先回の令和5年春には、第7期針灸奮起の会「五官科の現代針灸」を、同年秋には「内科症状の現代針灸」の針灸実技講座を実施しました。今回は一周回って「整形外科の現代針灸」の実技講座を実施しますが、指導内容も次第に洗練されてきました。以前、参加されたことのある先生方でも満足されることと信じています。
今回の整形外科実技は、きちんとした病態生理と病態把握を根拠とした、アセスメントがしっかりした現代針灸治療をご披露することが主題となっています。
皆様のご参加を参加をお待ちしています。実技助手として小野寺文人、岡本雅典の両氏も指導のお手伝いをさせていただきます。
「放心状態で考える君」
1.スケジュール開催時間:午後5時30分~8時頃
第1回 3月 3日(日曜) 奮起の会 背腰痛
第2回 3月17日(日曜) 奮起の会 腰下肢痛
第3回 4月 7日(日曜) 奮起の会 膝痛
第4回 5月19日(日曜) 奮起の会 頸痛
第5回 7月21日(日曜) 奮起の会 肩関節痛
2.講習会会場::国立市中1丁目集会場
東京都国立市中1丁目10-34
JR中央線国立駅、南口下車徒歩3分
3.毎回の定員:12名(定員になり次第〆切)
4.持参品:筆記用具程度、毎回オリジナルカラーテキストを進呈。針灸実技用の道具類は支給します。
5.会費:針灸有資格者7,000円、針灸学生6,000円
6.懇親会:講習会後、駅前の居酒屋にて。会費は3000~3500円程度(当日受付)
7.受講お申し込み方法
参加御希望の方は、①参加希望会のテーマと開催予定日、②氏名、③住所、④電話 ⑤メールアドレスを、メールまたは電話でお伝えください。 折り返しご連絡を差し上げます。参加費は当日現金でお支払いください。領収書発行します。 お申し込み〆切り日は各回とも開催前日午後3時頃までです。ただし参加者12名に達した場合、その時点で受け付け終了いたします。
あんご針灸院 似田 敦(にただあつし) 電話042(576)4418
メールアドレスnitadakai825@jcom.zaq.ne.jp
講習会内容 現在、腰背痛と腰下肢痛のみ (残りは近日中に作成予定です)
A.腰背痛
A4版テキスト,9ページ
A1基礎 脊椎の基準点と取穴および撮診法
①背部兪穴基準点の把握
②脊髄神経後枝走行と撮診法
③撮診法に対応した背部一行刺針で、高い治療効果を生むことが可能となる。
A2症状 膈兪~肝兪付近(胸椎部で肋骨がある部)に感じる痛み
<胸椎後枝症候群>
①腰背筋痛は、浅層にある起立筋ではなく、深層の横突棘筋(半棘・多裂・回旋筋)に原 因がある。
②治療は、背部一行刺針(棘突起外方5分)から深刺する。刺針体位は、腹臥位よりも側 腹位で行う方が効果的。
A3症状 脾兪~腎兪付近に感じる痛み
<メイン症候群(胸腰椎接合部後枝症候群)>
①胸椎は回旋可動性に富むが腰椎は回旋できないので、第12胸椎の回旋させる力は第1 腰椎椎体に受け流すことができず、力学的ストレスが生じやすい。これをMaigne 症候群(胸腰椎接合部後枝症候群)とよぶ、
②本症候群には側腹位。Th/ L1棘突起間直側への刺針が効果的である。
③上殿部痛は、メイン症候群ではなく、上殿皮神経痛の場合もある。後者では、腸骨陵を縦走する上殿皮神経のワレーの圧痛点を発見し、この部から水平刺して筋膜癒着を剥すことを考える。
A4症状 上体前屈時にL5~S1椎体間に感じる痛み
<腰椎-仙椎移行部多裂筋過緊張症>
①腰椎は前後屈の可動性に富むが、仙椎椎体は可動性は全くない。
に加わった前後屈の力学的ストレスは、仙椎に受け流すことができず、L5/S1椎間関節は強い力学的ストレスが生じやすい。
②この結果、L5/S1椎間関節と多裂筋がダメージをうけやすく。L5/S1一行刺針が効果的になる。
A5症例 志室あたりの起立筋外縁の鈍痛
<胸腰筋膜癒着または大腰筋筋膜症>
①脊柱起立筋(後枝支配)の外縁には腰方形筋(前枝支配)があり、両筋間には強大な腰 仙筋膜(=胸腰筋膜)が発達している。この部の筋膜が緊張すると、腰部深部に広範な 鈍痛を起こす。志室から腰仙筋膜に深刺入するとよい。
②腰仙筋膜深部には、腰神経叢があるので、ここから出る神経枝症状に対しても志室深刺 が効果がある。大腿外側、陰部鼠径部、大腿前面、体内内側痛に対しても腰神経叢刺針を行う適応がある。
A6症状 下背部で起立筋外縁の鈍痛
<外縫線部の筋膜癒着>
①胃倉あたりは外縫線とよばれ、脊髄神経前枝支配筋と後枝支配筋の境界領域である。このあたりは筋構造が複雑であり、筋膜癒着が起こしやすい。
②側臥位で、胃倉から横突起方向に深刺すると、中~下背部に広範に針響を与えることができる。広範囲におよぶ背痛に適応がある。慢性背痛の他に胆石症の鎮痛にも効果がある。
A7補講 八髎穴への刺入技法と治療点の選択
①次髎穴の後仙骨孔から針を入れて貫通させるコツを紹介。
②仙骨神経叢はL4~S3の高さから起こるので、代表治療点としてはS2(次髎)を選穴する。陰部神経はS2~S4から出る体性神経なので、代表治療穴としてはS3(中髎)を選択する。端的にいえば、整形疾患では次髎を使い、泌尿婦人科疾患では中髎。
②ただし実際には、神経枝は後仙後仙骨孔から仙骨骨膜に沿うように広範に分布しているので、後仙骨孔内に入れる必要はなく、むしろ仙骨骨膜刺激を目的とする水平刺を行った方が効果的である。
B.腰肢痛
A4版テキスト,10ページ
B1症状 片側の殿部~大腿後側~下腿(前面・外側・後面)が痛む。知覚低下部はない。
<梨状筋症候群>
①梨状筋症候群の真因は、坐骨神経痛ではなく、坐骨神経周囲の梨状筋ファッシア興奮による筋膜痛である。坐骨神経ブロック刺針(中国流環跳)刺針が効果的になる。
②腰椎椎間板ヘルニアは、腰部神経根症状ではなく、腰部椎間関節部の筋膜重積症状である。 腰椎椎間関節部~横突棘筋への刺針が効果的である。
B2症状 上外殿部から大腿外側が動かすと痛む。
<中・小殿筋緊張症>
①臀部筋すべては知覚支配はないが、運動成分はあり、トリガーポイントが発生。
②とくに中・小殿筋の筋緊張は臨床で頻回に遭遇するので、側臥位で日本流環跳から深刺すると効果的である。難治性の中殿筋緊張では、横座り位で施術すると効果絶大になる。
③上殿部の強い痛みは、中・小殿筋の痛みではなく、上殿皮神経痛の場合があり、この時、トリガーポイントは腸骨陵の腰宜穴あたりに出現する。
B3症状 上殿部外側の痛み・鼠径部痛。歩行時の鼠径部に感じる違和感
<変形性股関節症>
①変形性股関節初期は、 筋緊張で股関節変形に起因した筋膜痛によるものなので、日本流環跳から深刺により速効で鎮痛できるが、変形が進行すると効果は持続しない。短い場合はせいぜい1~2日間にとどまる。自発痛があるような進行期であれば、針灸無効である。
②初期~中期の変形性股関節症では、筆者考案の徒手矯正手技が有効だ。
B4症状 同じ姿勢を続けている時に生ずる腰部の鈍重感と下肢不定症状
<仙腸関節機能障害>
①大多数の腰殿痛は、運動時痛だが、仙腸関節機能障害は静的腰殿痛、すなわち同じ姿勢を続けていると痛くなる。筋膜や靱帯の持続的負荷による痛みの悪循環が正体。
②仙腸関節の関節裂孔底まで刺針し、股関節の屈曲外転自動の運動針が効果的。
B5症状 5分間ほど歩行すると足が前に出にくくなる。 腰をかがめて数分間座っていると、再び歩けるようになる。
<馬尾性間欠性跛行症>
①間欠性跛行は、動脈性と神経性があり、前者は下肢閉塞性動脈硬化症、後者は馬尾性間欠性跛行症でともに難治である。しかし中には陰部神経を圧迫が、間欠性跛行をもたらす場合もあり、針灸適応になる。
②陰部神経が仙棘靱帯の狭隘部分で圧迫されている場合、この局所への深刺が効果的である。
③内閉鎖筋中をアルコック管が通過する部位での陰部神経絞扼が症状をもたらしていることもあり、アルコック管刺針が適応となる。