私は約2年前、当ブログで<下肢内側の病の鍼>の現代鍼灸からの検討(2018-08-14)を発表している。
これは閉鎖神経痛にいての知見をまとめたものを含むが、この度これに該当する症例を経験したので報告する。
主訴:左大腿内側痛
現病歴:
元来健康だったが、2週間前、自宅でエアロバイクのペダル漕ぎトレーニングをやり過ぎたせいか、左大腿内側に痛みを感じるようになった。私のブログ<グロインペインの鍼灸治療>を読み、これかもしれないと思って当院来院した。職業柄、日中は立ち仕事をしている。
所見:左大腿内転筋群と内側広筋上に圧痛あり。同範囲の撮痛も陽性。鼠径部に圧痛なし。
立位で腱側の下肢を床から挙げ、患側のみで立つと、ふらつき、膝折れする。
アセスメント:
①鼠径部周囲に圧痛がないのことで、グロインペインを否定。
②圧痛は左大腿内側中央に広がる→大腿内転筋群の筋膜症。
治療は、患側下にしたシムズ肢位で、大腿内側圧痛点数カ所に置針5分。
(この肢位にすると大腿内側圧痛を把握しやすい)
③立位患側片足立ち困難→ シムズ肢位で左大腿四頭筋とくに内側広筋の筋膜症。
症状をもたらしているのは大腿内転筋だが、内側広筋まで影響を受けていることによるのだろう。
治療は、仰臥位股関節屈曲かつ膝関節屈曲位置にして四頭筋伸張肢位にて血海・下血海に置針。 (この肢位で四頭筋刺激するとⅠb抑制され、反射的に筋弛緩できる)
治療効果:
治療直後は、いくらか痛み減少した程度。3日後の再診時もいくらか症状軽くなった程度。
第四診
大腿内転筋と内側広筋への刺針は前回通り。
大腿内側にテニスラケット状に知覚過敏(=撮痛陽性)があること、大腿内転筋群は閉鎖神経支配なことから、閉鎖神経の問題を考えた。閉鎖神経は腰神経叢から起こり、大腿内転筋を運動支配するとともに、大腿内側の皮膚知覚を支配している。今回の症状は、ペダル漕ぎ運動で内股に刺激を与えすぎたせいか。
閉鎖神経は、腰神経叢の分枝なので腰神経叢刺激として外志室刺針を実施。
(閉鎖神経は閉鎖孔を貫通しているが、このあたりの異常の有無は確かめようがなく、刺針も技術的に困難)
この結果、症状は半分以下となっている。
局所である大腿内側の大腿内転筋刺激が効いたのか、大腿内側の皮膚刺激が効いたのか判然としないが、大きなカテゴリーでは閉鎖神経症状になっている。
※閉鎖神経の筋支配ゴロ:「閉鎖病棟、大胆!町内で外泊」
閉鎖病棟(閉鎖神経)、大(大内転筋)胆(短内転筋)、町内(長内転筋)で外(外閉鎖筋)泊(薄筋)