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変形性膝関節症に対する膝蓋骨ストレッチの意義 ver,1.1

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1.私の膝OA治療の要点

膝痛患者に対し、仰臥位で股関節を屈曲、膝をできるだけ屈曲させた姿勢にさせ、膝蓋上縁すなわち大腿四頭筋の停止部の圧痛を探る、そして圧痛あれば、圧痛点(=鶴頂穴)に単刺または直接灸3壮程度を行うことで、痛みが改善することが多かった。
この治療理論は、Ⅰb抑制を利用して大腿四頭筋をゆるめるというものだった。ちなみにⅠb抑制とは、筋が外力によって急激に引き伸ばされた際、筋断裂を防ぐための防御機能であって、受容器は。その筋の腱紡錘にある。すなわち四頭筋を緊張状態にして、鶴頂を刺激すると、さらに四頭筋が緊張したので、このままでは筋断裂すると身体が解釈して四頭筋緊張を緩めることになる。

また内・外膝眼に圧痛を認めた場合には、立位で内・外膝蓋に直刺2~3㎝程度の単刺をして関節包刺激をしている。立位にして施術する理由は、立位にすると四頭筋収縮にともない、膝蓋骨位置が高くなり、内・外膝蓋の陥凹に刺針しやすくなると同時に、膝関節包も緊張状態になって、刺針有効性が増大すると予想するため。

ところで最近、61才女性(看護師)の変形性膝関節症の治療を行っている。だいたい週1回ペースで行い、上記の鶴頂灸と立位で内外膝眼刺針で関節包刺激を行うことが多かった。今回は今ひとつ膝痛の治療効果があがらないので、最近覚えた徒手矯正手技を加えてみると、1週間後再来した折、あれは効いたからもう一度やって欲しいといわれたので、その手技を紹介したい。


2.膝蓋骨ストレッチ

1)ためしてガッテンの方法

四頭筋が過緊張して膝蓋骨が可動しづらくなっているのであれば、施術者が膝蓋骨を積極的に上下左右に動かすことで四頭筋を緩める方が、より直接的かもしれない。膝蓋骨-大腿骨の滑走しやすさのきっかけをつくることにもなるだろう。NHKためしてガッテンでは次の内容が放映された。

①膝を完全伸展させてから脱力。膝蓋骨が水平方向に動くことを確認。
②膝蓋骨縁に両手の親指を重ね、膝蓋骨のヘリを押す(上下左右、斜めなど8方向) 。押す時間は1か所につき5秒程度。
③1回のストレッチは3分まで。1日2回が目安

 

 

このような手技療法は、整体治療としてYoutubeなどで知ることができ、これにも種々のバリエーションがある。一般人向けの紹介動画だからか「このような症状の時には、このようにして治す」というパターンが多く、背後にある治療理論についての説明はほとんどないのが残念なところ。もっとも、現在の針灸の発表スタイルも同じようなものだろう。最低でも「なるほど、そういうことか」と共感できるレベルであって欲しいものだ。

 

3.膝蓋骨圧迫テストの意味

実はこの手技の膝蓋骨を押圧しつつ上下に動かす動作は、膝蓋骨圧迫テストと同じことをしているように見受けられた。膝蓋骨圧迫テストの場合、膝蓋骨を動かすことで、患者の感ずる痛みの有無や検査者の指頭に感ずるざらつきを調べている。異常があれば大腿膝蓋関節の異常ありと判断する。かつて膝蓋骨骨膜と大腿骨骨膜をこすりつけた際の痛みだから、大腿膝蓋関節症とくに大腿膝蓋関節の摩耗と判断した。



確かに検者の指頭にかんずるザラツキは、大腿膝蓋関節の摩耗を示すものだが、この関節部に知覚はない。骨膜はなく関節包もないから痛みは感じることはないのであっる。ではなぜ患者は痛みを感ずるのかといえば、周囲筋筋膜の伸張痛による痛みといえる。従って、膝蓋骨圧迫テスト時に患者の発する痛みは針灸で軽減できるといえるのである。NHKで紹介された膝蓋骨を上下に動かす運動は、大腿四頭筋の伸張運動のことで、四頭筋を動かすことで関節包内膜の滑液包から関節滑液の分泌を活発化させることで、ザラツキにも良い影響を与えることができるだろう。

 

 

 


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