1.灸治療が庶民に広まったのが江戸時代
もぐさは西暦500年頃、仏教とともに日本へ伝わってきた。中国にある棒灸は、日本のお灸の原型と考えられるが、お灸は日本独自に進化した伝統的な治療法。西暦700年頃僧侶が行う治療として隆盛を極め、江戸時代には庶民にも広まった。
2.いくさにおけるモグサの利用法
もぐさは戦さで使われていた。戦さで怪我をした際にもぐさを使って傷口を焼いて、肉を盛り上がらせ、血止め・消毒をしていた。
3.庶民同士が行う灸治療
鍼は鍼医という専門家が行うもので、鍼医は膿を切開するなど簡単な外科手術も行っていた。古代九鍼のうち、3種(鋒鍼・鈹鍼・ざん鍼)は今日でいう皮膚切開用のメスである。これに対して灸は、庶民同士が行う素朴な医術だったので、灸医というものはなかった。多くは痛いところや、切り傷にお灸するとかの原始的方法だった。
4.乾燥したよもぎ葉を石臼で挽く理由
もぐさは、よもぎの葉を乾燥させ、繊維部分を石臼で挽いて細かくし、竹簾でふるいにかけてフワフワの状態に仕上げたもの。よもぎの総量の3%ほどしかつくれない。
石臼挽きを重ねたもぐさは繊維が細かく、繊維間に空気を多く含むのでふわっとしていて、燃焼温度も比較的低い。中国製のものは乾燥したヨモギ葉を電気式ミキサーで粉々にカットするが、このような製法では繊維間の空気含有が少なく、燃焼温度が高くなるので有痕灸用としては不適切である。
5.足三里灸の効能
1)旅人のツツガムシ病の予防する
江戸時代になると、旅にもモグサを携帯するようになった。旅の途中、川を渡るとツツガムシ病に感染する恐れもあることから、お灸で予防していた。松尾芭蕉も奥の細道の旅立ちを控え、「三里」のツボに灸をすえて...と詠んでいる。(富士治左衛門(釜屋社長)東京 日本橋の観光・グルメ・文化・街めぐり情報サイト2015年02月【第52号)より)
※ツツガムシ病:オリエンティア・ツツガムシという病原体を生来もっているダニの一種。河川敷や草みらに幼虫は生息していて、そこに人が通ったりすると、皮膚にとりつき管を体内にいれて体液を吸着する。人の体内にその病原体が入ったときに発病する。発熱、刺し口、発疹は主要3徴候とよばれ、およそ90%以上の患者にみられる。また、患者の多くは倦怠感、頭痛を訴える。
2)中後年のノボセを下げる
「千金翼方」では「30歳以上で頭に灸をするときは40歳で足三里にもお灸をしないと気が頭に上って目が見えなくなる」書いてありる。それが後の「外台秘要」では「人、四十にして三里に灸せざれば目暗きなり」書かれてあり、文章の最初の「灸頭」が抜けていた。それ以後「年をとったら三里の灸をしなければならない」と伝わってしまった。もともと足三里の灸はのぼせを下げるための意味付けが強かった。(一本堂学術部「 江戸の鍼灸事情と養生法」)