状態では、母趾内側に体重がかかり、地面を蹴るようになるので、母趾の内旋を強いられる。この状態が外反母趾である。     
※ハイヒールや先細りの靴を履くのが原因とする説もあるが、履かない者でも外反母趾になる者は多いので決定的要因とはいえない。

 

3.症状、所見   

①母趾MP関節が突出し、靴との接触でバニオンとなり、発赤して腫脹。       
※バニオン bunion: 靴との接触で母趾MP関節内側部が滑液包炎を起こし、発赤腫脹して疼痛を生じる。  

②開張足(足の幅が広く、扇状に広がる)   
③足の横アーチの消失(土踏まずの消失)  

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④外反母趾になると歩行時に足趾に体重負荷がしにくくなる。第2趾MP関節底部で体重を支持すことになるので、圧痛や自発痛、鶏眼・タコ等が出現しやすくなる。



3.現代医学的治療                                                        

外反母趾の外科手術は数週~2ヶ月の入院が必要で、一方再発率15%。保存療法の目的は、痛み少なく日常を過ごせることと、また外反母趾の進行を防ぐことが治療目標。  



4.外反母趾の治療(鍼灸院でできること)

1))外反母趾の鍼灸治療とストレッチ

距骨下関節の過回内は筋緊張とは無関係なので、鍼灸でアプローチする方法はない。しかし浮き足の治療として、長・短母趾屈筋の緊張を回復させる試みは行われている。  

①短母趾屈筋に対するトリガーポイント刺針法(森田義之)    

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長・短母趾屈筋を伸張させることは浮き指の治療として治療意義があるが、本筋に刺針して筋緊張を緩めることができるかは不明である。次に示す長母趾屈筋に対するストレッチを行う際、森田氏の施術を併用するのがベターかも知れない。  


②長母趾屈筋のストレッチ  「かわせカイロプラクティック」HPに掲載されていた図。

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長母趾屈筋腱は、母趾底に停止しているが長母趾屈筋は下腿後側にある。この矯正法をすることで長母趾屈筋はストレッチされ、長母趾屈筋腱の緊張は緩和される。なお本筋に対する針は下腿外側の長腓骨筋の後縁およそ外丘穴から深刺直刺する。

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2)キネシオテープによる矯正法  

キネシオテープによる矯正直後から、外反母趾はかなり矯正されるが、これで変形矯正作用はない。テーピングを行うことは接着剤が皮膚の角質層を剥がすので、連続使用にも向か  ない。自宅にいる時は補装具を使うということになるだろう。キネシオテープでの矯正目的は母趾の外反制限と母趾内旋制限である。

距骨下関節の過回内矯正や開張足の矯正目的には、足底矯正板の使用が本質的かもしれないが。

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 本稿では両者を組み合わせた方法(富岡整骨院HPで説明)していた方法を紹介する。   

①足底部の母指MP関節外側から1~2横指、踵に近づいたあたりを押圧すると、母指と示指の間が広がる部位(短母指屈筋上)を発見する。この部位が外反母趾の「起点」になる。    2.5㎝幅のキネシオテープを使い、「起点」と母指外側部 を、母指が少々内転するようテーピングする。  

②母指内側を始点とし、テープを表側から母指と第2指間をくぐらせ、足裏の母指MP関節の手前を通って、「起点」を通過させ、足背部までもっていく。   

③土踏まずをつくる目的で、土踏まずと足背を4㎝キネシオテープで巻く。

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3)足底筋力強化訓練

外反母趾変形に対する効果は乏しい。足底筋の筋力強化にはタオルギャザー訓練(長・短母趾屈筋の訓練) が行われる。これは座位で床にタオルを敷き、その端を足指でつかみ、    前にたぐり寄せる動作をさせる。長・短母趾屈筋は、足の横アーチ形成 に関係している。母趾内転筋横頭の筋力低下は、開張足を招くので、この筋力低下防止の目的で足指ジャンケンを行わせる。履物としてはゲタやゾウリなど鼻緒のついたものを使うようにする。

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足底筋膜炎・モートン病・シンスプリント後内側型の鍼灸治療の共通点

私は、現在<鍼灸奮起の会>の上肢・下肢症状の鍼灸治療の実技講習を行っている。その下準備のため、この数ヶ月間これまでの治療を見直し、整理している。診断名は違っても鍼灸治療法が同じになる場合がある。


1.下肢症状をもたらす足底筋膜炎、モートン病、シンスプリント(後内側型)は、鍼灸治療方法は類似性がある。

すなわち足関節の底背屈で痛み増悪す るものはヒラメ筋・腓腹筋の過緊張を緩める治療を行い、足指の屈伸で痛み増悪するものは 長・短母趾屈筋や長母趾屈筋を緩める治療になる。

足底筋膜炎の鍼灸治療
   https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/83c59673cb2f50c8faf765b63d8060ec

モートン病の鍼灸治療
 https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/bb2298bdb1658db50e457c2bf842da80

シンスプリント後内側型の鍼灸治療
 https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/cd953503b935651c5c89be3ac81565fa

 

 

2.ヒラメ筋・腓腹筋の刺針肢位の相違点

ヒラメ筋・腓腹筋は、ともに下腿後側にあるが、効果を生み出すにはその刺針肢位が異なってくる。以前にも指摘たが、再度この場で説明したい。

1)解剖
ヒラメ筋と腓腹筋は合してアキレス腱となり踵骨後部に起始する。ヒラメ筋停止は脛骨と腓骨に直接つながっている単関節筋で、その機能は足の底屈時である。腓腹筋は停止は膝関節を乗り越えて大腿骨下端なので、足関節・膝関節の二関節筋になる。      

2)下腿脾経の触診体位

仰臥位で足底を自分の膝関節内側に付着させるような肢位をさせ、下腿内側を触診すると、膝屈曲位なので腓腹筋は弛緩し、ヒラメ筋は緊張状態にある。脛骨内縁の脾経を触診する場合、このような姿勢にすると圧痛硬結を触知しやすい。なお私は地機はヒラメ筋停止部に取穴している。

地機の教科書位置内果の上8寸、脛骨内側縁の骨際。脛骨内側の上1/3の処。

 

3)下腿膀胱経の触診体位       

下腿後側の腓腹筋・ヒラメ筋ともに緊張させるには伏臥位で膝完全伸展にする。下腿膀胱経の触診と刺針はこの体位で行う。 

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内転筋管と陰包刺針肢位

1.内転筋管とは

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1)局所解剖

ハンター管ともよぶ。大腿の下方内側にある。大内転筋の筋膜が伸びて内側広筋につながった部の下にできた間隙をいう。この間隙には、大腿動・静脈および伏在神経が通る。

四肢にある太い血管は伸側ではなく屈側を通過しているのを常としている。これは筋伸張の際、血管も伸張しないようにする巧妙仕組みである。股関節では屈側が前面であるが、膝関節では後面となる。そのため、大腿動・静脈は大腿部では前面、下腿部では後面を通ることになるが。前面から後面に移るための管が内転筋管である。伏在神経も大腿動静脈を一緒に内転筋管に入るが、膝内側~下肢内側皮膚知覚をつかさどる関係から、途中で別れ内転筋管から出てくる。

 

2)ハンター管症候群

内転筋管の中で伏在神経が圧迫を受けてしまう神経障害。 症状: ・膝の内側やすねの内側の痛み、しびれ、感覚異常 ・ハンター管の部分を押さえると膝の内側やすねの内側へ放散するような痛みが走る ・知覚神経であるため、麻痺がおこって動かなくなったり筋肉が痩せてくることはない

原因: タイツやスパッツなどにより太ももの内側が締めつけられるようなことがある場合や ハンター管周辺の筋肉が硬くなって緊張が強くなることによって圧迫される場合。 膝の人工関節の手術を受けた際にも合併症として発症することもある。

 

2.陰包穴

1)陰包の取穴 位置曲泉穴と足五里穴を結ぶ線上で、大腿骨内側上顆の上4寸、縫工筋と薄筋の間

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2)陰包の特異性   

大腿内側の代表穴に陰包がある。一般的には血海と同様に泌尿生殖器の疾患に適応があるとされるが、比較的マイナーな穴である。

陰包を探るには、普通は仰臥位で行う。しかし圧痛硬結は容易に触知できるが、意外なことに刺針しても意外に筋緊張部にぶつかってという手応えのがないし、響きもしない。 陰包に興味をもったのは、内転筋管部に相当すると思えることと、とくに内転筋管内を伏在神経が走行するので、伏在神経刺激点として有用かもしれないと思ったことが理由にあった。



3)陰包刺針の体位と針響 

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仰臥位で刺針しても緊張筋に当たらないので、治療側を下にしたシムズポジション(側腹位)で陰包を探ることにした。真下に押圧すると容易に筋緊張を捉えることができ、筋硬結が逃げることもなかったので、寸6#2でゆっくりと直刺してみた。すると2㎝ほど刺入した時、ドンとくるような響きを下腿内側~下肢に与えることができた。これは結構再現性がある現象だった。

ドンという響きが下方に行ったという点から、上行性である知覚神経である伏在神経を刺激したものでないこと、また伏在神経は細いので、再現性あるような響きを与えるのは常時できるものではないとの観点から、大内転筋-内側広筋間にある筋膜刺激と推定した。

大内転筋や内側広筋の筋々膜緊張により、伏在神経を刺激する病態(=ハンター症候群)もあるように、陰包刺針が伏在神経症状に効果のある可能性もある。すなわち鵞足炎や下腿内側皮膚痛にも適応があるかもしれない。


むずむず脚症候群の針灸治療Ver.1.4

むずむず脚症候群の正式名称は、下肢静止不能症候群、RLS, Restless Legs Syndromeという。最近になって認知されてきた疾患である。ある日、橈骨麻痺で来院中の患者が「むずむず脚症候群もある」と訴えた。これまで抱いていた私の印象から、「それは大変だ」と応じたが、その患者は薬を飲めば治るが、あまり薬は飲みたくないと云った。私は患者がむずむず脚症候群であること以上に、治す薬があることに驚いた。早速ネット検索してみて、かつての常識がすでに古くなっているこをを思い知らされ、新たな見解も生まれたので、本稿としてまとめる。

1.症状

脚の不快感と動かしたい欲求。脚の表面ではなく深部に不快な感じがあり、動かすと少し軽減する。その不快感は様々に表現される。むずむずする、虫が這う、痛がゆい、など。
症状は夕方から夜間にかけて強くなることが多い。自然治癒はごくまれで、進行性増悪することが多い。人によっては背中や腕にも現れることがある。

2.原因

神経伝達物質であるドーパミンの機能異常。
    
神経伝達物質ドーパミンの機能低下
         ↓
A11と呼ばれる脳の神経細胞の機能低下。
                 ↓
脳に送る必要のない身体深部知覚の些細な信号をカットできず、脳が過敏状態
         ↓
     「むずむず脚症候群」
   
身体の中では、脳が認識する運動刺激や身体感覚の他に、一定の閾値に達しない「雑音」のような深部知覚が無数に発生している。これらの深部知覚は、間脳部に相当するA11領域から脊髄に伸びる下行性の神経細胞によって抑制されているので脳にまでは達しない。

しかし何らかの原因によってA11の神経細胞の働きが弱まり、特に夜間、運動刺激や身体感覚の刺激がなくなると、「雑音」のような深部知覚が上行しやすくなり、脳が感覚情報過多の状態になり“むずむず”するような不快感を覚えるようになる。

なおA11の働きが弱まる原因として、ドーパミン神経細胞の機能障害や、脳内の貯蔵鉄(フェリチン)減少や鉄代謝異常が関係しているとされている。
   
夜になると脳の松果体からメラトニンが分泌され、身体が眠りにつきやすいように深部体温が下がる。とともに“むずむず”するような異常感覚も現れてくる。明け方になってメラトニンの分泌が減って、深部体温が上昇し始めると異常感覚は消失する。 

A11の働きが弱まる原因として、ドーパミン神経細胞の機能障害が関係している。一部の統合失調症治療薬(リスパダールなど)は、ドーパミン過剰活性を抑えるので副作用として、むずむず症状が生ずることがある。  


 

3.現代医療での治療

 「ビ・ シフロール錠」が、日本で初めてむずむず脚症候群の薬として2010年1月に保険適用された。本剤はドパミンアゴニスト(=作動)薬で、ドパミンの代わりとなってドパミン受容体を刺激するもの。要するにドーパミン量を増やし、弱まったA11神経細胞に直接刺激を与え 脚の不快感のもとをブロックする機能を回復させるもの。
  
※本剤は、パーキンソン病での治療薬だが、むずむず脚症候群で使われる場合はパーキンソン病治療に比べて、6分の1~18分の1という少ない量で効果がある。ただし長期間連用すると効かなくなっていくる。
 

4.針灸治療

1)考え方

A11神経細胞の機能低下により、脳に届ける必要のない深部知覚信号カットできなくなっている。であるなら脳へより大きい深部知覚信号(=響かせる針)を送ることで、先の「雑音」のような深部知覚信号をマスキングできるのではないだろうか。この考え方は、パーキンソン病の四肢痙縮治療としても使えるものであろう。  
  

2)発作時、足三里に対する深刺で響かせる(小宮猛史先生)

体験例:うちの家内は、寝室で寝ていたかと思うと脚をどんどん叩きながら起きてきて「なんとかしてー」と訴える。虫が這うようなむずむず感を感じ、じっとしていられないと言う。発症はたいてい右側。

そこで発症するたびに足三里に、そっとゆっくり止まるまで刺入し、ゆっくり雀啄することで得るズーンという響きを与える。すると直後に8割くらい楽になり、次に足三里の少し下にもう一箇所響かすように鍼をするとすっかり消失し、そのあとぐっすり眠れるようになる。時間にして2~3分。なお切皮程度の深さで高速撚鍼して響きを与えても症状の軽快はみられない。

先日の発作時、家内に協力してもらい、いつもの鍼するところをお灸にしてみた(半米粒大の大きさで7壮ずつ)。しかし、じっとしていられるような効果までは出なかった。結局そのあと鍼して鎮静。(小宮猛史:ブログJTDの小窓 ムズムズ脚足症候群 2014.3.12より)

小宮猛史先生ブログ

http://blog.goo.ne.jp/takeincho/e/75b1700aff424fe277a7309dc1deb0c6



3)委中部の強圧(昼のガスパール・オカブ日記より)

患者は仰向けに床に寝る。治療者により患者の膝の裏の筋を強く圧してもらっていると、かなり痛く感じる箇所がある。そこを治療者に50回くらい念入りに強く圧すように揉んでもらう。これを両脚やる。揉んでもらっている時はかなり痛く感じるのが普通である。本報告者の場合、この治療の効果は1ヶ月程度である。それを過ぎるとまたむずむず感が出てくるので、上記方法を繰り返す。就寝前に治療を行うのが望ましいという。

 

 

4)下肢脛骨骨膜刺針が効果的か?

ズーンと響くように刺針することが有効だという報告があったので、筆者は中国針で足三里や三陰交から神経幹ねらいで刺針してみたが、思うような効果が得られなかった。そこで脛骨骨膜刺として足三里や三陰交から脛骨骨膜に擦りつけるように刺入し、後脛骨筋に至るような深刺をしてみた。すなわち、シンスプリントの針治療の流用を行った。すると、これまで単に強い響きを与える目的で行った刺針よりも、ムズムズが減った。針灸治療的に、シンスプリントとムズムズ脚症候群は同じ範疇として捉えることができるのだろうか。 

シンスプリントの骨膜刺激針治療(似田)
https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/58c9421d320b880ecd41da4e15861ead

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

こむら返りの鍼灸臨床

筆者は2015年12月17日に「足のツレの治療 Ver.2.1」を報告したが、読み直してみると、反省点が多くでてきた。その記事を削除するとともに、同様のテーマで新たに書き起こすことにした。

1.こむら返りの病態生理

「こむら(=腓)返り」とはふくらはぎが、つ(=攣)ること。腓腹筋の有痛性痙攣である。筋肉内に分布する運動神経終末部の自発性興奮に始まる。筋線維の一部が強く収縮すると、収  縮した筋線維と収縮しない筋線維の間にずれの力が働き、筋肉の痛覚線維を刺激して、痙攣と痛みが生じる。  

 

2.こむら返りの原因  

1)脱水時     
夏の暑い時期、激しい筋肉労働で大量の汗をかいたとき。水分やミネラル分(CaやMg)不足になると、腱紡錘中のセンサーがうまく働かなくなり、筋をゆるめる機序が作用しない。   

2)睡眠中
日中に比べて夜間は気温が低くなる。ヒトは就寝中は、熱エネルギー産生力を低下させ、体温も午前3時から5時頃が最も低くなる。こうした時であっても体幹深部の内臓温は一定に保つので、結果として手足末梢温は低下せざるを得ない。
その結果、夜中から明け方にかけて、筋の血流が悪くなり、新鮮な酸素、栄養素の供給や老廃物の排除がうまく行われなくなり、こむら返りが起こりやすくなる。

下肢静脈瘤の原因である下肢の静脈逆流防止弁の不全では、血液が逆流して余計な水分が血管から滲出し、周囲の細胞の新陳代謝を悪くして、足の疲れ、だるさ、むくみとともに、    夜中のこむら返りなどの原因になもなる。


3.こむらがえりの治療

1)手足、とくに足の保温につとめる。具体的には腓腹筋部に保温のためのサポーターを施す。

2)高山瑩・伊藤博志は、腰椎変性疾患に伴うこむら返りで日常生活に支障が出ていた患者32人に対し、太衝穴から深腓骨神経ブロック(局麻注射)を実施。全例でこむら返りの発生頻度が1カ月に1回以下に減少すると発表した。一度行えば数カ月間、効果が持続する。なお中封からの深腓骨神経ブロックも試みたが、太衝ブロックよりも効果は劣ったという。    (「腰痛などを伴っているこむら返りに難渋している症例に対しての治療効果」:日本腰痛会誌、8(1): 126--130.2002)

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これをどう理解すべきだろうか。太衝の皮膚は特異的に深腓骨神経支配になっている。こむら返りに、太衝穴へのソマセプト(皮膚刺激)貼って効いたという報告もある。深腓骨神経ブロック自体が、坐骨神経痛に対する治療のような効果をもたらし、下腿筋群の筋弛緩に関与したということだろうか。  

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3)PNF手技

①コントラクトリラックス Contract Relax      

コントラクト(収縮)とは短縮性収縮のことである。静止維持(10秒間)→抵抗伸展→静止維持(30秒間)を繰り返す。抵抗伸展は、患者の抵抗がある中、可動域いっぱいの運動動作をさせる。 前項のの太衝刺激の代用となるのは下腿胃経上のツボになるのだろうか。下腿三頭筋の過収縮を改善するには、その拮抗筋に相当する前脛骨筋(=深腓骨神経)を刺激すると効果あるという者もいる。これは「Ⅰa 抑制」の機序が働く。       

拮抗筋を使った下腿三頭筋のコントラクトリラックスの方法(下写真)は、下腿三頭筋の拮抗筋を収縮(足関節を背屈)させるが、この時術者は足を反らさないよう抵抗を加える。これにより下腿三頭筋の緊張を緩めていく。このメリットは痛い筋肉を縮めさせずに症状の緩和がはかれることになる。

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②ホールドリラックス   Hold Relax      

等尺性収縮をホールド(保持)と言う。静止維持(10秒間)→抵抗維持(6秒間)→静止維持(30秒間)を繰り返す。患者自身の自動運動なし。いわゆる通常のストレッチ運動。   

③自分で行う応急処置としてホールドリラックス  

腓腹筋痙攣発作時には、経験的に発作が治まるまで母趾を強く背屈させて腓腹筋ストレッチをすることが有効である。しかし夜間の発作の最中、この動作をするのは、いちいち起き上がらねばならいので煩わしい。そこで患側の足母指のMP関節を強く背屈させて、腓腹筋のストレッチをすれば仰臥位のままできるので手軽にできる。

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4)芍薬甘草湯     

速効性があり、効果発現まで平均6分といわれている。効果持続時間は4~6時間あるので、夜間に足がつれるケースでは、眠前に服用すればよい。朝方につった時に屯服でも効果   を発揮する。勺薬も甘草も筋緊張を緩める作用。芍薬甘草湯で効かない場合、カルニチン不足か、Ca不足の可能性が考えられる。抗てんかん薬のバルプロ酸などを服用中の方は、低カルニチン血症に陥っている可能性もある。   

※最近、薬局の窓に<足のツル方へ>という張紙を見かけるようになった。この時販売するのが勺薬甘草湯。勺薬甘草湯は、横紋筋(骨格筋)に限らず、平滑筋(内臓運動)にも有効。すなわち、生理痛や尿管結石、時にしゃっくりなどにも効果を発揮するという。

 

大腿外側痛の病態把握と針灸治療

たまに大腿外側痛で来院する患者がいる。整形外科に行って治らなかったので針灸に来たという患者も少なくない。新米針灸師の中には、これをすべて大腿外側皮神経痛と診断する者もいる。確かに大腿外側皮神経痛のこともあるが、その頻度は少ない。多いのは小殿筋の放散痛、もしくはL5付近の後枝症候群である。それぞれ治療ポイントも異なってくる。
以下に3つの病態を示す。その鑑別は圧痛点の所在と、刺針後の治療効果(治療的診断)によるのが最も分かりやすい。

1.小殿筋放散痛の針灸治療
小殿筋の過緊張により、大腿外側痛を生ずることがある。中殿筋過緊張をもたらすのは、坐骨神経痛や股関節症であることが多い。側臥位にして小殿筋中の圧痛硬結点を見いだし、そこに2寸#4程度の置針をすれば症状緩和に効果ある。
なお小殿筋は中殿筋の下にあるが、中殿筋の放散痛であれば殿部の痛みとなり、下肢症状はあまり出現しない。

中・小殿筋は強大な筋であるから、側臥位で刺針しただけではなかなか症状は改善しづらい。横座り位にさせ、中・小殿筋を収縮状態にさせた体位にして、3寸#8の鍼で筋硬結に向けて深刺単すると、強い響きが得られて直後から改善することが多い。

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2.L5付近後枝症候群

L5付近の椎間関節症やL5棘突起傍筋(棘筋や多裂筋)の筋筋膜症では、L5神経後枝が興奮する。側臥位にしてL5棘突起直側付近の圧痛点を見いだし、そこに2寸#4程度の置針をすれば改善できることが多い。

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3.大腿外側皮神経痛
大腿外側皮神経は腰神経叢で、とくにL2L3神経から出て、鼠径靱帯外端の下を潜り、大腿外側皮膚に分布する知覚性の神経で、筋支配はない。
鼠径靱帯で神経絞扼障害を起こすことがある。上前腸骨棘内縁で、鼠径溝外端の圧痛点(維道穴あたり)に刺針すると改善できることが多い。

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足底筋膜炎の針灸治療 Ver 2.3

1.病態
   
足底の筋は、表在性の足底筋膜に覆われている。足底筋膜は踵骨隆起から起こり、足の指に至って、足底の縦のアーチ維持に貢献している。過度の足底筋膜に加わる張力の反復により、足底筋膜に付着部の牽引ストレスが作用する。また足底筋膜の微小断裂を起こす。
   
この微小断裂は、夜間就寝中に治癒機転が働いて固くなる。しかし朝、固まった損傷部に体重が加わると、再び引き伸ばされて激痛となる。長距離の選手に多い。

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2.症状

痛みの直接原因は脛骨神経末端興奮による。

1)脛骨神経内側踵骨枝刺激
歩行開始時や走行中に、踵に近い部分が、ビリビリと痛む。踵骨前方の圧痛。

2)内側足底神経刺激:母趾背屈時の足底痛。
 
3.所見:X線で、足底部の踵骨内前方に骨棘。

4.整形治療:整形での治療は安静。ときに筋膜付着部への局麻注射を行う。スポーツ再開までには、数ヶ月の安静が必要。
(治癒まで半年以上かかる例が10%ある)
 

5.足底筋膜炎の鍼灸治療

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 1)下腿三頭筋と足底筋膜   

新生児では足底筋膜は踵骨を経由して下腿三頭筋とつながっているが、生後1年して歩行する頃になると両者は踵骨を境に独立したものとなる。治療的には、足底筋膜と下腿後側筋と一体として考えるとよい。 下腿三頭筋とくにヒラメ筋が短縮緊張すると、足底筋膜がひっぱられる力が増し、外的衝撃により足底筋膜が傷つきやすくなる。ゆえに下腿三頭筋とくにヒラメ筋のトリガーポイント(承山・承筋などの圧痛点)を見つけて刺針する。

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2)短母趾屈筋への刺針

公孫位置: 足の第1中足指節関節の後、内側陥凹部に太白をとり、その後1寸。     
然谷位置:足内果の前下方、舟状骨と第1楔状骨の関節面の下際。


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公孫・然谷刺針は母趾外転筋→短母趾屈筋と入っていく。なお長趾屈筋と長母趾屈筋はこのあたりでは腱となっているので、刺針する意義は少ない。これら長趾屈筋と長母趾屈筋本体に刺針するには下腿から行うのがよい。


3)長母趾屈筋と長趾屈筋への刺針

これら2筋は。足母趾および足第2趾~第5趾の屈曲作用である。足底部では腱になっていて筋は下腿後側になる。長母趾屈筋腱の停止は腱となって足の内側に、長趾屈筋の停止は腱となって足の外側にあるが、下腿後側では二筋はクロスし、長母趾伸筋起始は下腿の外側に、長趾伸筋起始は下腿の内側になっているので要注意。これら二筋の代表穴として、筆者は陽交穴・地機穴を使っている。

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※以前の下腿中央断面図では、「陽交」と「外丘」の位置が入れ替わっていた。40年前に私が学習してた頃にそういうことだったが、現在では変化したらしい。現在の規定に沿って、図Image may be NSFW.
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地機位置:下腿内側ほぼ中央脛骨内縁骨際で、ヒラメ筋起始部。深部に長趾屈筋がある。   
陽交位置:下腿外側ほぼ中央。長腓骨筋とヒラメ筋の間。深部に長母趾屈筋がある。

 

この刺針のアドバンス治療は、伏臥位で下腿下方にマクラを入れて足をベッドから浮かせた状態にして外丘から長母趾屈筋に、地機から長趾屈筋に置針。その状態で足指の屈伸運動を行わせると治療効果が増大する。  

 

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4)局所刺針  

刺痛をなるべく与えないよう細針を使い、足底の圧痛点に直接浅刺刺針。
跪座位(両足の指を立て、踵の上に腰を下ろした姿勢をさせ、足底筋膜のストレッチ運動を行わせる。徐々に体重をかけていく。1~2分筋運動実施させた後に抜針する。

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「偽内臓症治療のための体性神経刺激~肋間神経・脊髄神経後枝・陰部神経への鍼灸治療」 セミナー 終了しました

 神奈川県鍼灸師会 令和元年第一回 イブニングセミナー <終了>

「偽内臓症治療野ための体性神経刺激~肋間神経・脊髄神経後枝・陰部神経への鍼灸治療」 <実技供覧>

ごあいさつ
日頃の鍼灸臨床で、整形外科やペインクリニック分野の治療は得意とするが、いわゆる内臓系疾患は苦手としているのが普通である。すなわち自律神経是正を目標とする鍼灸治療の方法は確実性に乏しい。今回は、一見すると内臓症状であっても実際は体性神経症状であるものを取り上げ、その具体的方法を実技供覧しつつ説明したい。  

①耳針と迷走神経刺激 
②肋間神経刺激と横隔膜知覚  
③腹痛と肋間神経痛  
④柳谷素霊の五臓六腑の針の解剖学的根拠 
⑤代田文誌の脾兪と小野寺殿部圧痛点の相関  
⑥陰部神経刺激と泌尿器疾患
⑦北小路博司氏の骨盤神経刺激法  
⑧常習性便秘に対する左府舎刺針の解剖特性


日時 平成元年7月10日(水) 19時~20時30分 

会場 万国橋会議センター402号室(下地図)   
みなとみらい線「馬車道」駅6番出口より徒歩4分    
市営地下鉄「桜木町」駅より徒歩10分


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申込方法 事前予約不要。当日受付(18時30分より)  

受講料 会員無料 学生会員無料(会員証提示) 、学生1500円(学生証提示) 、一般3000円

連絡先 神奈川県鍼灸師会事務局

 http://kanagawa.harikyu.or.jp/seminar/

 

7月10日予定通り講演を行った。受講者は40名程度で、これはイブニングセミナーとしてはなかりの好記録だったそうです。
90分という短時間だったので、かいつまんで説明したら60分で終了してしまった。長時間セミナーの方が私には向いていると思った。

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