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乗物酔いの応急処置

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1.内関刺激
乗物酔いの悪心嘔吐に、内関に置針または皮内針をすると、悪心嘔吐は鎮静化され、つわりによる悪心嘔吐にも内関刺激は効果あることが知られる。このことから、内関刺激は、嘔吐に求心性機序ではなく、延髄嘔吐中枢→迷走神経→効果器(胃)という遠心性機序に対する抑制が想定されている。下は、欧米で市販されている酔い止め用リストバンド。
    

 

 2000年の英国医学会において、嘔気嘔吐に対して内関穴刺激が有効だとのEBMが承認された。(Edzard Ernest & Adrian White 山下仁ほか訳「針治療の科学的根拠」  医道の日本社 2001.6)


2.冷水をかける方法

2012年8月、探偵!ナイトスクープ(朝日放送)で紹介されていたもの。バリ島の漁師の間で伝わっている方法だという。船酔いで嘔吐・昏倒している者の不意をつき、後首や股間に向けて冷水を勢いよく浴びせかけるというもの。番組中では、現在舟にのって船酔いの者3名(医者を含む)に本法を行った。全員ギャッとしてビックリ状態だったが、その直後、「めちゃシャキッとした」といい、信じられないという顔つきをしていた。テレビを視ていて大笑いだった。  
この方法で、なぜ乗物酔いが治るのかという点だが、交感神経を亢進させることで、相対的に迷走神経緊張を緩め、胃の逆蠕動性を解消したものだろうとは考えてみたが確証はなかった。 

 

 

 

3. 船酔い・乗り物酔いの「特効薬」(高橋和宏医師(「代替療法の光と影」HP) より
 
患者に海上自衛隊の自衛艦に勤務している人が、「酔い止め」のお薬を所望した。通常の「酔い止め」では、海が荒れると船酔いを抑えることができないということだった。私は船酔いの「特効薬」を処方した。
通常の酔い止め薬とは:抗ヒスタミン薬。嘔吐は脳から放出されるヒスタミンが、嘔吐中枢を刺激することによって起こる。ヒスタミンの作用を抑え、吐き気や嘔吐を抑える。

その52週間後、患者さんが来院した。今回、大きな台風に遭遇して時化(しけ)は長期間にわたってひどく、乗組員の8割の方は船酔いしたとのこと。しかし、この患者さんは、私の処方した「特効薬」を服用したお陰で、全く船酔いしなかった、とのことだった。

その「特効薬」とは、気管支喘息や尿失禁の治療薬で有名な「スピロペント」だった。なぜ気管支喘息の治療薬が「酔い止め」として効くのだろうか?
 
「乗り物酔い」をした時の症状を列挙すると、①吐き気、②吐く、③お腹がグルグル音を鳴らす、④便意を催す、⑤下痢をする、⑥顔面蒼白になる、⑦冷や汗をかく、⑧めまいがする、⑨血圧が下がる、⑩脈が速くなる等で、これらの症状は医学的にはショック症状かあるいはショック前駆症状を意味する。つまり、乗り物酔いは「ショック状態」なのである。
 「ショック状態」は、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて、交感神経が立ち直れない時に起きる現象のこと。体の平衡感覚に負荷がかかり、そのコントロールをするために自律神経(交感神経・副交感神経)も「ドミノ倒し」的に負荷がかかり、自律神経のアンバランスが極限状態になって「乗り物酔い」になる。

 「スピロペント」は気管支交感神経興奮剤で、気管支喘息(気管支を拡張作用)させ、あるいは尿失禁(尿道筋肉を収縮させる作用)に対する治効がある。

※、「スピロペント」には厚労省の承認の薬効上「乗り物酔い」の適応がないので、ご希望の方は近医に相談のこと。


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