1.症状
ゴルフ肘ゴルフクラブのインパクト時、効き手の肘内側が痛む。 上腕骨内側上顆部の運動時痛
2.病態
1)ゴルフのスイングは、まず前腕を回外してクラブを持ち上げる。次にクラブを振り下ろすが、その際に利き腕(多くは右)の前腕は回内傾向になる。これは円回内筋が収縮し、その起始である上腕骨内側上顆に牽引ストレスが働くことになる。
※長掌筋の機能
手根部を曲げ,同時に手掌の腱膜を引く働き をする。ヒトでは必要ないので退化している。
サルが木の枝にぶら下がったり、ネコが随意に 爪を出すのは、長掌筋よる。
※前腕が回内してしまう理由として、クラブの右手の握りで、母指。示指・中指を曲げてクラブを持つ習慣にあるという。この握りでクラブを振ると、前腕は回内してしまう。環指・小指に力を入れてクラブを握ると、自然と中指も曲がるようになる。
2)ゴルフクラブのスイングは、体幹のひねり(胸椎の回旋と骨盤のひねり)を効かすべきだが、腕だけでクラブを振るなら、前腕の回内を入れてインパクトしてしまう。
3.針灸治療
1)手関節屈曲は、主に橈側手根屈筋と尺側手根屈筋の収縮による。なお橈側手根屈筋のみ収縮すれば手関節は橈屈し、尺側手根屈筋のみ収縮すれば手関節は尺屈する。これら両筋は上腕骨内側上顆を起始とし、筋緊張負荷が過多になれば運動時痛を生ずる。
橈側・尺側手根屈筋の圧痛点を見い出すには、被験者の手を掌屈させ、橈側・尺側手根屈筋するよう指示する一方、検者はこれをさせないように力を加えることで、筋収縮状態に誘導する。この姿勢で筋中の圧痛点を見い出して刺針するという方法が成書に記載されていた。
これは前腕屈筋を収縮状態にしていて施術する方法になる。
上腕骨内側上顆部の少海には強い圧痛がみられるので、刺針したまま手関節屈伸の運動針を行う。
2)仰臥位で前腕下にマクラを入れ、手関節を過伸展状態にする。この姿勢で、橈側・尺側手根筋上の圧痛点に刺針するという方法もある。これは前腕屈筋を伸張させて施術する方法になる。
この方法は、自宅で行う予防エクサイズとしても応用できる。
健側の指で、患側の手掌をつかんで、手関節を背屈するのがよい。
指をつかんで手関節を背屈させなら、浅・深指屈筋のストレッチになってしまうため。
3)円回内筋刺針
被験者の腕を回内するよう指示、検者はこれに抵抗を加える。その状態で円回内筋の圧痛を調べる。円回内筋は上腕骨内側上顆と前腕橈骨外縁中央を結んだ位置にある。代表穴は孔最。
※孔最:前腕前橈側、太淵穴の上7寸、尺沢穴の下3寸腕頭骨筋上。深部に円回内筋がある。