1.ドライアイの原因
涙は涙腺でつくられ、排泄溝を通って眼球表面に流出する。眼精疲労を訴える者の6割はドライアイ状態とされる。この原因は、涙液減少型はマレ(代表疾患はシェーングレン症候群)で、大部分は、涙が蒸発しやすい涙液蒸散型だとされる。
※目がショボショボするとは?
「目が乾きやすい」という乾燥感が主症状で、これに異物感、目の痛み、まぶしさ、目の疲れなど様々な症状が合わさったもの。
2.涙液の三層構造
眼球表面は涙液膜で覆われるが、外側から内側に油層・水層・ムチン層という三層構造になっている。最も内側にあるムチン層は、水層を眼の表面にとどまらせる接着剤の役割をする。目やにの主成分はムチンである。
角膜と水層を密着させる役割があり、外層の油膜は、水層の蒸発を防ぐ役割がある。ドライアイで問題となるのは、油層減少により涙蒸発量が増加した結果である。油層は、眼瞼縁にあるマイボーム腺で作られるが、油の性状が変化すると固まりやすくなり、分泌量が減少する。これをマイボーム腺梗塞とよぶ。
2.ドライアイの治療
マイボーム腺の分泌を回復させることが目標。眼瞼マッサージは、油が固まっていると効果がない。目やに状に固まったマイボーム腺を溶かすには、眼瞼を5分間以上40℃程度に温める必要がある。顔全体ではなく、目周囲のみ温めたいと言う場合、赤外線や遠赤外線は向かず、マイクロウェーブそもそも目の照射に禁忌である。ポリ袋に包んだ蒸しタオルを瞼の上にあてる方法がポピュラーだが保温持続時間が短くなってしまうのではないか。ホットアイマスクという製品(1000円~3000円)も市販している。ちなみに眼科で処方されるドライアイの点眼薬の主成分はヒアルロン酸である。
3.くるみ灸
東洋医学らしい治療としては、クルミ灸がある。クルミにはいくつかの種類があるが、殻が固くで厚い鬼クルミが適している。鬼グルミはわが国で自生しているクルミで、古くから食用とされてきた。味は良いのだが、殻が厚く固いので、専用のくるみ割り器具が必要になる。
鬼クルミを半分に割り、身を取り出す。鬼クルミの殻を、閉眼した瞼の上に置く。その上に小指頭大の粗悪モグサをのせ、点火する。クルミを少し濡らすとモグサが付きやすい。しかしクルミ灸は、被験者が少々顔を動かした場合、クルミも火のついた粗悪モグサも転がってしまうという大きな欠点がある。
中国では下写真のようなメガネ型の道具を使う者もいるらしい。メガネのレンズに相当する部分にクルミ殻を固定、その上には針金がとび出ていて、そこに棒灸欠片を串差しにして燃やすというもの。このスタイルであれば座位で治療もできる。見かけは不格好であるが。
このクルミ灸めがねには、進化形があって、モグサを取り付ける部分が金属メッシュのカゴになっている。これならば落下する危険性はない。アマゾンでも入手できる。