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経穴名からみた五神の理解

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五神の意味をツボ名を手がかりとして昔の中国人が考えた内容を調べてみることにした。なお五神とは五臓色体表の一項目で、神・魄・魂・意・志の精神のことをいう。いろいろな見解がある中で、シンプルであることを心がけた。

1.「神」の名がつけられた経穴   
古代中国人が考えた「神」は人間を超越した絶対的存在ではなく、万物のも非物質的側面をさしている。

1)脳
 大脳皮質機能と関係し、人間を理知的存在ならしめている。
①神庭(督):前頭部、前額髪際。脳は元神の府であり、「庭」は門庭(前庭)
②本神(胆):前頭部、神庭穴の傍。脳は人の根本。
 
2)心
心臓の前壁には神堂と神蔵はあり、心臓の後壁の肩甲背部には神堂がある。現代 いう心臓のポンプ機能と同じ。
古典では<心は神を宿す>と記している。これは心拍に変化をもたらすような感(喜怒哀楽)は、「こころ」により行われるとする意味だろう。
①神堂(膀):肩甲間部、心兪の傍。心の精神である「神」を蔵する部。
                 「神堂」は心兪の外方にあって膀胱経背部兪穴の一つになる・
②神蔵(腎):前胸部で紫宮の傍。霊墟の上にあり、神霊(心)を守る。
③神封(腎):前胸部で膻中外方。「神」=心、「封」=境界線。
④神門(心):手関節部。心経の原穴。「心」の臓に関係する。
 
3)先天の気=遺伝子
①神闕(任):臍部。臍は神の出門であるとされる。へその緒を伝い、胎児は滋養され、親から神(=先天の気、遺伝子)が伝わる。


2.「魄」「魂」「意」「志」の名がつけれた経穴
五臓に対応して一穴づつあり、背部兪穴とよばれる。背部兪穴は背部膀胱経上にあるが、それぞれ独立して五臓と関係し、その診察と治療に用いられる。 五臓兪穴の外方1.5寸にある背部膀胱経二行線上には、それぞれの内臓が蔵する 神(精神要素)の名称がつけれた経穴が並んでいる。
 

1)五神名のついた膀胱経二行線にある経穴
① 肺:魄戸(膀) 
 肺兪の傍にあり肺は魄を蔵する。呼吸停止(気が動かなくなる)して魂がなくなると、白骨死体だけが残る。魄の解字は白+鬼で魂を失った白骨死体。
②心:神堂(膀)
 心兪の傍にあり、心の精神である神を蔵する部。
③肝:魂門(膀) 
 魂とは、気を主どるものである。魂は死ぬと雲の上にのぼる。
④脾:意舎(膀)
 脾兪の傍にあり、脾の精神エネルギーを蔵する。
⑤腎:志室(膀)
    腎兪の傍にあり、腎の精神エネルギーを蔵する部


2)魄・魂・意・志の考察        
  「意」は音+心臓の合成文字で、行動や選択をする際の元となる内的な心の動きを示す。「志」は心臓の上に「之」(=向かい行く)がのった漢字で、心の向かうところ、心の目指すところという意味になる。一方、神・魄・魂は、よく知られている言葉ではあるが、いろいろな意味に使われていて、逆にイメージ漠然としたものになっている。
 
①魂
 生者は当然ながら「気」を有している。死ぬと気が失われるので、動かなくなり五官も働かなくなる。この気を主どるのが「魂」で、魂は雲+鬼の合成したものである。通常ならば魂は雲の上へとのぼって「神」なるのだが、天に上がれず、地をさまよう状況になれば鬼となる。
魂が強くなると、怒りっぽくなるという。これは雲が多い→悪天候→風雨がまるとの自然観察から生まれた考え方だと思われた。
   
②鬼
鬼の正体は判然とせず、「目に見えない何か」ということになる。「鬼」はグロテスクな頭部を持つ人という象形文字。右側のムの字は古字(現在使われなくなった字)で、モノを囲むとのが元の解釈で、そこから私という意味に転じた。人は死ぬと鬼になるとされているが、生前の人とは異なる姿形ということになる。人が死ぬと鬼籍に入るとは、生者の籍から離れ、死んだ人の名簿に入るという意味になる。強い者や大きい者の接頭語として鬼編集長、鬼軍曹などのように、鬼○○という表現があるが、これはわが国独特の表現である。赤い皮膚をして角があり、金棒をもつというのも我が国固有のイメージ。

 

 

③魄

人が死ぬと魂と魄に分かれる。魂は雲の上へとのぼって神となり、魄は白骨死体となり地に留まる。魄は白+鬼の合成した漢字である。白とは白骨死体のことだが、魄もは物質とての白骨死体そのものをさす。魄には、人間の外観、骨組み、生まれながらに持ている身体の設計図という意味もある。

一方、道教でいう「魄」は上述の意味とはかなり異なる。肉体を支配する感である喜び、怒り、哀しみ、懼れ、愛、惡しみ、欲望の7つをまとめて七魄と呼び、これらは肉体を支配する感情とした。通常であれば「魂」が制御しているのでこらの感情はあからさまに表に出ることはないが、魂が消失した状況下の「魄」は制御不能な感情を意味する。


3.「霊」の名がつけられた経穴
五行色体表の「五神」にはないが、魂とよく似た言葉に「霊」があり、霊の名がつられた経穴も3穴みられた。経穴における魂と霊の相違点はどういうものかを探った。  
①霊墟(腎):「霊」は死者の魂のこと。「墟」は土で盛られた高い山。霊墟は前胸部の山のような高いところにあるため。       
       秦の始皇帝が築いた運河。現在の中国の桂林市興安県に現存。
②霊台(督):「霊」は死者の魂のこと。「台」は高く平らな場所。物見台、天文台。        
      この穴位の前面は心臓であり、心臓疾患を治療する。
③霊道(心):前腕の心経上になる。死ねば魂は天に上って神になるという。

   

「魂」は死者の中だけでなく、生者の中の精神的要素を示す場合がある。この場合、”三つ子の魂百まで”(幼いころの性格や気質は大人になっても続く)という表現や、気力や心の活力いった意味にも使われる。
一方の「霊」は、死者の魂といった限定した意味で使われる。とくに死体を埋葬た墓が、霊のいる処とのイメージが強い。これまで死ぬと魂魂に分離する   記した手前、死者の魂という表現は矛盾した表現である。しかしながら病院などで死体を一時保管する部屋を霊安室、死体埋葬所を霊園と呼んだりすることは、間違った言葉の使い方だと騒ぎたてるのも野暮というものだろう


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