筆者は、2018年1月26日のブログ「立位で膝関節症の治療をすることの意義」で、膝痛患者に対し、立位で膝関節周囲縁の圧痛を探り、圧痛部に速刺速抜刺法を行う技法を提案した。このやり方は、2ヶ月ほど臨床に使ってみて、非常に効果の高い治療法らしいことが分かった。また自分なりの見解もできたので、ここに整理することにした。
1.刺針体位の変更
刺針体位をベッド上での立位から、ベッド傍での立位に変更
以前のブログではベッド上に立たせて刺針すると記した。これは患者を自分の側に向かせて刺針することを考えた末の結果だった。間もなく患者を自分と反対側に向かせて刺針する方法に変更した。これによって施術者の腕や手首で患者の大腿部をしっかりとホールドできるようになり安定感が増した。ただしこの方法では、あえてベッド上に立たせなくても、ベッド方向を向かせて床に立たせるだけで、膝蓋骨周囲に刺針できることに気づき、この2週間前から、この方法に変更した。この方が、患者にとってさらに不安感は少なくなる。隣のベッドにいる患者を覗かれるという不安もなくなる。
2.鶴頂圧痛と内外膝眼圧痛の病態の相違点
立位で膝蓋骨周囲の圧痛を探してみると、膝蓋骨の下半分、とくに内膝眼・外膝眼に圧痛を多く触知できることが判明した。それは仰臥位で膝蓋骨周囲の圧痛を探った時には発見できなかったもので、発見できたとしても、圧痛点の位置が微妙に異なっていた。
なお私は数年前から、仰臥位膝屈曲位で、膝窩骨上縁の四頭筋停止部の圧痛を探して刺針することを行い、非常に良い治療効果が得られている。歩行時の膝痛軽減するほか、とくに膝が深く屈曲できるようになり、なかには正座ができるようになるケースもあった。鶴頂穴刺針とは、大腿四頭筋とくに大腿直筋の起始部刺激になる。このことは2017年11月15日のブログ「膝OAに対する針灸臨床 Ver.2.0」で発表済である。
そうなると次の疑問は、規定された肢位で行う内外膝眼刺針と、鶴頂刺針の相違である。この2者は、一つの病態を別の角度から診ているだけなのだろうかという思いもあって、現在当院に通院中の膝痛患者十人ほどを調べてみた。すると鶴頂に圧痛があって内外膝眼に圧痛がない者がいて、鶴頂に圧痛がなく内外膝眼に圧痛がある者がいた。少数ながら両部位とも圧痛のある者もいたのだった。この結果から、内外膝眼圧痛が意味する病態と、鶴頂圧痛が意味する病態は別物らしいことに気づいた。
これはどういう病態生理からだろうか。私は鶴頂穴の圧痛は、四頭筋が短縮して伸張力低下の状況を診ている。また内外膝眼の圧痛は、四頭筋の収縮力低下による膝蓋骨位置の下垂、それに伴う大腿膝蓋関節の不適合具合を診ていると考えている。