1.病態
足の5つある中足骨の基部は深横中足靱帯により固定され、足底の横アーチを形成している。横アーチの下には足趾間の知覚をつかさどる内側足底神経・外側足底神経などが走行している。
モートン病の痛みはこれらの神経興奮によるもので、足裏の足趾にピリピリした感じが出現する。足底趾神経圧迫は、第3趾第4趾の間に最も多い。その理由は、内側足底神経と外側足底神経枝が交わる部位という解剖学的特徴による。ただし他の足趾間にもモートン病は生じる。
モートン病の誘因となるのは開張足である。開張足になると中足骨間が開大し、深横中足靱帯が伸張する。するとこの靱帯を貫通する足底神経が絞扼され、神経痛を生ずるようになる。圧迫されている部の近くには仮性神経腫と呼ばれる神経腫ができ、この神経腫は痛みを生じる。
2.症状
跪座位(座位で踵を上げて床に足趾を押しつける)にすると足底神経が深横中足靱帯に圧迫を受け、足裏の趾先の方にビリビリと痛みが放散する。歩行時に床から繰り返し地面反力が加わるので、痛みのため歩行を続けることができない。
3.治療
1)傷防止パッドによる足神経の免荷
足底の足趾間にある圧痛点を確定し、その圧痛を挟むように百均の床キズ防止フェルトシール(百均ダイソー、直径2㎝、厚さ5㎜)などを貼りつける。
この時、跪座位にして放散痛が軽減する位置を探し出すようにする。歩かせてみて、まだビリビリと痛みが放散するのなら、痛みが軽くなる部位を探して、パッドの位置を微調整して貼り直す。パッドは就寝前に取り外す。下写真は、筆者がかつて罹患した左第2第3趾間のモートン病で、後述する床キズ防止パッドを貼って速やかに改善した。
筆者の罹患したモートン病(左第2第3趾間)時の床キズ防止フェルトシール治療
2)足趾の関節の底屈ストレッチ
モートン病では開張足になっているので、足の横アーチを回復するべく、術者が患者の指を強く底屈させ、足趾を底屈訓練を行う。
自宅療養として患者自身立位で足趾を底屈ストレッチを行わせる。
3)後脛骨筋腱の伸張
足趾の関節の底屈は、下腿後側深層筋である後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋の収縮による。これら3筋が正常に筋収縮していれば開張足にならず、モートン病にもならない。下腿後側深層筋が収縮力できないのは、下腿後側深層筋腱の滑走性が低下している理由による。つまり足根管部の絞扼障害が起きている
治療は、後脛骨筋を狙って承筋刺激をすることもできるが、承筋からの刺針では、ヒラメ筋→長母趾屈筋→後脛骨筋とかなりの深刺になってしまう。したがって水泉穴あたりの後脛骨筋腱を持続強圧しつつ、患者に足関節と足趾の関節の背屈・底屈運動を20回程度、素早く行わせる方法がよいだろう。
水泉(腎):内果最高点とアキレス腱の間の陥凹部。動脈拍動部に太渓をとり、その下1寸。踵骨隆起の内側上部陥凹部で足根管部に相当する。つまり水泉穴は、足根管部刺激の代表穴になる。
※足根管の構造と足根管症候群(参考)
足内果と踵骨を結ぶ帯状組織を屈筋支帯とよび、屈筋支帯と足根骨に囲まれたトンネル様スペースを足根管とよぶ。足根管中を脛骨神経、後脛骨動・静脈、後脛骨筋腱・長趾屈筋腱・長母指屈筋腱が通る。脛骨神経は足管管を通過した後、足裏に回り、内側・外側足底神経、脛骨神経踵側枝となる。足管管症候群とは、足根管部で神経および動・静脈が絞扼され、足裏にしびれや痛みが生じた状態である。