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Channel: AN現代針灸治療
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副鼻腔炎に歯周炎が合併した患者に対する鍼灸治療 (73歳、男性)

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1.副鼻腔炎症例の鍼灸治療

3年前副鼻腔炎となった。耳鼻科で治療を受けると改善するが止めると元に戻ることを繰り返していた。左挟鼻穴を中心とした数カ所に置鍼5分間+糸状灸3壮、自宅でせんねん灸実施。この治療を開始すること数回で鼻の通りは改善し、治療5回目頃から左四白周囲の隆起も減少した。
なお副鼻腔炎でよく用いられる攅竹や上星・顖会穴に圧痛反応はなかった。

挟鼻部分は、三叉神経第1枝が走行しているが、挟鼻にきちんと刺激すると即効的に鼻が開通する。このことは少なくとも鼻甲介を刺激し、充血の程度を減らしその体積を減らしたためだと考えられる。鼻汁がでやすくなるのは、三叉神経第1枝支配である副鼻腔を刺激することで、繊毛運動が活発化したためだろう。
※挟鼻穴の位置:鼻翼の上方の陥凹部で鼻骨の外縁中央を中心とした圧痛点

 


2.副鼻腔炎と歯周囲炎との関連
 
この患者は2ヶ月に1回、歯科でプラークコントロール治療を受けていているが、歯科医に自分が副鼻腔炎であることを告げると、X線撮影され、左上歯の歯槽骨が不鮮明になっていることを観察し、副鼻腔炎は左上肢歯の歯周病から来ているのではないかといわれた。
本患者は現在歯症状はなかったが、このことを患者から聴いたので、頬部を押圧して左上顎の奥歯あたりの圧痛腫脹を調べると、銀冠処置していた第一小臼歯の歯根に相当する部の歯肉に圧痛を発見できた。ただし鍼管で歯を叩打しても痛みは出現せず、歯肉の腫脹もほとんどなかった。要するに歯周囲炎の程度は軽かった。

私はこれまで副鼻腔炎と歯周囲炎は別個の疾患だとの認識でいたが、上歯臼歯の歯根末端は、上顎洞に非常に接近している(上顎洞に歯根が入り込んでいる場合もある)。上顎骨は比較的、海綿骨という骨質が「疎」であるため、細菌が広がりやすい傾向にある。この解剖学的特徴により次の2つのケースが起こりえる。
 歯性上顎洞炎:大臼歯部の虫歯を放置して溜まってしまった炎症が上顎洞内に入り込む
 鼻性上顎洞炎:上顎洞内にできた炎症が原因で、奥歯が痛くなる          

 

3.歯周炎の鍼灸治療の併用

歯周炎の標準治療は、歯肉のブラッシングおよび歯科での歯石除去とされる。歯周病にならないよう努力している人も少なくないが、大人の約8割、小児でも5割が歯周病だとされる。根本原因は免疫力の低下にあるといわれるが、そうなると却ってどうしたらよいか、わからなくなる。

歯肉炎の治療には、歯肉のマッサージが効果あるので、これと同じように考え、圧痛ある歯肉に対して数カ所に5分間置鍼した。なおこれまで実施していた挟鼻中心の圧痛点への5分置鍼と糸状灸治療は継続して実施。
3日後再来。左第一小臼歯の歯根にあたる歯肉の圧痛はかなり減少した。鍼灸1回治療でで歯肉の圧痛が減ったので、歯科での歯周病治療は当面延期することとなった。

 

4.女膝灸の適応症 『名家灸選』
歯槽膿漏といえば『名家灸選』には女膝の多壮灸が効くと記されている。本書には女膝は、歯肉が腫れて出血しているものに適応があり、その作用は排膿を促すことにあると書かれていて、本症例の適応外と思えるので使用していない。
※女膝穴位置:足の後かかとの赤白肉の際

 


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