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顎関節症の針灸治療法 Ver.2.0

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1.顎関節症の概要

1)概念

咀嚼咀や開口時の顎関節とその周囲の疼痛、開口障害と開口時雑音などを主体とする顎関節症状の総称。

2)症状

3大症状は、開かない・痛い・音がする ※ただし安静時の自発痛はない。


3)顎関節症の分類(1996年、日本顎関節学会)

Ⅰ型:咀嚼筋の障害
Ⅱ型:関節包や靱帯障害
Ⅲ型:関節円板の異常
Ⅳ型:退行変性病変
Ⅴ型:上記以外の病態。心身症含む。
 実際には上記の合併型が多い。



2.Ⅰ型顎関節症と針灸治療

針灸適応はⅠ型であり、咀嚼筋とくに側頭筋と咬筋の緊張に対して効果がある。針灸は、開口制限そのものの効果は弱いが、開口時の痛みや痛みによる開口制限に効果が期待できる。通常3回程度の治療でよい。筋の起始停止への刺針を行う。側頭筋、咬筋の問題、外側翼突筋の筋緊張であることが多い。痛みを我慢すれば大きく開口可能。顎関節部の圧痛(-)、開口時雑音(-)

①細い針を用い、まず患者に強く歯を食いしばらせた状態で圧痛点に刺針。つぎに開口させた状態で圧痛点に刺針。最後に咬筋が下顎縁に停止する部(大迎穴)の圧痛点に刺針する。
②寸6#1を用い、下関穴(頬骨弓下端中央)から静かにゆっくりと直刺し5分間置針。針は咬筋(深部)→側頭筋→外側翼突筋と入る。

3.Ⅱ型顎関節症と針灸治療

顎関節の過使用による関節包や滑膜の痛みで、若年者に多い。比較的自然治癒しやすい。過使用を避けるような指導をする。圧痛は顎関節に限局、すなわち局所圧痛点である聴会穴あたりに限局する。消炎鎮痛作用を期待し、聴会等の局所圧痛点に静かに置針する。



4.Ⅲ型顎関節症と針灸治療 

20歳代女性に多い。開口制限あり。最大開口でも縦に指が1~2本しか入らない(正常では3~4本)入る。聴宮(顎関節部)の圧痛(+)。
この障害のみであれば顎関節部痛はないはずだが、実際にはⅠ型Ⅱ型などの合併も多いので、開口痛があることも多い。

※大きく開口時、カッンという音がすれば、その時関節円板は正常位置に戻るタイプ(Ⅲa型)。常に関節円板がずれているタイプ(Ⅲb型)では、カックンという音はしない。

開口時にクリック音がする。それは顎関節円板が所定の位置にもどる時の音になる。位置のズレ→関節円板の変形となると治癒しないことになるが、変形があまり目立たないタイプ(結果的に若年者)に対しては、刺針する価値がある。関節円板に付着し、円板を前方に引っぱるのは外側翼突筋上頭なので、この筋の緊張を緩めることを目的とする。それには最大限に開口させた状態(この時外側翼突筋は強く緊張している)で、下関から外側翼突筋に深刺し、軽く雀啄して抜針するという術式が結構効果あるようだ。詳細後述する。


5.Ⅳ型顎関節症

中年期以降の女性に多い。口を開ける時も噛む時も痛い。Ⅳ型顎関節症は関節変形が主因なので、経過が長いことが前提になり、中年以降にみられることになる。顎関節を動かすときに発するガリガリ、ジャリジャリという音がすれば、関節変形を意味しているので、針灸適応ではない。同じく、強く咬むと顎関節が痛むというのも変形性なので針灸適応ではない。
 


6.外側翼突筋刺針の技法と適応症

1)Ⅲ型顎関節症のクリック音に対し、下関への手技針が効果的か

これまで顎関節症の針灸治療というと、Ⅰ型に適応があるとは認められていた。しかしやり方によってはⅢ型にも適応があるかもしれないと思う症例(25才、女)を経験した。従来から顎関節症に下関深刺は多用してきたが、それだけではⅢ型に対して効果不足だった。しかし外側翼突筋運動針の方法として最大開口肢位で行ううようにすると、施術後ただちに音が消え、また再現性もあった。

開口時のクリック音を鎮静化させるには、開口させた体位で下関に深刺し、次に最大限に3秒間開口するよう患者に伝える。術者は下関に細かい雀啄刺激を加えつつ、1、2.3と声を出してカウントし、その直後に静かに抜針するという方法をとる。



2)刺針効果 

筆者の別の患者では、コリに当たると、患者もツボに当たったことが納得できるという。耳中に響いたり、上歯に響いたり、首から背中に響いたりするという。治療終了して道を歩いていると、その10分後くらいすると、背中の血流がよくなったことを自覚でき、非常   に気持ちよいという。効果持続時間も数日以上で、これまで5年間受けてきた種々の治療中、ベストだということだった。
  

3)外側翼突筋刺激の特殊効果
    
ネットで調べてみると、線維筋痛症に対して外側翼突筋に対するトリガーポイントブロックなどが効果ある例が報告されている。 本筋は他の筋と違って筋紡錘がないという。これは本筋の筋トーヌスが自動的に調整され難いことを意味している。咬み合わせの異常など→外側翼突筋の持続的緊張→中枢の興奮と混乱→全身の筋緊張といった機序も考えられるということである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 














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