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急性足関節捻挫には局所強刺激単刺+テーピング Ver 1.5

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1.捻挫の概念

関節捻挫とは、関節が一瞬ずれ、次の瞬間には元に戻るという状況である。関節が元に戻った後に来院するので、関節包や靱帯など、関節支持組織の損傷ということになる。足関節に好発する。
※今回は、急性足関節捻挫を説明し、次回は慢性足関節捻挫をとりあげる。

2.捻挫の好発部位

1)足関節外側捻挫(内反捻挫)

足関節の靱帯損傷は、外果縁(前距腓靱帯、踵腓靱帯)、と内果縁(三角靱帯)に起こりやすい。足関節の外側靱帯には前距腓靱帯・踵腓靱帯・後距腓靭帯がある。これらの靱帯損傷を総称して外側靭帯損傷とよぶが、外側捻挫はとくに前距腓靱帯損傷が多い。
2度(詳細後述)以上の重度の靭帯損傷があると、前距腓靭帯+踵腓靭帯損傷の形となることが多い。


2)二分靱帯捻挫

踵骨から舟状骨に、また踵骨から立方骨に靱帯が分かれしてついているので、この二つの靭帯を合わせて二分靭帯とよぶ。二分靭帯捻挫は、外側捻挫とほぼ同様の機序で発症する。二分靱帯はまれに剥離骨折を生ずることもある。
日常診療においては、足関節捻挫の最多好発部位である前距腓靭帯と部位が近いので、見逃しやすく、正確な触診による圧痛点(外果のやや前方の圧痛)の把握が診断に重要である。二分靱帯捻挫は、後遺症なく治るとされている。


3)足関節内側捻挫(外反捻挫)

足関節の外反捻挫は、前記の内反捻挫と比べて少ない。足の内果と足根骨は4本の靱帯で結合され、これを総称して三角靱帯と称する(4つの靱帯個々の名称は記憶する必要なし)。
三角靱帯は強靱なので、大きな捻挫を起こすことは稀である。一方、強力な力を受けた場合は、剥離骨折を生じることもある。

 
3.捻挫の自然経過と治癒過程

1)炎症過程(急性期) 
捻挫では関節包靱帯を損傷し、関節包靱帯の内面の滑膜層に炎症性の腫脹が発生する。腫脹の中身は滑膜層からの分泌物で、これが関節包の中に充満すると関節の可動範囲が狭まり、疼痛が発生する。
関節包靱帯やそれを補強する側副靱帯などが部分断裂を起こすと、その部分より出血を生じ、見た目にも青黒く皮下出血斑が広がっているのが確認できる。そのため、いち早いRICE処置が必要となる。


2)消炎期(治癒期)

3~4日の急性期が終わると、腫れも落ち着き、各組織が移動を始めて新しい組織を生み出す準備を開始し、組織修復が始まる。この頃になると、最初の炎症期のような激しい痛みはなくなる。この組織修復の原動力となるものは腱に含まれるコラーゲンであるという。


3)再生期(修復期)

腫れが引き、治癒の準備ができると組織は再生と修復を始める。筋肉や腱、靭帯などの組織は、受傷後3~4日して瘢痕組織を形成してしばらくの間、補強され、数ヶ月後にはほとんど元の組織に回復する。この瘢痕が存在する時期は、捻挫を再発しやすい時期でもある。この時期に捻挫を繰り返して瘢痕組織を傷つけると、捻挫が慢性化してしまう。
また受傷後の毛細血管はケガから2~3日で修復を開始し、新しい血管を形成していく。この段階は約4ヶ月も続くことがある。
新しい組織が強い構造(ケガの前の正常な構造配列)を形成するためには、ある程度のストレス(運動)が必要なことから、適切なリハビリが重要になる。


4.重症度分類と処置法

1)第1度

病態:靱帯断裂を伴わない軽度または微小な捻挫。
症状:ある程度の腫脹を伴う軽度の圧痛。
治療:安静とサポーター

2)第2度

病態:不完全または部分断裂を伴う中程度の捻挫
症状:明らかな腫脹、斑状出血、歩行困難
治療:膝下歩行、3週間のギブス固定

3)第3度

病態:完全な靱帯断裂
症状:腫脹、足関節不安定性、歩行不能
治療:ギブス固定または手術


5.針灸治療

1)針灸の適応とテーピング固定

針灸治療は第1度捻挫に著効する。第2度にもある程度適応がある。第3度には適応がない。要するに痛いながらも何とか歩けるものが適応になる。針灸治療自体は鎮痛消炎目的で行うので、ごく軽い捻挫を除き、治療院でも関節固定を行うべきである。とはいっても捻挫の固定は整形外科や整骨院が本業とするところなので、針灸院レベルではテーピング固定(伸縮性のないテープを使用)を行う程度となる。逆にいえば、テーピング固定しても歩行困難な患者は針灸適応外といえる。針灸治療だけで固定をしない場合、痛み自体は間もなく消退するが、靱帯がゆるんだまま炎症が治まった状態(これを慢性捻挫とよぶ)に移行しやすい。慢性捻挫では、一定の負荷の持続で、関節部が腫脹し痛みを訴える。また捻挫を起こしやすくなる。


2)針灸治療法

現代医学においても、打撲・捻挫などの外傷の時に、圧痛点に局所麻酔を打つと治癒が促進されることが知られている。痛みを放置した状態→反射的に筋肉の緊張が強くなる→交感神経の緊張が続き、腫れや血行障害が続く、ということで局麻注射は痛みの悪循環を遮断する意味がある。
   
圧痛点に針灸治療を行う意義も同様で、鎮痛→筋緊張緩和→交感神経緊張緩和→血行促進→自然治癒力増強という機序が作用する。

代田文彦は、「捻挫時の圧痛点刺針は、骨膜に至るまで深刺した方がよく、その理由として骨膜は広汎に響きを与えられるので、刺針効果の及ぶ範囲が広くなる」と話していた。針灸治療自体は容易で、捻挫部の圧痛点を数カ所みつけ、そこに強刺激の単刺法を行う。結果として阿是穴治療になることが多い。
刺針時の患者体位としては、捻挫部を広げて靱帯伸張させて刺針すると針が骨間の凹みの底に至りやすくなり、針の響きも広範囲になる。

 

 



3)第Ⅰ度の急性足関節内反捻挫の局所治療奏功例(2022.8.9 柏原修一氏報告)

患者:64歳、男

主訴:右足首の内反捻挫。

現病歴:2022.8/6に趣味のランニング中に道路の凹凸に足をとられて右足首の内反捻挫。

所見:内出血、発赤、熱感、腫脹なし。内反動作で右外果下部に動作痛および圧痛。重症度分類はⅠ度と推定。

治療:第5期針灸奮起の会 「下肢症状の治療技術」に基づきⅠ度の急性捻挫と診断し、右外果下の圧痛点5カ所に寸3-1で単刺。半米粒大の艾炷2壮を9分透熱灸。その後キネシオテープ3枚で固定。通常歩行動作で痛みのないことを確認。

考察:本症例は受傷後3日目の軽度急性捻挫と診断し、単刺と9分灸で消炎措置を行い、キネシオテープで固定して様子をみてもらうこととしました。本症例は、Ⅰ度の足  関節内反捻挫といことで、鍼灸はよく奏功するが、ここで必要となるのが、捻挫の重症度区分を見分ける知識である。Ⅰ度であれば歩ける。Ⅱ度であれば立てるが歩けない。Ⅲ度では立つこともできないという区分が役立つだろう。


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