1.結髪動作あるいは上腕外転の制限因子と治療方法
結髪動作とは、頭髪を後頭部で結ぶ動作のことで、肩関節の屈曲+外転+外旋の複合運動になる。それに加えて肩甲骨の上方回旋の合成動作。肩甲骨の上方回旋運動制限(僧帽筋上部繊維や前鋸筋の筋収縮力)および肩甲骨と上腕骨を結 ぶ筋の過収縮(肩甲下筋や大円筋の伸張不足)が問題となる。
2.肩甲下筋・大円筋刺激
1)大円筋刺激
※上図で肩貞の位置は本稿独自のもの。標準肩貞はやや腋窩に近い小円筋上に取穴するが、そうなると標準臑兪の臨床的意義が不明になる。ゆえに本稿では、小円筋(臑兪)は結帯動作時に施術、大円筋(肩貞)は結髪時に施術とパターン化して捉えてみた。
患側上の側臥位で、できる限りの結髪動作体位をとらせる。すると肩甲骨が下方回旋して肩甲骨下角が外に出てくる。この状態で肩甲骨外縁~肩甲骨下角外縁に位置する大円筋に刺針。その状態で、術者は患者の肘を少しずつ押すことで上腕の外転角を強める運動針を行う。
☆ネコの背伸びポーズにての大円筋刺針
下図はヨガで「ネコの背伸びポーズ」、通称「ネコストレッチ」といわれるもの。四つん這いになり、尻をに引くようにする。この肢位で大円筋刺針を行う。
2)肩甲下筋刺針
肩甲下筋拘縮の放散痛は、後方四角腔部に出現する。肩甲骨内縁(膏肓)から肩甲下筋刺針する。それには治療側を上にした側臥位にさせ、膏肓あたりから肩甲骨と肋骨間に向けて、3寸針を使って5~7㎝水平刺する。トリガーポイントに当たるとズンという針響が得られる。トリガーポイントに当たらないと響かないので、予定していた響き得られるまで刺針転向法を行う。
患側上の側臥位にさせ、肩甲下筋に刺針したまま、刺激量過剰にならないよう注意しながら、ゆっくりと肩関節の自動外転動作を行わせると、さらに効果が増す。これには肩甲骨-肋骨間のファッシア(筋膜)癒着を剥がす意義をもつ。