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臓腑の官職 ver.1.1

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古典「素問」霊蘭秘典論では、臓腑の機能は古代中国の官職に例えられている。臓腑の機能は、これだけにとどまるものではないが、官職に例えることで、親しみやすくなっている。臓腑の官職については、これまでにも大勢の人が説明しているが、私も整理してみることにした。
なお官職の説明の最後は、ほとんどが「○○出ず」となっているが、これは出ないという否定形ではなく、どうして出ないことがあろうか、という反語表現であることに留意すべきである。

 
  ①肝    将軍の官                                        
  ②胆    中正の官
  ③心    君主の官
  ④小腸   受盛の官
  ⑤脾    倉廩(そうりん)の官 
  ⑥胃     同上
  ⑦肺    相傅(そうふ)の官 
  ⑧大腸   伝導の官
  ⑨腎    作強(さっきょう)の官 
  ⑩膀胱   州都の官 
  ⑪心包   臣使の官 
  ⑫三焦   決瀆(けっとく)の官 

 
 
1.肝        

将軍の官、謀慮出ず   

肝は「月」+「干」で、干は幹の原字。身体の中心となる幹のことでその重要性が知れる。「謀慮」とは人間の思考のこと。将軍が君主の下で全体を統率するように、肝は身体中央にあって思惟・精神活動に深く係わるとのこと。
肝は木の枝葉のように、のびのびと伸びているのがよく、この状態であれば気を身体中に巡らせることができる。すなわちこれが気合いを入れた状態。
「肝」の機能が失調すると情緒が不安定になる。とくに肝の「疏泄機能」(全身に気を巡らす機能)は人間の精神状態に非常に影響されやすく、ストレスを感じるとすぐに失調すやすい。
  


2.心    

君主の官、神明出ず

「心主血脈」ともいい、血液の運行を制御する意味になるが、より重要なことは、心は君主のように一国の統帥の位置にあり、協調統一的な生命活動を維持するための「神明」すなわち神のような英知を生むことである。


3.脾・胃      

倉廩(そうりん)の官、五味出ず

脾と胃は不可分の関係があって、胃は受納をを主どり脾は運化を主る。内経では「脾と胃は膜をもって相連なる」とあるとあり、脾胃は不可分の関係にあることを指摘している。
「倉廩」は米殻の倉庫、「五味」は気血に化生する源のこと。胃から分泌する津液により飲食物を消化をして気血に変換し、五臓に送り届ける。


4.肺     

相傅(そうふ)の官、治節出ず

「相傅」とは補佐の意味。ここでは君主である心の補佐官のこと。「治節」とは肺の主な生理機能を包括的に説明したもで、肺が呼吸運動を調節することで呼吸が規則的に行われ、同時に全身の気機(昇降出入)が正常に行われて血液の循環も維持され、津液の代謝も管理・調節される。

 

5.腎    

作強の官、伎巧出ず
 
「作強」とは、重労働に耐える強者、「伎巧」とは聡明で智恵にまさり精巧多才なこと。
作強の官とは、腎が他臓器の作用を促進することを意味する。腎のこのような作用は、一口でいえば活力の源で、腎は精を蔵し、髄を生む結果、足腰を強化し、生殖や生長を担う結果である。



6.心包    

臣使の官、喜楽出ず

「臣使」とは君主の代行として、心に代わって喜楽を伝える。

 

7.胆        

中正の官、決断出ず        

「中正」とは不偏の意で、公平、正確の意味を含み、「決断」とは決定、判断のこと。公平中立な立場の役人である裁判官で正邪を分ける役割。腸道と膀胱中のかすや排泄物とは異なり、胆汁はけがされていない。ことから「胆は清浄の腑なり」ともよばれる。
※肝は計画、胆は実行され、戦術の決断は、胆に依拠して初めて下される。

 

8.小腸   

受盛の官、化物出ず
 
「受盛」とは、受け入れ器に物を盛ることで、予算配分する役人のこと。「化物」とは、消化して変化させる意味で、胃が消化し脾が吸収した飲食物の残渣の中から、さらに有用なものを吸収する一方、不要な水分を膀胱へ送って小便とし、不要な固形のかすを大腸に送り大便とする。小腸の機能が失調すると、これらの分別が不十分なまま大腸に送られ、下腹部痛や下痢などの原因となる。

 

9.大腸   

伝導の官、変化出ず

「伝導」とは、大腸が糟粕(しぼりかす)を輸送する通路。「変化」とは、糟が変化して糞便となって体外に出し、腸内にとどめないこと。。
胃で消化したものが小腸で更に消化吸収され、その糟粕が今度は大腸に集められ、糟粕を糞便に変化する。
大腸が失調すると、腹鳴や下痢や便秘といった排泄障害がみられるようになる。

 


10.膀胱    

洲都の官、津液蔵す

「州都」の原意は中州(川の砂州)に住居し得る場所で、ここでは膀胱が、水(小便)を貯蔵し、一定量集まると排出することをコントロールする、これらを管理する地方(体の下部にあるので)の長官。
なお膀胱と表裏をなすのは腎で、小便は、腎の気化作用により作られ、膀胱に送られる。ここでの気化作用とは、気が変化して水になるという意味。
   

11.三焦    

決瀆(けっとく)の官、水道出ず

「決」とは、疏通の意である。「瀆」とは溝で。「決瀆」とは水道を疏通すること。三焦は溝を切り開き水を流す官吏に例えらる。体内の水液を上下に流通し、体外に排出することを管理する。上焦で病気を治せないなら、水は高原で氾濫する。中焦であれば水な中?に滞留する。下焦ならば水は二便で乱れる。

 


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