1.PC8001
私のパソコン歴はかれこれ40年程になる。最初に買ったのは日本電気のPC8001で27歳の時、定価で168,000円だった。テレビにつないでみたが解像度が足りず、結局グリーンモニターも購入した。当時のパソコンは電源を切ると記憶も消えてしまうので、カセットテープでデータを残した。記憶容量は32バイト、この大きさの情報を出し入れには5分間ほどかかった。現在の使っているパソコンは16ギガバイトすなわち16,000,000Kバイトなので、その50万分の1の容量にすぎないものだった。
32Kバイドという記憶容量は、 PC8001はパソコン入門機としては手頃で、パソコンがどういったのかを知るにはよかったが、ワープロをしようと思えば、フロッピーディスク駆動装置(約20万円)やドットインパクトプリンター(約5万円)を買い求め、その上でワープロソフト「松」98,000円を購入しなくてはならなかった。その結果できることは、ワープロ専用機に劣るものだった。アスキー社が出版したPC8001ゲーム集(カセットテープ版)を購入してプレイしたことだけが懐かしい記憶だった。
代田文彦先生が愛娘(当時、高校生)に欲しいものを尋ねてみたら、PCが欲しいと言ったことがきっかけで、玉川病院東洋医学科にもPCを導入することになった。PC9001を導入するとともに先の必要装置を導入した。「松」は高価だったので「文筆」という1万円程度のワープロソフトを使用。それでできたことといえば、症例報告会で各先生が提出したタイトル名を一覧表にしてプリントアウトで、それさえ数時間を要したものだった。
2.ワープロ専用機「文豪」
それ以降私は玉川病院を離職して、中国留学を経て東京衛生学園に就職した。そこで求められたのが、自分の教える教科のテキストづくりで、これにはワープロ専用機「文豪」が大活躍した。ワープロ専用機はコンパクトでキーボードに機能が書かれていて、プリンターつきだった。ただしB41枚の印字に10分以上の時間を要し、インクリボン代も馬鹿にならなかった。それに加え、文書に図を入れる必要から、ハンディスキャナを買って使ってみたが、一枚のモノクロ図版を取込んだだけでフロッピーディスク(640キロバイド)の数分の一を消費した。結局のところ、テキストを図入りで保存するにはフロッピーディスクの容量では足りなかったのだった。テキストをプリントアウトする際、図の入るスペースを開けておき、プリント文書に図を糊付けしてコピーする方法をとった。
3.Windowsパソコン(Xp→7→11への移行)
どうしたらよいか困っていた状況下、事前予告なしにワープロ専用機が次々と販売中止になった。PCは暇つぶしにはよいが、実用には役立たないという苦い思いがあったのだが、以降はPCを使う以外に選択肢がなくなってしまった。
重い腰をあげて購入したのは当時の最新型だったソニーのバイオノートパソコンWindows Meバージョンだった。このとはいえこのWindows Meはリソースという概念があり、複数の仕事を同時にやらせるとリソース不足となり、不便を感じた。現在でいう本体RAM量がよほど少なかったのだろう。またWindows Meは何かと動作がフリーズして不便だった。
数年後に、エプソンのノートパソコンに替え、基本ソフトをWindows XP にしてみた。Windows XPは使い勝手がよく、長い間使えたので、その機能を十分に使い切れたと思う。 Windows XPには不満がなったのだが、マイクロソフトは次のバージョンを発売開始した。これがWindows VISAで、巷の評判が悪いため購入せず。その次のバージョンはエプソンのデスクトップPCのWindows7で、ついにXPから7に乗り換えた。デスクトップにしたには、大画面モニター(17インチ)にしたかったからだった。Windows7に乗り換えたといっても、使い勝手はXPと変わらずWindows7にしたメリットは判然としなかった。
以降もマイクロソフトは数年毎にWindowsの新バージョンを販売し、以前のバージョンの動作はサポートしないという商法をとった。この頃になるとWindowsは洗練されてきて、革新的な変化が起きなくなった。新しいバージョンに変えても、作動しないアプリケーションがあったり、新しい操作に慣れる必要があったりで、余計な手間が増えることが苦痛になった。Windows7の次は Windows 8で、不評だったので無視。次に出てきたのはWindows10だった。これも10に乗り換える必要性がないので、7を使い続けてきた。ただし数年前からマイクロソフトはWindows7のサポートは中止。これに伴い、いろいろなアプリケーションソフトでもWindows7下では動かないものが現れた。
マイクロソフトはWindows10が最終バージョンだと明言していた筈だが、数年後にはWindows 11にバージョンアップした。やむを得ず、遅ればせながらWindows11パソコン(デルinspironn)を新規購入したのだった。
Windowsのバージョンを変えることは、事実上新しいパソコンに買い換えることになる。買い替えるとなると、これまで所持していたものより高性能なものが欲しくなる。当初は17インチモニターを使っていたのだが、現在では27インチモニターとなり、A4書類を見開きで2ページ表示できる環境となった。不平不満を言いつつも、要求水準が上がってきたのだった。
4.「一太郎」の終焉
PC9001が現役の時、最も使われたのがジャストシステム社のワープロソフト「一太郎」(58,000円)だった。この値段は今となっては非常に高価だが、そのすぐ前に販売されたワープロソフト松は98000円で、評判はよかったが、さすがに高価だった。その点、一太郎は相対的に安かったので、かつてPCのベストセラーソフトとなった。それでも当時のワープロ専用機に比べて使い勝手が悪く、加えてプリンターも別途買い揃える必要があった。
先に、ワープロ専用機が予告なく販売停止となってしまい、私もPCをワープロとして使うことになった。その時、選んだのがワープロソフト一太郎(当時12,000円程度)だった。この数年間で一太郎も進化していて、使い勝手が改善されていた。これはパソコン処理速度と記憶容量が向上したためでもあった。
一太郎は現在も使っているが、現在の一太郎の値段はかつての2倍以上となり、その上日本語入力ソフトATOKの使用は、1年ごとに使用料を支払うというやり方に変えた(これをATOKパスポートと称した)ことで愛想がつきた。私の手元にある一太郎についていたATOK2008では、google検索のため単語を入力すると、画面が閉じてしまう。一方新しいバージョンの一太郎を購入する気は失せた。
いよいよMicrosoft IMEに乗り換える時が来たかと思ったが、第三の方法であるgoogle日本語入力の評判がよいことを耳にした。google日本語入力は昔からあったというが、最近性能が上がったとのこと。しかも無料。さっそくインストールしてみると確かに高性能だった。たとえば中脘や次髎といった穴名も、漢字変換できる。おそらく経穴名はすべて入っていると思われた。ATOKに保存したユーザー登録単語約4000語の移行にも成功した。
そうであれば、もはやATOKは不要となった。すなわち「一太郎」もついに終焉を迎えたのではないか?