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仙結節靱帯刺針の効果 Ver.1.1

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平成26年5月10日報告の<坐骨滑液包炎の針灸治験>ブログで、坐骨結節滑液包炎の鍼灸治療について説明した。今回は仙結節靱帯痛と思える症例を経験し、よい成果を収めることができたので報告する。

1.仙結節靱帯痛の概要と鍼灸治療方法

1)症状
下殿部~大腿後側痛、陰部神経症状(肛門や肛門奥の鈍痛)

2)病態
ランニングやストレッチ体操のような、繰り返される大腿の大きな動作により、仙結節靱帯のTPが活性し、下殿部~大腿後側痛出現。この靱帯深部には陰部神経が走行するため、陰部神経絞扼障害も出現することがある。

3)針灸治療
伏臥位で、仙結節靱帯に相当すると思える部に、3寸#10にて深刺し硬い組織に当てる。3~5本集中置針(30~60分間)。

 

 

4)コメント

仙結節靱帯が原因で症状をもたらすことがあることは、つい最近のMPS研究会の報告で知った。それ以前、そもそも靱帯が痛みを起こすとは考えていなかった。仙結節靱帯は、皮下組織の厚い部にあるため、触診や押圧によって圧痛等の異常を確認しづらく、刺針点を定める確証が得られにくい。そこで解剖図を参考にして、刺針して仙結節靱帯に命中しそうな部位を選択したが、やむを得ず、一直線となるように3~5本深刺し、またTP過敏性を鎮めるために、長時間(筆者は30~60分間)置針することを考えた。

 
2.症例

1)左下殿部内側から大腿内側上部の痛み、頻尿を訴える例(60才、女性)

当院来院1年間くらいから、思い当たる理由なく、左下殿部内側から大腿内側上部が痛む。頻尿もあり。椅子に座ると、坐骨あたりが圧迫されるので、長時間座っていられない。股関節X線正常、骨盤部MRIで左側梨状筋の肥大を確認。ペインクリニック科で硬膜外神経ブロックや殿部からの坐骨神経ブロックを行ったが、無効だった。坐骨結節部に圧痛なし。
     
当初は左側陰部神経障害を考え、左側陰部神経刺針を行い、また念のために左梨状筋刺針(=坐骨神経ブロック点刺針)も行い、10~30分置針パルスを実施した。また仙骨神経叢と陰部神経に影響を与える目的で左中髎に直接灸実施。
   
何回か上記治療を繰り返すうちに、頻尿は改善したが、下殿部内側の痛みは、あまり変化なかった。このような治療を週1回ペースで1年3ヶ月継続した。針灸を継続していればいくらか座っていられるとのことだった。それ以上の治療を思いつかず難儀していたところ、仙結節靱帯もTPポイント活性になることを知り、前述した治療に変更してみると、治療直後から自覚的に明かに下殿部症状の軽減をみたということだった。

※後日、当人がこのブログをみて、発症した原因は不明と言ったが、膝をのばして両脚を開いた姿勢で、長時間何日も絵を描いたのが原因かもしれないと話してくれた。両脚を開いたというのは下の症例と類似点がある。


2)会陰部奥の痛み、左下殿部痛(53才、女性) 
     
数ヶ月前、ヨガで開脚姿勢をとろうとした際、足がすべって股が無理に開いた。その直後から、上記症状出現。会陰部は脱肛感や灼熱感があるが、外見上異常なく、 肛門周囲に圧痛はない。内科、婦人科では異常は見つからなかった。それ以外に、ふくらはぎと足底痛もあり。ヨガやランニングを好んで行っている。
   
坐骨結節部に圧痛なく、会陰部にも圧痛なし。上記症状の経験より、当初から仙結節靱帯TP活性化を考え、伏臥位にて左仙結節靱帯に相当する部から5本深刺で30分間置針実施した。治療後数時間は残針感があったが、その後に肛門周囲がポカポカし気持ちよかく、翌日久しぶりにランニングする気になったとのこと。ただしランニング後に症状は元に戻ってしまった。
   
3日後再診。今度も同様の刺針を行い、置針時間60分としてみた。また症状が安定して回復するまで運動中止を指示した。このやり方とは別に、四つばい位で仙結節靱帯に置針をし、徐々に正座位に体位変換を指示する運動鍼を行うと、さらに治療効果が増すことを発見した。正座位を行わせる際、大腿と下腿の間にマクラを挟んで、深い正座姿勢ができないようにすることで刺激程度をコントロールできる。

※本患者は足底痛や左脚第4趾DIP関節痛もあったが、仙結節靱帯刺針を行うことで消失または症状部位置が移動した。これらはTP活性化に起因した放散痛部位だったのかもしれない。

 

4.仙結節靱帯の触診(追補)

私は仙結節靱帯の触診に困難を感じてなかったが、韓国のLee先生は、上述した説明でうまく触知できず、以下に示す方法で触診できたと連絡を下さった。熱心さに頭が下がる。

 

 


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