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下腿から足の筋膜症アプローチ(その1)全体像

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1.前腕筋の構造と針灸治療理論
 

下腿の筋構造と筋膜症状について記す前に、前腕の筋構造と筋膜症状について整理する。前腕には手関節と手指関節を動かす筋が収まり、下腿は足関節と足趾関節動かす筋が納まるという構造的共通性があるためである。
 
前腕部の屈筋には浅層と深層に分かれ、浅層は手関節背屈作用がある。深層は指を 屈曲作用がある。たとえばバックハンドテニス肘には、短橈側手根伸筋(手三里外方)を施術するとよい。第2~5指バネ指に対しては、浅・深指屈筋(郄門の内方で 心経上)への施術を行う。つまりつまり前腕症状はもちろん、手指症状であっても、前筋に対して針灸施術することになる。
前腕屈筋で、浅層筋は手関節の屈曲に関係し、深層筋手指の屈曲に関係する。

バネ指の針灸治療 ver.3.3 https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/e5b5616ff27ed725e4841034d9eee012

 

2.下腿筋の構造

①外反母趾→長母趾屈筋力低下(陽交)  
②足底筋膜炎→下腿三頭筋緊張(承山)
③モートン病→後脛骨筋腱緊張(水泉)+局所パッドによる免荷
④後内側型シンスプリント→長趾屈筋と後脛骨筋の筋膜癒着(三陰交),長趾屈筋とヒラメ筋間の筋膜癒着(地機)
⑤前外側型シンスプリント→前脛骨筋と長腓骨筋間の筋膜癒着(足三里移動穴)


下腿筋の障害により、外反母趾・足底筋膜炎・モートン病・シンスプリントなどの筋膜症が生ずる。今回は総括的な説明を行い、腿~足の筋膜症それぞれに対する治療の全体構成を観ていくことにした。これだけの説明では簡略化されすぎ、理解しづらいことだろうが、今後は各疾患の病態把握や針灸治療理論について、一つ一つ取り上げる予定でいる。 
 

1)下腿三頭筋と足底筋膜炎
  
下腿後側の屈筋には、浅層に下腿三頭筋(ヒラメ筋と左右の腓腹筋)があり、ともにアキレス腱に停止し、足関節を底屈する機能がある。
下腿三頭筋が収縮して踵を離床するタイミングは、足関節の背屈可動性に依存して る。正常では、十分な足背屈ができるので、歩行時の後足は十分後方に行った時点で 踵は離床する。
もし下腿三頭筋が過緊張していて足の背屈可動性が不十分な場合、早い段階で踵は離床する。このような歩行を長期間続けていると、足指を屈曲させるのに強い筋力が必要になり、足底筋膜に負担がかかる。
治療は、過収縮している下腿三頭筋の緊張を緩めることが重要である。それには、立位で踵立ちさせた状態で、下腿三頭筋の圧痛(承山など)に刺針する。


2)外反母趾と長母趾屈筋

外反母趾になると母趾腹で床を蹴って前に進むことはできず、第2趾MP関節底趾基部で接地し、床を蹴って前に進む習慣動作(接地部に鶏眼や胼胝が好発)になる。
床を蹴るのは示指MP関節部あたりになる。治療は、長母趾屈筋の筋力を増強させる運動法(タオルギャザーや鼻緒のあるサンダルの使用)を行い、治療穴としては下腿の長母屈筋刺激を目的として陽交を刺激する。
針灸治療は、外反母趾そのものに対する治療ではなく、浮き趾に対する治療になる。下腿外側ほぼ中央で、陽交穴あたりから長母趾屈筋に対して刺針する。


3)モートン病と後脛骨筋
 
モートン病の誘因となるのは開張足で、開張足になると中足骨間が開大し、深横中足靱帯が伸張する。するとこの靱帯を貫通する足底神経が絞扼をうけ、神経痛をずるようになる。  
 踵を上げて床に足趾を押しつけるようにすると足底神経が深横中足靱帯に圧迫をけ、足裏の趾先の方にビリビリと痛みが放散する。歩行時に床から繰り返し刺激が加わるので、痛みのため歩行を続けることができない。後脛骨筋は下腿後側の深層筋に分類され、本筋収縮は足関節底屈機能になる。下腿後側深層の母趾屈筋・趾屈筋には足趾屈曲機能があり、下腿三頭筋と協調して歩行やランニング、ジャンプ等の運動を実行する。
下腿後側屈筋の浅層筋と深層筋の筋膜癒着して滑走障害が起こり、下腿から足にかけての種々の症状を生む。治療は、この滑走障害を改善することにあるが、後脛骨は下腿後側の深部にあって運動針を行いづらいので、足根管部にある脛骨筋腱部(=水泉穴)を強圧しつつ、患者の足趾の底背屈運動を実施する。


4)後内側型シンスプリント  
 
① 長趾屈筋と後脛骨筋間の滑走障害 
下腿後側深部筋には、後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋があり、これらの腱はどれも足果の下方の足根管を通って足趾に停止している。その機能は足関節底屈作用(つま先立ち)であり、足関節底屈運動過多になれば痛みは増強する。踵を上げて(足関節底屈)走行するこのと多いランニングやジャンプの際、癒着した筋が滑走障害を起こして痛みを感ずる。
 園部俊彦氏(運動と医学の出版社代表)によると、後内側シンスプリントは長趾屈と後脛骨筋間の滑走障害が多く、後脛骨筋関連の内側下1/3周辺に痛みが現れるという。
したがって仰臥位で、太渓~三陰交あたりから2寸針で脛骨下縁に向けて直刺刺し、長趾屈筋・後脛骨筋を刺激する。置針したまま足の自動運動を行わせるこで、滑走性を回復させる。
  

②長趾屈筋とヒラメ筋の滑走障害(低頻度)   
長趾屈筋とヒラメ筋の滑走障害が原因となる場合もある。ヒラメ筋は足関節の底屈作用、長趾屈筋は足趾の底屈作用。足や足趾屈曲の際にこれら筋膜の滑走が起こるのが正常である。癒着が生ずると滑走できないので、腿内側下部に筋膜痛が生ずる。仰臥位で脛骨内縁の地機あたりの圧痛点を刺入点する。2~3寸針を使って、腓骨下端方向に向けて直刺深刺し、足関節屈伸およ足の回内回外の自動運動を行わせる。
地機(脾):足内果の上10寸(旧テキストでは上8寸)、陰陵泉下3寸。
  

③前外側型のシンスプリント(低頻度)
前脛骨筋や長母趾伸筋間の癒着による滑走障害。足関節が背屈(足趾を足背 向ける)すると痛みが増強する。足三里は前脛骨筋中に取るが、本治療穴(足三里移動穴)は足三里と長趾伸筋の筋溝に刺針する。そのままゆっくりと足関節の底背屈・回内回の自動運動を行わせる。

 

 

 


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