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グロインペインと針灸治療

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グロインペイン症候群 grion pain  syndrome とは鼠径部痛症候群の英語名で、  grionとは「股間」のこと。
アスリートの鼠径部周囲に出現する慢性障害とされるが、真の原因を特定しにくい。キック動作 やランニングやなどの繰り返しの運動によって、鼠径部、股関節周辺、骨盤に機械的ストレスが  加わって痛みとなる。1~2ヶ月の安静で改善することが多いが、緊張が高い鼠径部の筋への押  圧刺激やストレッチだけでは改善しないこともある。

1.ドーハ分類
世界中の股関節専門家が2014年11月カタールのドーハにて提唱したgroin painの分類。

1)内転筋関連鼠径部痛
 グロインペインで最も多い。内転筋に一致した圧痛と内転筋抵抗時痛を有する鼡径部痛。仰臥位にし、股関節屈曲位(屈曲45°)にて両膝関節の間に拳を入れ、これを押し潰すように股関節を内転させる。この時疼痛が誘発されば陽性。
  

2)鼠径部関連鼠径部痛       
 内転筋の付着部とも一致するため、内転筋関連鼠径部痛との判断が難しいこともある。圧痛のみをもって診断するのが特徴。
   

3)恥骨関連鼠径部痛 
恥骨結合部の疼痛と隣接する骨の疼痛。同部の圧痛あり。圧痛をもって診断する。

※鼠径部の経穴
腹直筋起始は、恥骨結合~恥骨結節になる。内外腹斜筋や腹横筋は恥骨と連結していない。 恥骨結合上際に曲骨穴をとり、曲骨穴の外方5分に曲骨穴(腎経)をとる。なお経穴学でいう横骨長は6.5寸であり、左右の恥骨結節間の距離としては長すぎるので、筆者は左右の恥骨上枝端の長さのことをさすのだろう。だと考えている。
恥骨を起始とする筋は、腹直筋と4種の大腿内転筋((恥骨筋、長・短内転筋、薄筋)である。

 

4)腸腰筋関連 
大腿近位前面の疼痛(内転筋より外側)。腸腰筋部の圧痛 (鼠径部の上方もしくは下方) 股関節屈曲抵抗時の疼痛、伸張痛。股関節屈曲時の抵抗時の鼠径部痛、もしくは股関節伸展時の鼠径部ストレッチ痛。圧痛による診断は確実性に乏しい。

5)股関節関連 
股関節周囲の疼痛,ひっかかり、クリック,可動域制限など


2.グロインペインの針灸治療
現代筆者か行っている治療法を紹介する。ドーハの分類とは少々異なっている。
 
1)腸骨筋に対する外衝門刺針 
 
どういう動作で、どこが痛むのか、再現させ患者自身の指頭で示させるとよいが、ちょっとした動きや押圧方向で痛みが変化するので見極めるのが難しい場合が多い。
変股症では、鼠径靱帯外1/3の処(=外衝門)に圧痛をみることが多い。この部の圧痛は、腸腰筋とくに腸骨筋の圧痛を意味する。腸骨筋は、鼠径靱帯下を横断して大腿骨小転子に停止しているので、股関節と腸骨筋の間で摩擦されて炎症や癒着が起こりやすい。とくに腸腰筋が短縮している時、鼠径部痛をきたすことがある。        
鼠径部から腸骨筋に刺入するには、股関節にぶつかるまで深刺し、癒着を剥がすように局麻剤を注入するが、かなり力を入れないと剥がれなかった(木村裕明医師)という。これは腸腰筋膜下ブロックとよばれる方法である。(下図×印)    


 

2)大腰筋刺針
 
外志室から大腰筋あるいは腰神経叢に対して深刺すると、たまに鼠径部に針響が至ること がある。これは腰神経叢の枝の一つである腸骨鼠径神経に影響を与えたためだろう。つまり腰神経叢が過敏になれば鼠径部が痛むことがあり、このような場合は外刺針からの深刺で有効になることがあるだろう。

※鼠径部の経穴
横骨長(左右の恥骨上枝外端の長さ)を6.5寸とした場合
曲骨(任):恥骨結合上際
横骨(腎):恥骨結節外端。曲骨外方5分
衝門(脾):曲骨の外方3.5寸。鼠径靱帯部で、大腿動脈拍動部。  
気衝(胃):曲骨の外方2寸。鼠径靱帯部。
急脈(奇):曲骨の外方2.5寸。鼠径靱帯の下縁にとる。その名称から大腿動脈拍動部だとの見解もあって、この説では衝門と急脈は縦並びの関係になり、ともに大腿動脈刺激になる。
  

3)大腿内転筋群への刺針

大腿内転筋群の語呂:チ(恥骨筋)タン頂戴(短・長内転筋)、八斤(薄筋)。

①長内転筋
長内転筋は股関節内転筋の主動作筋で恥骨外端から起始している。パトリックテストの肢位をすると、隆起してつまみやすくなる。股関節外転不十分な者に対して、陰廉や足五里から刺針して長内転筋を弛めると、外転角が増す(あぐらがかけるようになる)ことが多い。大腿内側に刺針する時、患側下の側臥位で健側の膝を立てた肢位で行うと、経穴上鍼響きを与えやすいようだ。
  

②恥骨筋
恥骨結節外縁(横骨穴)を深く押圧すると痛む場合、筆者は恥骨筋の恥骨起始部症を疑っている。恥骨結節外縁から深刺する。      
 
4)仙腸関節刺針

仙腸関節のズレが鼠径部痛を生む要因の一つと考えている者もいる。仙腸関節のズレ→周囲筋や靱帯の緊張→仙骨部の鈍痛→鼠径部・下肢部への関連痛という機序になる。仙腸関節の異常を判定するには、仙腸関節部を押圧してその圧痛の有無を調べる。圧痛ある場合、仙腸関節刺針(患側をにした側腹位で仙腸関節関節刻面に刺入し、膝を立てたり寝かしたりの自動運動を指示。

 

 

 


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