「閃(ひらめ)く經絡」が出版され、丸2年が経過しようとしている。出版当時は非常に話題になった本であるが、内容が斬新である一方、鍼灸臨床には役立たないという内容でもあった。
私がネットで調べてみると本著の前1/4の内容限定だが、きちんと内容紹介して下さったのが、菅田裕子氏<鍼灸師が読み解く!「閃く経絡」、かげにひなたにブログ>(2018)だった。ここでは<その3、ファッシアを流れる電流>(2018年07月15日)に関係した内容を、さらに分かりやすい形で紹介したい。
1.鶏卵の構造
1)鶏卵構造
問題1:鶏卵の殻を割った状態を示している。以下の写真で、将来ヒヨコになる部分はどれか?
解説と解答:
この問題は、私主催の勉強会の余興で出題したが、誰も正解できなかった。Aは卵白、Bはカラザ、Cは卵黄、Dは胎盤(=胚)である。胚盤は直径3~4㎜の薄く白い円形で、ここがヒヨコへと生長する部分である。卵黄はヒヨコと生長する過程で必要となる栄養貯蔵庫である。卵白は内部が乾燥するのを防ぎ、細菌侵入を防ぐ意味がある。Bのカラザは卵黄が端に片寄らないようにするためのヒモで2本ある。(ヒトなどの哺乳類は、胎児は母体胎盤を通じて酸素と栄養を供給されているので、卵黄に相当するものは必要ない。)
胚を乾燥や外部の衝撃などから保護する意味から、胚は、羊膜に覆われ守られる。すなわち始めは胚は、羊膜と卵黄膜という2つの膜間にあったが、胚の生長とともに羊膜も広がり、胚の一部と卵黄が連絡する形になる。
2)三胚葉への分化
受精卵が次第に分割され、三胚葉の段階にまで分裂すると、一体だった胚の一部が陥凹し、それが次第に深くなってパイプのように穴が貫通するようになる。パイプの外側を形成するのが外胚葉で、パイプの内側を形成するのが内胚葉である。その間にあって空間と接触しない部分を中胚葉と分化する。
①内胚葉
多細胞動物が生まれてから、受精卵が分裂し原口のもとになる凹みを形成。凹みは次第に深くなり、パイプのように体の中を突き抜ける。このパイプの内側を内胚葉とよび、外部から必要な物質を取り込み、不要なものを吐き出す。すなわち消化管と排泄器官に発達する。肺もチューブの内側にあるから内胚葉に属する。
②外胚葉
パイプの外側部分を外胚葉とよぶ。外胚葉は、個体の外側を覆う層で多細胞化の初期段階で形成される。皮膚の表皮・毛髪などの感覚器を形成し、また一部が発生過程で溝状に陥没し神経管を形成する。神経の大元という意味からか、脳も外胚葉から進化する。
③中胚葉
外胚葉と内胚葉と繋がり、外界とは直接繋がらない器官を中胚葉とよぶ。中胚葉が進化したことにより、体腔内に複雑かつ高度な臓器を発達させることが可能になる。筋、骨格、皮膚の真皮、結合組織、尿道、心臓・血管、血液や脾臓などを形成。
2.太極図にみる三胚葉
1)太極図のいろいろ
問題2:以下の3種類の太極図で間違いはどれか?
解説と解答:太極図は、今から3000年前の易經で生まれたもので、陰と陽が循環している状態を示している。現在では時計回りと反時計回りの2パターンあるが、どちらか正しいか諸説ある状況である。ただ、縦向きでも横向きでも構わず、色も必ずしも黒と白の2色でなくてもよい。すなわち全部正解となるが、次に述べる理由からB(時計回りの回転)を間違いとする考え方がある。
2)太極図に隠された三胚葉
韓国旗は横向きの半時計回りで、赤青の2色が使われている。ところで「閃く經絡」での太極図も韓国国旗と同様の構成になっているが、陰と陽がのびのびと活動している様子を表しているかのようだ。陰と陽はぐるぐると回転し、かつ混じり合わないこことが重要ポイントである。
陰を内胚葉、陽を外胚葉とすると、陰陽の境界線が中胚葉だと著者のダニエル氏は説明した。 内胚葉と外胚葉を分け隔てると同時に、バラバラにならないように結合しているもの、これは広義の膜すなわちファッシアの機能に他ならない。