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Channel: AN現代針灸治療
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モートン病に承山・地機の運動針が有効だった症例

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(62才女性)

1.診断:右足第3~4指間のモートン病

2.現病歴

10ヶ月前から、朝ジョギングを5分間した後に症状出現。4ヶ月前から右第3第4指間のビリビリした痛みが出るようになった。第2第3指間の少し痛むという。近くの整形の診察を受け、モートン病だが、神経腫はないといわれた。その整形で何回か局所神経ブロック注射受け、また足の横アーチを支持する足底板を装着するように指導されたが歩行時の痛みは取れなかった。
悩んだ末、ネットで承山に刺針してモートン病を治すという針灸院を見つけたので、その治療を5回ほど受けてみたが効果なくウチでは治せないといわれた。自分で工夫して百均で売っている足指間をスポンジで広げるような道具を装着してスニーカーを履くと痛みなく歩ける。


     
3.診察

右足の横アーチが平旦化傾向。チネルサイン陰性(症状部をタッピングしても放散する痛みはない)。自覚痛の押圧でもあまり痛みは出現しない。神経腫は触知できない。以上のことから、固有足底神経が滑液包により刺激されたものだと考えた。

本患者は、足を両サイドから覆うような靴を履くと症状が増悪するということで、足の両サイドをせばめて甲を高くするような動作で症状は再現できたが、これは隣り合う中足骨の間隔を狭めたことによるものだろう。ただし整形でつくった足横アーチを支持する足底板で足底痛が改善しなかったことは、横アーチの減少が症状形成に関わっていたのではなく、足指間を走行する固有足底神経の絞扼を免減させるような自作装具が効果があったということだろう。


4.治療

足底筋膜炎やモートン病は腓腹筋の承山あたりの刺針で改善できるとの感触から、本症例も、伏臥位で「承山」あたりの圧痛硬結をさぐってみたが明瞭な反応はなかった。今度は仰臥位で股関節やや外転、膝45度屈曲位で下腿内側の圧痛硬結を調べると、ヒラメ筋上部で「地機」と、同じ高さの腓腹筋内側頭部のあたりに強い圧痛を発見した。そこでこれらの反応点に寸6#2で置針、そのまま足関節屈伸運動を行わせ、ヒラメ筋に対する運動鍼を十秒間ほど行って抜針。ちなみに、体重負荷状態での腓腹筋反応をみるため、立位で再び「承山」あたりの反応を探すと、今度は弱いながら2カ所の圧痛硬結を発見したので寸6#2で刺針。その状態でつま先立ち運動数回実施して抜針。
これで症状の変化を聞いてみたが、歩行時に痛み感じないという。刺針部に円皮鍼を貼って治療を終えた。
この良好な状態は4日後の再来時も維持できていた。
 

5.コメント

1)私の治療が著効を得たのに、自宅近くの針灸院で治せなかったのだろうか、患者に聞いてきた。そこの針灸院では下腿の反応点を探すことなく、伏臥位の状態で下腿中央あたりに置針しただけだという。いくらモートン病に「承山」が効くといっても、膝窩中央から下8寸の経穴学でいう承山の位置に反応点は必ずあるものではない。結局指先で反応点を見出さないと治療効果は得られない。基本的なことだが、要するに反応点を探して施術するということが大事なのだ。

2)今回の症例は他の針灸院で治らなかったということなので、違うことをしようと思って最初から運動針を併用した。それゆえに運動針の有無の効果の違いは明瞭になっていないという観点からは残念だった。上記症例は、ヒラメ筋に対する運動針技法と、腓腹筋に対する運動針技法を使っている。

 


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