2015年1月15日付けで、私は「肩関節の結帯動作制限に対する針灸治療」というブログを発表した。その姉妹編ということで、今回は上記タイトルについて見解を記す。
1.結髪動作制限に対する大円筋・肩甲下筋刺針
筋緊張により結髪動作制限(屈曲+外転+外旋の複合動作)が起こることがある。結髪動作に関係する筋は、肩関節の屈曲筋や外転筋や外旋筋ではなく、それらの拮抗筋の伸張障害が原因となる。
したがってり、伸展筋→三角筋後部線維、内転筋→なし、内旋筋→大円筋・肩甲下筋のに対する刺激が重要となる。とくに経験的には内旋筋である大円筋と肩甲下筋刺激重要で、具体的には後方四角腔を刺針点とし、肩甲骨と肋骨の間に針を入れるように深刺する 。
2.肩貞からの水平刺
後方四角腔(≒肩貞)を刺入点として、針を肩甲骨と肋骨の間隙に刺入すると、針はまず大円筋を貫き、次いで肩甲下筋に刺入できる。肩甲下筋中に刺入し肩甲骨裏面附近に響かせるには、5~7㎝以上の深刺が必要である。トラベルにより、肩甲下筋のTPsは後方四角腔部に痛みを生ずることが調べられている。
3.膏肓からの水平刺
治療側を下にした側臥位をとらせると、肩甲骨が浮き上がり、肋骨との間に隙間が空く。この体位にさせ、膏肓あたりから肩甲骨と肋骨間に向けて、5~7㎝水平刺すると、ズンという針響を肩甲骨裏面に与えることができる。それを患者は、やっとつらい処に当たったと喜ぶことをよく経験する。
最近、私は治療側を上にした側臥位で肩甲骨と肋骨間に刺針し、肩甲下筋を刺激するように治療法を変更した。この肢位では、肩甲骨と肋骨の間隙が広がらず、また針も下から上に向かって刺入する関係から、少しやりにくい。しかしこの肢位では、刺針した状態のまま、上肢の他動的運動を行うよう指示しつつ、肩甲骨の外旋の徒手矯正が行うことができるというメリットがあり、確かにこの肢位での施術の方が治療効果は大きいように感じる。
※伝聞だが最近のMPs研究会の席上、肩甲下筋に対する刺針が、肩の外旋制限に効果あるとの報告があったという。すなわち結髪制限に対して、膏肓水平刺が有効となる可能性が強いといえる。
※肋骨面に対して、肩甲骨の外転の動きにくさは、条口からの深刺で改善できたとの台湾医師の見解を報告済。
4.肩甲下筋停止部運動針
肩甲下筋が緊張して短縮すると、 伸張に制限されて肩関節の外旋制限が生ずる。このような 場合の治療は、肩甲下筋の筋緊張を緩めればよい。肩甲下筋の停止は上腕骨小結節にあるが、この部への運動針を行うと、外旋制限の程度が改善することが多いようである。
私の経験では、これまで肩関節と肩甲骨の接合部に深刺したことはなかった。近 年、自動・他動とも外転90°程度の50才前後の凍結肩を疑った患者だった。この患者は、自動的にも肩関節外旋30度程度の患者だった。仰臥位で肩関節外転90度位にて、この方法 で深刺してみると、スッと外旋80度程度ができるようになった例があり非常に驚いた。と同時に、他動・自動運動とも外転90°程度で、一見すると凍結肩かと思うような例であっても、本刺針が有効となる例があることを知った。