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柳谷素霊の「五臓六腑の針」と私の刺針技法の比較

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 1.「五臓六腑の針」の内容

柳谷素霊の著書の中で、「秘法一本針伝書」は異質な存在で、単に刺針ポイントを提示するだけでなく、刺針体位、患者の力の入れ具合や呼吸、刺針手技、響きについ具体的に書かれている。そこに古典的要素はない。基本的に、一つの症状に対する効果的な刺針について解説しているが、以下に述べる五臓六腑の針の意味するところは意味深である。

本書に提示された図に若干説明を加えたものを示すとともに、内容を一覧表に整理しみた。
なお図では、膈兪、脾兪、腎兪には、あえて一行の名を付け加えた。柳谷は標準経穴位置(外方1.5寸)より内側(外方1寸)を取穴しているためである。

1)胸腔疾患の治療穴として膈兪を挙げているが、膈兪は胸腔内疾患と腹腔内疾患の境界で、横隔膜の位置である。膈兪の刺針は、胸腔臓器というより横隔膜に対する治療穴らしい。体位は坐位にて上体を脱力させ、横隔膜に刺激をもっていく。

2)骨盤内疾患の治療穴として腎兪を挙げているが、腎兪の位置は腹腔内疾患と骨盤内疾患の境界である。腎兪は腰部深部に響かせるということで、骨盤内疾患の治療としてはあまり適当だとは思えない。骨盤内臓治療としては八髎穴を使った方がよい。
(図は秘法一本針伝書掲載の図をベースしているが、ヤコビー線の位置がL2~L3になっているので不正確。大腸兪の高さとヤコビー線が同じにすべき)

3)腹腔内疾患として脾兪を挙げている。脾兪はまさしく腹腔内疾患領域のほぼ中央であって、まさしく代表穴といえる。

 

2.刺針体位について

現在の鍼灸治療では、仰臥位や伏臥位(ただし腹腔内疾患では伏臥位も可)で施術することが多く坐位での施術は少ないようだ。それは交感神経優位の状態を、副交感神経優位に変化させること換言すればストレスや不眠に対する治療を行う機会が多いからだろうと思う。しかし柳谷の五臓腑野施術体位をみると、坐位や長坐位で行っている。これらの体位では身体を支えるため体幹筋は緊張態にあるので、刺針に際しては響きやすくなることが関係していると思った。


3.代表穴の針響

筆者が鍼灸を勉強し始めて二十年くらいは、柳谷素霊の「五臓六腑の針」のことを、それほど真剣に検討してこなかった。その一方で、鍼灸臨床経験が増えて、背部治療穴で使う頻度の高い穴が自然と決まってきたが、この段階までくると柳谷素霊の「五臓六腑の針」の言わんとするところをある程度理解できるようになると同時に、自分だったらこうするとの意見をもつようになる。たとえば横隔膜症状→督兪、胃疾患→外魂門(代田文誌の胃倉)、腸疾患→外志室とうように。
 
1)督兪    
 Th6棘突起下外方1.5寸と定めているが、実際には外方1寸の方が響かせやすい。伏臥位でも剤でも響かせることができる。手技が難しいのが難点。
☆筆者ブログ:横隔膜に響かせる針、督兪・膈兪の刺針と理論 2013.12.20 参照
 
2)胃倉
 外志室刺針と同じ要領で側腹位にて実施。起立筋と肋骨間に深刺。私がこの臨床的使い方を発見したのは、30年ほど昔で、外志室の刺針技法を腰部ではなく背部で行ったらどうかと考えた。すると中背部広汎に針響を得ることができた。肝兪の外方だから魂門で、それを側腹位で刺針するのだから外魂門だと自分で命名した。
代田文誌は胆石疝痛の激しい痛内臓痛に、胃倉に灸するとよいと記述しているが、この外魂門が代田のいう胃倉のことかもしれぬと思うまで10年ほど要した。以前、胆石疝痛で入院した患者に対して、外魂門に置針して数分後、鎮痛に至った治験がある。
☆筆者ブログ:胃に響かせる針、胃倉の刺針技法と理論 2013.9.1  参照
 
3)外志室
 側腹位にて、L2脊椎の高さで、起立筋と腰方形筋の筋溝を刺入点として横突起方向に、深刺刺入。腰仙筋膜深葉刺針になる。腰部のほか、下腹部、大腿外側(大腿神経刺激)や大腿内 側(閉鎖神経刺激)に針響をもってくることもできる。腰大腿痛の患者に対して使用頻度が高く、腸疾患に対する使用頻度は高くはない。腸疾患の治療穴としては八次髎穴が本スジだろう。
☆筋々膜性腰痛に対する運動針と外志室刺針 2006.3.10  参照

 


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