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居髎と環跳の位置と臨床運用  ver.1.1

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居髎や環跳は、文献により場所が相当違ってくるが、文献的にどちらに正統性があるかを問うよりも、針灸臨床での使い道という観点から整理した方が、実りあるものになるだろう。

1.居髎
 
居髎の「居」とは蹲踞(そんきょ)の「踞」と同じで、尻を踵の上にのせること。「髎」とは骨のすきま。要するに正座をした時にできる下腹と大腿間にできる隙間のこと。本間祥白著『図解針灸実用経穴学』によれば、「居髎(胆)は上前腸骨棘の縫工筋付着部の後方、大腿筋膜張筋の付着部、圧して痛むところ」と記載されている。
 この居髎の解剖学的特徴は、鼠径靱帯下に大腿外側皮神経が通過する部であり、神経絞扼障害の好発部位になると思われる。      
 

(別説)居髎の位置は、大転子と上前腸骨棘を結んだ中点とする説もあって、この方が主流だろう。何といっても東洋療法学校協会教科書での居髎はこの位置。
この取穴では、中・小殿筋緊張緩和を治療目標としているようで、この使い方は納得できるものである。しかしながらこの位置に居髎をもっていくと、日本流環跳(後述)とだぶる結果となり、都合上が悪くなる。この部位は日本流環跳に譲ることにした。



 

2.環跳

環跳(胆) は、「環」は丸いことで股関節回転軸のこと。歩行時、とくに跳躍のような股関節を大きく可動する時に動くことを示している。この語源から、股関節裂隙~大腿骨頭あたりに穴位があることが予想できる。環跳の位置は大きくわけて日本式と中国式に分類できる。日本式は大転子の前方にとるのに対し、中国式は大転子の後方である。「困学灸法」では、側臥位で患側大腿を体幹にできるだけ近づける姿勢で取穴する旨が描かれている。
環跳では正座位すなわち股関節屈曲90°位で鼠径溝のつくる皺の外端を取穴するのに対し、環跳は股関節最大屈曲位で鼠径溝のつくる皺の外端を取穴するという違いがあると思われた。

1)日本式環跳

上前腸骨棘と大転子の頂点とを結ぶ線を3等分し、大転子の頂点から3分の1のところに取る。この部位は前述した居髎取穴の別法によく似ている。中・小殿筋刺針である。

中・小殿筋刺針は、単に側臥位で深刺するよりも、横座り位置で深刺行うと非常に効果的な刺針になる。それは硬く緊張した中・小殿筋が筋緊張真っ最中だからである。
 上図のような横座り位になると、重心が右になるのでこれに対抗するため上体を左にひねる。その結果、中・小殿筋に強い収縮が必要となる。その場合、中・小殿筋のコリをゆるめるには、横座り位にして刺針すると効果が高い。


2)中国式環跳

仙骨裂孔(督脈の腰兪)と大転子の頂点とを結ぶ線を3等分し、大転子の頂点から3分の1のところに取る。 

中国流環跳の取穴は、坐骨神経ブロック点とよく似ている。坐骨神経ブロック点は、側腹位にせしめ、上後腸骨棘と大転子を結んだ中点から直角に3㎝下った処にある。坐骨神経ブロック点から直刺深刺すると、梨状筋→坐骨神経と刺激できる。

3.まとめ

①居髎は上前腸骨棘の内縁で、縫工筋の上前腸骨棘起始部にとる。その意義は、正座した際にできる鼠径溝外端で、大腿外側側神経の絞扼障害の改善。
②日本式環跳は、側臥位にして上前腸骨棘と大転子を線で線び、大転子寄りの1/3の部にとる。中・小殿筋緊張の改善を目的として刺針する。治療効果不足の場合、中小殿筋を強い収縮状態にすることになる横座り位で環跳から深刺すると治療効果が高まる。
③中国式環跳は、坐骨神経ブロック点とほぼ同じで、上後腸骨棘と大転子を結んだ中点から3㎝直角に下ったところにとる。梨状筋症候群や坐骨神経痛で用いる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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