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メイン症候群と上殿皮神経痛の針灸治療の違い

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針灸臨床治療で常見疾患の一つにメイン症候群がある。本疾患は上部腰椎~胸腰腰椎移行部~上部腰椎の高さから出る脊髄神経後枝が、外下方に延び、腸骨陵を越えた上殿部に痛みを訴える疾患である。治療は、後枝の出処であるTh12~L2棘突起傍(背部一行)へ深刺することで効果的な針灸治療となる。メイン症候群については、本ブログでもいろいろと報告してきた。

さまざまな適応がある中殿筋刺針(2022.2/3)
https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/9de6364bec37c3367dcd2e8d83463b9c 

一方、上殿部の痛みを訴えるもので、Th12~L2脊髄神経後枝が腸骨陵を乗り越え、上殿皮神経と名前を変えたあたりで、皮下筋膜の絞扼を受けることで強い痛みを生じる場合があり、これを上殿皮神経痛とよぶ。主訴のみから2疾患を判別することは困難だが、触診や撮診で鑑別することは難しくない。今回、上殿皮神経痛の針灸治療を経験して、気づいたことがいろいろ出てきた。


1.症例報告(85才女性)

主訴:左上殿部の劇痛
5日前から強い左上殿痛が生じた。近くの整形2カ所に行くも、X線をとられて腰椎の老化を指摘され、鎮痛剤の処方をうけるという同じ診療を受けたのだが、痛みは軽減しなかった。

初回治療
S)知人に当院を紹介されて来院した。本日で発症5日目。痛みが激しい時もあれば痛みのない時もあるとのことで初回来院時は痛みがない状態だった。
O)左殿部に圧痛
A)中殿筋の緊張によるTP活性状態
P)側臥位で環跳あたりに2寸#4で数本手技+置鍼10分

第2診(3日後)
S)前回治療の翌日から右殿部が激しく痛み非常につらかった。
O)中殿筋に圧痛強く広範囲に存在
A)中殿筋緊張の悪化
P)側臥位で環跳あたりに2寸#4で10本以上の局所集中置鍼10分

第3診(前回治療から3日後)
S)右殿痛は痛む時と痛まない時がある状態は、初診前と変わらない。
O)中殿筋に圧痛(-)となった。腰宜穴の圧痛(+)、胸腰痛一行の圧痛(-)
A)上殿皮神経痛かも
P)側臥位で、腸骨陵縁を撮む揺り動かす手技(筋膜リリース目的)+腸骨陵縁あたりに2寸#4で5本水平刺、置鍼10分

第4診(前回治療から7日後)
S)この一週間痛みがなかった。
O)腰宜穴の圧痛(+)
 ※腰宜穴(奇穴)の位置:L4棘突起外方3寸。腸骨陵最高点のやや内側
A)上殿皮神経痛と確信
  本当に中殿筋に異常はないか、横座り位で中殿筋を押圧すると、きつい痛みが出現したので、この肢位で3寸#8で深刺追加。

P)前回と同治療。

 

2.症例を通じて学んだこと

1)上殿皮神経痛とメイン症候群の鑑別
    両疾患の知識があれば鑑別は容易だが、知らなければ病態把握は難しい。
 共通点は上殿部痛、違う処はTh12~L2一行に圧痛があるか否かである。

2)上殿皮痛と中殿筋緊張の病態の相違

上殿部部痛はよくみる症状である。通常は中殿筋は上殿神経支配で、上殿神経は近く成分をもたない運動神経なので、コリは現れても痛みは出ない。痛みが出るのは、ここにTPが活性化したからだと考察した。
この上殿神経は、仙骨神経叢の枝である。しかしこの部の皮膚は上殿皮神経は上部腰椎の脊髄神経後枝の枝なので、筋と皮膚の神経支配はまったく違う。これは以前から不思議に思っていた。
今回の症例では、上殿皮神経痛(撮痛陽性となる)だったが、押圧して中殿筋に圧痛はなかったのだが、横座り位で、中殿筋を過収縮状態にして押圧すると強い圧痛が現れたのだった。本症例に関する限り、中殿筋過緊張と上殿皮神経痛は同時にみられたのだった。

 

 

 

 

 

 


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