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母指内転筋症には母指内転筋停止部の刺針 Ver2.1

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元のブログタイトルは、「母指CM関節症には母指内転筋停止部の刺針」だったが、筆者は母指CM関節症と母指内転筋症を混同していたので、上記タイトルに変更するとともに、本文の一部を修正した。

 

1.治せない合谷深部の痛み

合谷深部ないし魚際深部が痛むと訴える患者が、これまで何例も来院していた。
私が鍼灸初心者だった頃、患者の訴える症状部である合谷、あるいは魚際に刺針したが、さっぱり改善せず苦労した。かなり後、それは母指CM関節症という疾患であることを知った。

 

2.母指CM関節(第1手根中手骨関節)への刺針

ある時、またも同様の患者が来院した。通常の刺針では治せないことを自覚していたので、今度は合谷をいろいろな角度で押圧してみた。すると母指MP関節方向に押圧で強い圧痛があり、また指頭に筋のシコリを触知することができた。母指MP関節自体の動きは正常。
寸6#2でそのシコリに命中するように、母指中手骨外縁をかすめるように、えぐるように刺針し、その状態で母指MP関節の円運動を数回指示し、抜針した。すると初めて著効例が得られた。

後日、別の患者で、母指CM関節症が来院。高齢者で杖を持った状態で母指を捻ったとのこと。そのMP関節は変形していた。しかしながら上記刺針を行うと、痛みは半減させることができた。

 

3.母指内転筋停止部の筋付着部炎と推定

時を経て、同様の症状を訴える別患者が来院した。今度は、シコリが何によるものかを調べる余裕があった。合谷の浅い押圧では圧痛がなかったので明らかに表層筋ではない。となれば問題となる筋は、母指内転筋・短母指屈筋・母指対立筋のどれかだろう。

針をシコリに当てた状態のまま、母指対立筋のチェック(母指先を小指先に近づけ)をするも、針体は動かず動作に支障なし。次いで短母指屈筋のチェック(母指の掌側外転)で、これも問題なし。その次に母指内転筋のチェック(母指を中指方向に手掌につけたままスライド)し、大きく針体は動いた。

母指内転筋の停止は母指基節骨底内縁であり、母指内転筋付着部炎と判断した。結局、母指CM関節症といっても、痛み自体は筋付着部炎によることも多いことが予想され、針灸は有効と考えた。

 

4.母指内転筋症の概要 

1)病態    

母指内転筋は、第2中手骨を起始とし、母指MP関  節部を停止とする筋で、母指を内転(示指側に近づける)作用がある。手の合谷部においては、手背側と手掌側の間に位置する深部筋である。利き手側の母指内転筋を酷使する理容師や美容師や庭師が障害を受けやすい。  

2)フローマン徴候陽性  

母指内転筋は、母指球中にありながらも正中神経支配でなく、尺骨神経支配である。フローマン徴候とは、紙を母指と示指でつまんで引っ張り合うもので、尺骨神経麻痺を調べる検査として知られている。


3)母指内転筋症の針灸治療

術者の母指指頭で母指基節骨の奥を探るようにして初めて圧痛を検出できる。 すなわち合谷を取穴するが、その押圧方向は示指方向ではなく、母指基節骨縁になる。
母指内転筋は、手背・手掌のちょうど中間の深さにある。合谷から第1中手骨の内縁に向けて 押圧すると、第1中手骨内縁に強い圧痛を認める。この圧痛方向に深刺すると、第1背側骨間筋 を貫き母指内転筋に達する。合谷刺針に加え、魚際から母指内転筋に刺入する針を行ってもよい。刺針した状態で負荷をかけた母指内転運動(母指のIP関節を曲げずに、母指頭を示指腹につける、すなわち「半月の押手(鍼灸師以外意味不明だろう)」のような型を繰り返す)の運動針を行うと鎮痛できることが多い。   

 

5.母指内転筋とフローマン徴候

母指球を構成する筋は、短母指外轉筋・母指対立筋・短母指屈筋・母指内転筋の4つである。母指内転筋以外は橈骨の運動支配であり、母指内転筋のみが尺骨神経支配である。この解剖学的特性を利用したのがフローマン徴候である。

 

魚際の位置:
手掌部。第1中手骨中点の橈側、赤白肉際に取穴。母指中手骨中央の内縁に取穴する。魚際の名称は、母指球を魚に例えた時、そのヘリに位置するところからきているという。魚際から直刺すると、短母指外転筋→母指対立筋→短母指屈筋→母指内転筋と、母指球構成4筋を刺針できる特異的な部位。母指球筋のオーバーユース時、魚際に圧痛硬結が出やすいことが理解できる。

 

 

 

 

 

 

 

 


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