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下肢~足の筋膜症アプローチ最終回(その5)シンスプリント

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1.シンスプリントの概要

Shinは向こう脛(すね)、Splintsは(骨折時に使う)副木のこと。短距離走はSprintなので、副木とは関係がない。ランナーやジャンパーにとって頻発疾患である。
軽症では、運動後に“ジーンとするすねの内側に痛みが多い。進行すると運動中も痛み感じるようになる。さらに進行すると安静時にも持続する痛みとなる。

重症度分類(Walsh)
ステージ1:運動後に“ジーンとする鈍痛(すねの内側に痛みが多い)
ステージ2:運動中も痛みを感じるようになる。
ステージ3:パフォーマンスに影響(タイムが落ちたり、足をひきずったり)
ステージ4:慢性的で安静時にも持続する痛み。次第に歩行困難となる。シンスプリント治癒までの期間は、運動制限を厳守すば2週間程度で症状が消失する。運動制限ができない場合、早い者だと1ヵ月程度、長い者では1~3ヵ月程度の療養期間を要する。

痛みの病理は、①筋膜痛(筋微小断裂含む)と②骨膜牽引痛である。脛骨の膜牽引痛では、マレに脛骨過労性骨膜炎のこともあり、限局性の強い痛みで疲労性骨折を疑う必要もある。

 

2.後内側型シンスプリント

下部:長趾屈筋と後脛骨筋筋膜の滑走障害
中部:長趾屈筋とヒラメ筋の滑走障害 前外側型のシンスプリント:前脛骨筋と長腓骨筋の滑走障害
 

後内側型シンスプリントは次の2つに分類できる。

1)後内側シムスプリント(長趾屈筋と後脛筋間の滑走障害)高頻度

①病態
下腿後側深部筋には後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋があり、この3筋の腱は、みな足内果の下方の足根管を通って足趾に停止する。その機能は足関節底屈作用(つま先立ち)である。したがって足関節底屈運動過多では負担が増強する。足関節底屈すなわち踵を上げて走行するこのと多いランニングやジャンプの際には、癒した筋膜が滑走障害を起こしやすくなる。

②針灸治療
園部俊彦氏(運動と医学の出版社代表)によると、後内側シンスプリントは長趾屈筋と後脛筋間の滑走障害が多く、後脛骨筋関連の内側下1/3周辺に痛みが現れるという。
したがって仰臥位で、三陰交あたりから2寸針で脛骨下縁に向けて直刺深刺し、長趾屈・後脛骨筋を刺激するようにする。置針したまま足の自動運動を行わせることで、滑走を回復させる。

 

③運動療法
踏み台の上に立たせる。その際、踵を踏み台に置き、足の前半分踏み板の外に浮かせた状態にする。まず膝を伸ばした状態で、足関の底屈・背屈運動を大きな動きで30秒間に速いスピードで行わせる。    この運動は主に長母趾屈筋と長趾屈筋の収縮運動。
30秒間休んだ後、両膝45度屈曲位で上記同様30秒間実施する。今度は足指の屈伸運動に、下腿三頭筋運動が加わることで、下腿浅層筋下腿深層筋間の筋膜癒着を剥がそうとしている。この組合わせを1セトとして3セット実施。セット間休憩は1~2分間とする。


2)後内側シムスプリント(長趾屈筋とヒラメ筋の滑走障害) 

①病態
長趾屈筋とヒラメ筋の滑走障害が原因。ただし低頻度。ヒラメ筋は足関節の底屈作用、長趾筋は足趾の底屈作用であり、足や足趾屈曲の際に、これら筋膜の滑走が起こる。両筋間に癒着が生ずると滑走できず、下腿内側下部に筋膜痛が生ずる。圧痛は、下腿内側の中央付近であることから、ヒラメ筋・長母趾伸筋とも起始は脛骨に着している部であり、痛みの原因は骨膜牽引痛の要素も疑われる。

②針灸治療
仰臥位で脛骨内縁の地機あたりの圧痛点を刺入点とする。2~3寸針を使って、腓骨下方向に向けて直刺深刺し、足関節屈伸および足の回内回外の自動運動を行わせる。
地機(脾):足内果の上10寸(旧テキストでは上8寸)、陰陵泉下3寸


3.前外側型のシンスプリント(低頻度)

1)病態

下腿前面外側が痛むタイプ。足関節背屈(足趾を足背側に向ける)すると痛みが増強する。園部俊彦氏によれば前脛骨筋や長母趾伸筋間の癒着による滑走障害だとしている。私の意見では、前脛骨筋の脛骨骨膜起始部の牽引痛かもしれぬと思う。本症は単一の原因とは限らないのだろう。
私が診た患者に「下腿前面の足三里あたりが痛む」と訴える者がいた。当初は前脛骨筋のコリに入れて足首あたりまで響かせる針をしたが効果なく。足三里を脛骨粗面の直側にとり、脛骨骨膜にこすりつけるような刺針をすることで初めて症状軽減した例を経験したことがある。
 

2)針灸治療
足三里をどこに取穴するかは文献によって微妙に異なる。下図は尾崎昭弘「図解鍼灸臨床手技の実際」からで前脛骨筋部から刺入し、深部で長腓骨筋との筋膜刺激になっている。これは園部氏の見解に沿った刺針といえるだろう。刺針方向によっては前脛骨筋のみに対する刺激にもなる。足三里を脛骨内縁にとり、直刺すると脛骨骨膜刺になる。

このような骨膜刺激の針法は、小山曲泉著「神経痛掃骨針法」(明治東洋医学院出版部刊)に同様の技法が参考になる。

 

 

 

 

 

 

 

 


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