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肩関節ADL制限の鍼灸治療  その2 結帯動作制限

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1.結帯動作制限と障害筋
   
エプロンやブラジャーをする動作または排便後にお尻を拭くという動作を結帯動作という。これは上腕骨の伸展+内旋+外転の複合動作になる。
関節や関節包の障害を別にして、結帯動作において棘下筋の伸張が不十分であれば、肩関節の伸展制限を生じ、烏口腕筋の伸張が不十分であれば肩関節の内旋制限が生じることが判明ししている。他に小円筋に問題があるとする見方もある。


2.棘下筋の障害

1)棘下筋と肩関節伸張制限
      下写真は結帯動作時の棘下筋の状態を示している。上腕骨頭は内旋するので、上腕骨頭小結節に停止する棘下筋は伸張を強いられている。棘下筋の圧痛点を押圧しながら、結帯動作を行わせると肩甲骨内可動域が改善されることが多い。

 

2)天宗運動針の技法
   
針は天宗付近の圧痛硬結を数カ所発見し、そこに置針した状態で結帯動作の運動針をさせるとよい。一方、棘下筋のトリガーが活性化されると、上腕前面~外側の放散痛を生ずることが知られている。上腕外側痛は、棘下筋のトリガー活性化に由来する場合もあることを示してる。患者は痛む上腕外部を触ることはできるが、棘下筋を触れないので、患者自身は肩の前方が痛むと訴えることが多い。
 

3)私の天宗運動針時の体位の工夫
   
シムズ肢位で手掌をベッドにぴったりとつけ、肘を90°屈曲位にする姿勢にする。ついで天宗圧痛点に置針した状態で、肩を回す(=肘を円運動させる)ようにすると肩甲骨が上下内外に動き、棘下筋に適度な刺激を与えることができる。どの程度の強さで運動鍼をするかの刺激量を患者自身で決めることができるメリットがある。我慢できる痛みの範囲内で10回~30回、回すよう指示する。

 

2.烏口腕筋と肩関節内旋制限
     

 

※烏口腕筋と天泉穴についての私見

以前の経穴テキストには、<天泉穴は腋窩横紋前端から曲沢に向かい下2寸で、烏口腕筋の筋上>とあったので本稿はこれに準じた。すなわち天泉は烏口腕筋刺激点として独自性があった。現行の天泉は腋窩前縁から曲沢に向かうこと下方2寸で、上腕二頭筋の長頭と短頭の間になり、烏口腕筋は無関係となってしまった。天泉も烏口腕筋も比較的マイナーな筋であるが、肩の結髪動作制限筋として臨床的重要性をもつ。ちなみに、烏口腕筋、上腕二頭筋、上腕筋は、ともに筋皮神経支配。またアナトミートレインでも深層フロントアームライン上にあるという共通点がある。

肩を90度外転・肘90外転、患者の指で自分の耳をつかむ姿勢をさせると、烏口突起と上腕内側を結ぶ筋を触知できる。これが烏口腕筋。上腕内側が引きつれて結帯動作が出来ない患者には、ここを揉むように指導するとよい。
 

2)烏口腕筋の触知

上腕内側が痛んで結帯動作ができないのであれば烏口腕筋の伸張痛を考えるが、患者自身は烏口腕筋の圧痛の存在を意識していないので、術者が烏口腕筋を押圧すると痛くて驚くことが多い。。治療は、術者の母指と示指・中指で烏口腕筋をつまみ上げるようにして伸張させ、圧痛ある天泉に刺針する。
烏口腕筋のトリガー活性時には、三角筋前部線維や大胸筋あたりに圧痛があるように感じる。


3.小円筋

※肩貞と臑兪の位置についての私見
標準的には肩貞は腋窩横紋の後端から上1寸にとり、臑兪は肩甲棘外端の下際陥凹部にとる。しかし本稿では肩貞を腋窩横紋の下で大円筋上にとり、臑兪を腋窩横紋下で小円筋上にとっている。その方が臑兪は結帯動作の治療穴に、後述する肩貞は結髪髪動作の治療穴として理解しやすいため。

1)小円筋の機能
     
結帯動作制限には、小円筋も関与するという見方もある。小円筋 は肩甲骨の後面外側縁上部の1/2に起始し、上腕骨大結節の下部に停止する。棘下筋は上腕を背中側に引く作用なのに対し、小円筋は上腕を背 中側に引くことに加え、上腕外旋作用もある。小円筋上の経穴には肩貞(肩関節の後下方、腋窩横紋後端の上方1寸)がある。

 

2)臑兪刺針の体位
   
臑兪への刺針は単に坐位や伏臥位で刺入するとスカスカするのみで筋に当たったとの手応えがない。椅坐位で肘をテーブルにつけて下向きに力を入れ、小円筋を緊張させた状態で筋硬結に刺入するとよい。

 

 

 

 

 

 


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